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第百六十一話「引っかかる」

「…そ、れらの村は、危険に晒されてはいるものの、まだ無事、という事でよろしいのですね?」


「あぁ。既に冒険者ギルドが手を打っている。よりスタンピードに近い村や町から、避難に向けて動いている筈だ」


「そうですか…」



その言葉を聞き、少し安堵するワタシ。



冒険者ギルドが動いているのなら、これ以降の被害は最小限で済む筈。


ツキノ村の人々も、安全に避難出来るだろう。


しかし、まだ不安が拭えない。



「ギルベルトさん。ワタシに何か出来る事はありますか?お手伝いさせていただきたいです」


「助かる。丁度、冒険者ギルドからもキミドリさんに助力を願うつもりだった」


「冒険者ギルドからも…?」


「キミドリさんの実力は、この町では有名だからな。ギルドでも度々、話題に上がる」


「あぁ…」



とうとう冒険者ギルドにも目を付けられるようになった、という事実に目を逸らしつつ、ワタシはギルベルトさんに指示を仰ぎました。



「キミドリさんには、いざという時の治療役をお任せしたい。避難するとなれば、少なからず怪我人が出るだろうからな」


「分かりました。では、ワタシも冒険者ギルドに向かえばよろしいですか?」


「いや、ギルドには行かなくていい。好きな場所で待機していてくれ。キミドリさんには、避難指示が出た後に、避難所での治療をお願いしたい」


「了解しました。いざとなれば、ワタシも戦場に向かいますので遠慮なく仰ってください」


「心強い。が、おそらく、そうはならないだろうな」


「?」



そのような言い回しをするギルベルトさん。



何か引っかかる。



ギルベルトさんと会話をしていて、ワタシはそう思いました。


スタンピードがアウロラに到達するまでに時間があるにせよ、少し、落ち着き過ぎているように感じたのです。



緊張感があるものの、そこまでの焦りを感じ取れない。



まるで、どこかに安心する材料があるような、そんな口ぶりに思えました。


こういった事態に慣れているのか、或いは何か策でもあるのか。


そんな事を考えていると、まだ冒険者ギルドへと向かっていなかったラナンさんが口を開きました。



「なぁ、ギル」


「なんだラナン。それにチャロアも、まだ行ってなかったのか」


「ん〜。わたしも、すぐに行こうと、思ったんだけど、ギルの話が、気になっちゃって、つい〜」


「なぁ!ギル!」


「なんだ、ラナン」


「アンデッドのスタンピードって、それマジなのか?だったら、もしかしてヤバいのか?」


「あぁ、ヤバいな」


「じ、じゃあ、あたしら今からアンデッドの集団と戦闘かよ?!マジかよ?!」


「いや、おそらく戦闘はない。オレ達は今回、あくまでも町の住民の安全を確保する役回りだ」


「え?戦わねぇの?なんで?」


「オレ達がいると、足手纏いになる可能性があるからだ」


「誰の?」


「英雄の」


ゾワリ


「…っ!?」



ギルベルトさんが英雄という言葉を発した瞬間、全身に走る、今までに感じた事がない程の強い悪寒。


首筋を伝う冷や汗。


脳内に駆け巡る、警告の言葉。



「あ、そっか。今アウロラに居たんだっけ。そういや師匠のこと探してまだ滞在してたんだったなぁ」


「そういう事だ。彼は一人でスタンピードに立ち向かうと言って、もうこの町を出たらしい」



彼を行かせて行けない。

彼をアンデッドと戦わせてはいけない。



「あらぁ。だったら、わたし達の、出番がないのも、納得ねぇ。でも、本当に、一人で、大丈夫かしら?」



アンデッドの中には、精神魔法を使う個体(・・・・・・・・・)がいる(・・・)



「分からんが、オレ達が決める事じゃない。英雄がそう決めたのなら、信じるしかないだろう。どちらにせよ、オレ達に出来る事をやるしかない」


「ん〜…それもそうねぇ」



精神が不安定な彼を、一人で向かわせてはいけない。

嫌な予感がする。

このままでは、最悪の事が起きる。


ワタシは直感的に、そう思いました。


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