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第百六十六話「心の底から」

お久しぶりです。

長らくお待たせしました。

そして、お待ちいただきありがとうございました。

おかげで、最低限の軌道修正でなんとか物語を終えていけそうです。


主な修正ページは、

・百六十四話〜百六十五話


そして主な修正点は、

・フィズがトニックを諭し馬車の提案を行う場面が無くなり、代わりに、フィズがペタルを諭し別の案を提示する。

という形になっております。


既存の読者様方にはご不便をお掛けしますが、出来れば修正ページを読み直していただき、以前との違いも楽しんで頂けたなら幸いです。


来週からは平常通りの更新に戻ります。


それでは長くなりましたが、続きをどうぞ。


妖精は、自然そのものの化身とも言われる精霊の一種です。


それ故か、多くの妖精は何かに強く執着する事がほとんど無く、個体差はあれど、あらゆる事をあるがままに受け入れる傾向にあります。


妖精と付き合いを持つのであれば、彼女達のその性質をよく理解しておかなければなりません。


何故なら彼女達は、多くの場合、それまでにどれだけ好意を示してくれていても、ある時にアッサリと離れていってしまう…そんな話がよくあるからです。


そう、多くの場合は。



『…アーシが?キミドリの事を?大好きですって?』



(まれ)に。

極稀(ごくまれ)に、居るそうです。

心の底から誰かに執着してしまう妖精が。


例えば。



「あら?だってそうでしょ?大好きで、大切で、とっても大事に思ってなかったら、こんなに怒ったり、泣きそうな顔をしたりしないと思うわよ?」


『…はーーーーーーーーっ?!!』



死にゆく“誰か”の死を受け入れずに、怒りを示して涙を浮かべ、訴えかけるような事をすれば、十分に執着していると言えるでしょうねぇ。


もっとも、顔を真っ赤にしているペタルにその自覚は無かったようですが。



『アーシを好きになるならまだしも!!アーシがキミドリの事を大好きとかあり…はーーーっ?!マジで意味わかんない!!じゃあアーシが今キミドリの足止めしてんのも、キミドリに死んでほしくなくて駄々こねてるみたいになるじゃない!!』


「でも、そうなのよね?」


『ちが…ん゛ん゛ん゛ん゛っ!!!』



どうやら妖精は、自身の気持ちに自覚が無くとも、それに反する言葉は言えないようです。


少なくともペタルの場合は、意識的にも口には出せないようでした。



「…ねぇ、ペタルちゃん」


『何よっ?!!まだなんか言う気?!』


「…ペタルちゃんは、キミドリさんが大好きだから、行ってほしくないのよね?」


『〜っ!!…あーそうよっ!!アーシはキミドリが気に入ってて、大好きだから行ってほしくないの!!どう?!これで満足?!』



ヤケクソ気味にそう言うペタルに、フィズさんは続けます。



「そうね。私も。私もキミドリさんの事が大好き。だから、本当は私も行ってほしくないわ」


『じゃあ!!』

「でもね、大好きだから、キミドリさんの気持ちも尊重したいって思うの。それは、ペタルちゃんも一緒でしょ?」


『そん…な、事…ア、アーシっ…アーシ…は…』



動揺した様子の後、また、黙り込むペタル。


少しの()の後、フィズさんはペタルに向かって優しく笑いかけながら、しかし少し寂しそうに、口を開きます。



「あのね、ペタルちゃん。ここにいる皆ね、きっとペタルちゃんと同じ気持ちなの。ここにいる皆が、キミドリさんの事が大好きで、生きててほしくて…本当は皆、行ってほしくないって思ってるわ」


『…』


「でもね?それは、キミドリさんが望んでる事じゃないから…だから私達は、キミドリさんの力になって、少しでも助けになりたいなって思うの。キミドリさんに生きてほしいから」


『…』


「それにほら、キミドリさんって結構 頑固なところもあるじゃない?だからきっと、私達が止めても止まってくれないわ。多分、なんとかして、知らない内に一人で行っちゃうんじゃないかしら」


『…そ、かも、だけど』


「だからね、ペタルちゃん。キミドリさんを助ける為に、ペタルちゃんも、協力してくれないかしら?」


『…』



不安そうに、フィズさんの顔をじっと見つめるペタル。


そこからゆっくりと視線をギルベルトさん達に移し、俯き、また視線をフィズさんに戻す。



『…てない?』


「ん?」


『…キミドリの事、見捨てない?』



ペタルのか細い声が、弱々しく頭に響く。


頭に直接聞こえてきている筈なのに、聞き取るのが難しいと思う程に小さな声で、フィズさんに、いえ、その場に居た全員に、ペタルはそう尋ねました。


フィズさんはまたペタルに優しく笑いかけ、“明時の空”に顔を向ける。


“明時の空”のメンバーは、互いに顔を見合わせ、強く頷き合い、そして代表として、ギルベルトさんがペタルに答えました。



「…改めて約束しよう。オレ達は、キミドリさんを見捨てない。必ず生きて連れ帰る。必ずだ」


『…』



ギルベルトさんの目を見据えるペタル。


おそらく、嘘では無い事を確認したのでしょう。


それから、視線を逸らし、迷う素振りを見せ、俯いた後、一呼吸置いて、ペタルは口を開きました。



『…一箇所だけ。一箇所だけ、えいゆーの居る所の近くまで、行けるかも(・・)しれない、道があるわ』


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