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第一五八話「遅い」

さて、チャロアさんが集合場所に来てから少し経ち、曇り空で見えないものの、太陽が地平線から登りきった頃。



「おっそいなー。ギルもファルケも何やってんだよー。もう時間きちゃうのにさぁ。チャロアもそう思うだろ?」


「そうねぇ…いつもなら、もう来てるのに…何か、あったのかしら?」



時間は、集合時刻の少し前。


ワタシ達は、まだギルベルトさんとファルケさんが到着するのを待っていました。



「キミドリさん」


「あ、トニックさん」


「こっちの準備は終わりましたよ。後はフィズちゃん達を呼んできたら、いつでも行けます」


「了解しました。ギルベルトさん達が到着したら、よろしくお願いします」


「あれ、まだ来てないんですか?」


「えぇ」


「珍しいですね。いつもなら、もうこのくらいの時間には来ているのに」



トニックさんの言う通り、ギルベルトさんとファルケさんが集合時刻の少し前に来ていないのは、珍しい事でした。


そもそも、明時の空のメンバーは遅刻したりする様な冒険者パーティでは無く、むしろ、そういった約束事はキッチリと守る方々なのです。


ラナンさんは元気過ぎるあまり、とても早起きなものですから、寝坊して遅刻するなどまずあり得ない。


チャロアさんはのんびりとした方ですが、自身の性格を理解し、それを踏まえて行動をとる方なので、出勤時刻より遅くなる事はありません。


ファルケさんは、少し飄々としていてやや軽いように受けとられがちですが、その態度とは裏腹に、かなり几帳面でな方なので、遅れてやってくる事はない。


ギルベルトさんは言わずもがな、あの性格ですから、パーティのリーダーであるといのもあってか、普段であれば早めに集合場所に来ています。


しかし、そんな四人の内、二人が来ていない。



「ふむ…何かトラブルでもあったのでしょうか?」


「トラブル〜?ったく、しゃーねーなー。あたし、ちょっと探してくるよ」



と、ラナンさんがギルベルトとファルケさんを探しに行こうとすると、



「ごめんお待たせ。待たせちゃったかな?」



ファルケさんが、やって来ました。



「遅いぞファルケー。待ちくたびれちゃったぜ」


「ごめんねラナンちゃん。それにチャロアちゃんとキミドリさんも。ちょっとギルドに用があってさ」


「あら〜?ギルドに?」


「そう。昨日までの俺が請け負ってた依頼の件で、ちょっと呼び出しがね」


「あらあら、大変ね〜。でも、そうね。何か、トラブルにでも、あってるんじゃないかなって、心配してたから、ギルドからの、呼び出しだけだったなら、良かったわ〜」


「んー…まぁね」


「?」



何故か、少し歯切れの悪い返事を返すファルケさん。


ワタシは気になり、ファルケさんに問いました。



「…何かあったのですか?」


「…実は、さ。申し訳ないんだけど、今日の依頼、一旦保留になりそうなんだよね」


「保留?」


「そう。キミドリさんとトニックさん達と相談してからになると思うけど…多分延期か、場合によっては依頼の取り消しをしてもらう事になるかも」


「なんと」


「え〜っ?!なんで〜っ?!あたしヤダよ依頼の取り消し反対!!」


「それは俺達の決める事じゃないよ。とりあえず、ギルがここに来るまで待ってもらう事になるから、もう少し待ってもらえるかな?」



少し困ったような、申し訳なさそうな顔をしてワタシとトニックさんの方を見るファルケさん。


ワタシは、ファルケさんに聞きます。



「…もしや、ファルケさんとギルベルトさんは、同じ理由でここに来るのが遅れたのですか?」


「当たり。でも、ごめんね。まだあんまり詳しい事は言えないんだ。確定してる事が少なくてさ」


「つまり、外部に言いふらせないような事であると?」


「そうだね。混乱は避けたいからあまり言いたくはないかな」


「なるほど…」


「ごめんぬ。こんなあやふやな事しか言えなくて」


「いえ、大丈夫ですよ」



明時の空のメンバーだけに関わる話になら、既に依頼の延期か、放棄を選んでいる筈。


そして、ファルケさんが“混乱”という言葉を使った事から、おそらく、多くの人間が関わっている、或いは気にするような事だと思われる。


少なくとも、今回の依頼を延期しなければならない程度には、重要事項。


その上で、確定情報が少ない。


という事は、緊急性の高い何かが起こっている可能性が高いという事。


場合によっては、トニックさん達にも関わってくる可能性がある。


であれば。



「…分かりました。ひとまずギルベルトさんを待ちましょう。延期か取り消しかは、その後にトニックさん達と話しあいます」


「分かった。ありがとう。助かるよ」



まだ、ワタシにも時間は残っている。


焦らなければならない程、切羽詰まっているわけではない。


ワタシはそう思い、まだギルドに留まっているであろうギルベルトさんを待つ事にしました。


良いお年を。

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