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第百六十七話「道の問題点」

『この町の隅っこに建ってる、誰も住んでない寂れた館の、影に隠れた古い井戸の中。…そこに飛び込めば、行けるかも(・・)しれないわね』



ペタルは不安そうに、そして少し不貞腐れた口ぶりでそう言いました。


本当にそのような“道”があるのなら、ワタシにとってあまりにも都合が良い。


ワタシが走って向かうより、遥かに早く目的地に着く事が出来るでしょう。


…ですが、気になる事が一つ。



「…かも(・・)、とは?」



ワタシはペタルにそう問いました。



『…不安定なのよ、そこの“道”。入り口が開いてたり開いてなかったりするし、入る度に中の様子も変わんのよ。しかも妖精(アーシ)と違って、アンタ達は一方通行。入ったらもう引き返せないわ』



不安定故に中の環境が安定しない。

更に、妖精ではない者は一方通行。

そもそも、入り口が開いていない可能性も…いえ、もしかすると開いている事の方が少ないのかもしれません。



『“道”の広さと長さだけは変わんないし、妖精(アーシ)は一方通行じゃないから、中が安全か見て来てあげてもいいけど…その後は知らないわ』


「なるほど。無事に“道”の外に出られるかどうかは、運の要素が大きいと…」



ワタシが走るよりも遥かに短い時間で目的地に着くのならば、賭けになるとしても価値はある。


しかし、環境が変わりやすいのであれば、ワタシには危惧しなければならない事もありました。



「“妖精の小道”か。オレ達にも通れるような場所があるのなら、是非使わせてほしいが…問題は“変容”をどうするかだな…」



そう、“変容”。


ギルベルトさんが言うように、ワタシは“変容”に対して、何かしらの対策が必要でした。


ペタルからして不安定と言わしめるほどの“道”なのであれば、おそらく、“道”を通り抜けるまでの間に急激に環境が変化し、あっという間に体に異変をきたす事も予想される。


ましてや、ワタシはペタルと契約している上に、あの礼拝堂で長く過ごしいた為、ワタシの体は異変をきたしやすい体質に変わっております。


故に、ワタシが無事に“道”を通り抜けられる可能性は、通常よりもかなり低くなっていると考えられました。


安牌(あんぱい)を取るのであれば、やはりワタシ自身が走って向かった方が良い。


しかしそれでも、間に合わない可能性を捨てきれない。


ならばいっそ、大きく賭けに出るべきか。


でも、まずは辿りつかなければ意味がない。



「だったら、良い物がありますよ」



ワタシが賭けに出るか決めかねていると、トニックさんがそのような事を言いました。



「フィズちゃん、良いよね?」


「…あぁ!あれね!もちろん。私、持ってくるわね!」



トニックさんがフィズさんに何かの確認を取ると、フィズさんは返事をして家の中へと入っていきました。


それから待つ事少し。

フィズさんは何か持って、またワタシ達の前に現れました。


フィズさんが持っていたのは、片手程の小さな箱。

見るからに頑丈そうで、鍵穴が一つ空いていました。



「ありがとう」



トニックさんはフィズさんからその箱を受け取ると、カチャカチャと音を立てながら、箱の幾つかの場所を触ったかと思うと、先程までは持っていなかった筈の鍵がトニックさんの手に握られていました。


それから、また箱の幾つかの場所をカチャカチャと触り、最後にガチャリと音を立て、トニックさんはワタシ達に中が見えるように箱を開く。


箱の中に入っていたのは、キラキラと輝く液体の詰まった、親指程の小さな小瓶。


それが、十本程。



「行くのであれば、どうか一人二本づつお持ち下さい。きっと、役に立つ筈です」


「トニックさん、これは一体…?」



ワタシのそう問いに対し、トニックさんは問いで答えました。



「キミドリさんは、“妖精の飲み薬”をご存知ですか?」


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