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第百二十六話「女王蜂」

キイイイイイイイイィィィッ!!!


「…っ!!」



耳を(つんざ)く大きな音。

音の出所は、リバーシブル・ビーの巣の奥。


ワタシはすぐさま巣の方へと目を向けました。


魔法の影響か、まだ薄く煙を纏っているリバーシブル・ビーの巣。


その薄い煙の向こうから、奴は姿を現しました。



「!あれが…!」


「ようやくか」



現れたのは、他のリバーシブル・ビーよりも二回りも大きなリバーシブル・ビー。


しかし、他のリバーシブル・ビーと比べ、姿が少し違う。


黄色と黒、均等な比率の体色。

光を散りばめたかのようにキラキラと輝く体毛。

まるでティアラのような形をした角。

琥珀のような輝きを放つ大きな複眼。


今までの相手をしていたリバーシブル・ビーが働き蜂とするならば、巣の奥から姿を現したこの魔物は、“女王蜂”と呼ぶに相応しい姿をしていました。



「ファルケっ!!」


「了解!!」



ギルベルトさんの合図の後、間髪入れず放たれる矢。


矢は目にも止まらぬ速さで飛んでいき、真っ直ぐに女王蜂の眉間を捉える。


が。



カアァンッ!!



女王蜂が頭を振ったかと思えば、女王蜂に放たれた矢が上へと弾かれる。


女王蜂に矢が当たる直前、女王蜂は、そのティアラのような角で矢を弾いてしまったのです。


しかし、弾いた拍子に上を向く。


女王蜂の真下に、死角が出来る。



「“ビースト・アクト”」



ギルベルトさんが唯一使う身体強化系の魔法。


女王蜂と対峙するまで温存していたその魔法を瞬間的に使い、走り、跳躍するギルベルトさん。


渾身の力を込め、体を捻り、その大剣の刃を女王蜂の首に向けて、切り上げる。



カアァンッ!!



またも硬い音。


見れば、ギルベルトさんが切り上げた場所に女王蜂がいない。



「ギルッ!!剣だっ!!」



ラナンさんがギルベルトさんに叫ぶ。


ギルベルトさんの大剣の先を見る。


そこには、角と六本の手足の先で大剣を受け止めるような体勢を取る女王蜂がいました。



なんという反射神経、素早さ、動体視力。


ギルベルトさんの大剣を受け止めたところを見るに、その硬さと筋力も並では無い。


あれで少しは弱っていたと言うのですから、驚きでした。



大剣を地面に叩きつける形で着地するギルベルトさん。


大剣から飛び退く女王蜂。


そして女王蜂を守る為、ギルベルトさんへと群がり始める働き蜂。



「させるかよっ!!」



槍を振り回し、片っ端から働き蜂を叩き落としていくラナンさん。



「“ビースト・アクト”」


カカアァンッ!!



先程と同じく瞬間的に魔法を使い、ギルベルトさんは女王蜂に大剣を振るう。


女王蜂はそれを爪で軽く(あし)らい、返す刀でギルベルトさんに攻撃を加える。


更にそれを、ギルベルトさんはすんでのとこで(かわ)し、自身の鎧を利用して滑らせ、女王蜂の体勢を崩す。


一進一退の攻防とは、まさにこの事を言うのでしょう。



何度かそのようなやり取りをしていく内に、楽に倒せる相手ではないと察したのか、女王蜂は逃げるそぶりを見せ始めました。


そもそも、巣が駄目になってから出てきたのです。


初めから逃げるつもりで、巣の外に出てきていたのでしょう。


巣から出てくる間際に大きな音を出したのは、彼女が逃げる為の合図を出していたのかもしれません。



ヒュンッ!カアァンッ!!


「逃がさないよっ!」



逃げようとする女王蜂に、すかさず飛んでくる矢。



「“ビースト・アクト”」



隙を見逃さず振るわれる大剣。



「いーよいしょーっ!!!」



叩き落とされる働き蜂達。



逃げようとする度、何度も何度も邪魔される。

目の前の敵は、容易には片付けられない。

自身を守る働き蜂も、もう多くはない。



キイイイイイイイイィィィッ!!!



苛立ちか、焦りか。


女王蜂は咆哮を上げ、ギルベルトさんに突進する。


ギルベルトさんはそれに合わせ、大剣を振るう。


しかし。



ギャリィッ!!


「っ!!!」



大剣と爪が擦れる、摩擦音。


なんと女王蜂は大剣に当たる直前に速度を落とし、またも大剣に掴まったかと思えば、今度は爪を滑らせ、大剣が振るわれた勢いのままに別の方向へと飛んでいってしまったのです。


苛立ったように見えたのはフェイク。


そして女王蜂が飛んでいった先には。


狙いは。



「ラナンっ!!!」


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