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第百二十一話「ラナンさんの魔術」

バゴオオオオオォォォン…



シェブナの森の中に(とどろ)く轟音。

音の発生源は、ワタシが住処とする洞窟のすぐ近く。



「…」


「…」



ワタシとラナンさんの目の前には、焦げた跡のある二つに割れた大きな岩。


そして、ラナンさんの手元から零れ落ちていく、ボロボロに崩れた木板。



「…や」



岩に向けていた右手を下ろし、溜め込むように両手を体に引き寄せ、そしてラナンさんは、その両手を上に上げながら雄叫びをあげました。



「やっっったああああああぁぁぁぁっ!!!」



ラナンさんが魔術を学び始めてから数ヶ月後。


季節は秋の始まり。

シェブナの森に色なき風が吹き始めた頃。

そう、あれは確か、お昼時。


ラナンさんが初めて、魔術を成功させたのです。



「やった!!!やったぁ!!!」


「おめでとうございますラナンさん」


「先生っ!!!先生ぇっ!!!やったよ!!!あたしやったよ!!!やったやったやった!!!先生っ!!!いや師匠!!!」



テンションが上がり過ぎ、何故かワタシを師匠と呼び始めるラナンさん。



「えぇ、ちゃんと見てましたよ。よく頑張りましたね。あと弟子にした覚えはありませんよ」


「やったやったやったやったやったやったやったやったやったああああぁぁぁっ!!!」


「また話を聞いてませんねぇ」



喜び舞い声をあげ、忙しなく動き続けるラナンさんを落ち着かせ、ワタシは言いました。



「せっかくですから、何かお祝いをしましょうか。何が良いですか?」


「えぇ?!良いの?!魔術も教えてもらってるのに?!」


「それとこれとは話は別でしょう?喜ばしい事があったらお祝いをする。そういうものです」


「やった!嬉しい!ありがとう!あっ!じゃあ、あたしアレが良い!前に食べたパウンドケーキ!アレおいしかったなぁ!」


「あぁ、アレですか。材料はまだありましたかね…ふむ、せっかくなら、少し豪華なケーキにしたいですね…色々と準備をするとして…」


「えっ?!ちょっと豪華なケーキっ?!うわぁ楽しみだなぁ!」



なんて会話をしながらワタシ達は洞窟へと帰っていき、軽く後片付けをした後、ワタシは早速パウンドケーキの材料の確認を始めました。



「えー…バターとミルクと卵と…あぁそれからついでにこれも…おや?砂糖を切らしていましたか。それに花蜜も…」



パウンドケーキを作る為の、甘味が無い。

ならばとジャムを取り出すも…



「ジャムもこれだけですか…」



残りは僅か。

足りる気がしない。


作る為の甘味が無ければ、パウンドケーキは作れない。



「困りましたねぇ…」


コンコンッ



と、ワタシが少し頭を悩ませていると、扉の方から人の気配が。



「あ、ギルベルトさん達ですね。今開けます」


ガチャリ


「ただいま、キミドリさん。今帰った」


「おかえりなさいギルベルトさん。それにチャロアさんとファルケさんも。今回は早かったですね」


「ただいま〜」


「ただいま。いやぁ、ちょっと予定の変更があってねぇ。とりあえず一旦帰ってきたんだよ」


「なるほど」


「あ!皆んなぁっ!おかえりっ!あのさあのさあのさっ!ちょっと聞いてくれよ!さっきな!」


「ラナン、少し落ち着け」



慌てて話し始めようとするラナンさんを一旦落ち着かせ、ワタシ達は、お互いにその日の事を話し始めました。


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