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第百十七話「改装された洞窟とその後」

…いやぁ、なんでこんな事になったのでしょうねぇ。


ワタシについての噂話が色々と流れていたのは知っていましたが、まさかそれが回り回って洞窟の改装へと繋がるなんて、思いませんよねぇ。



これはもう少し後に、アウロラの町で噂の収集をしていたペタルから聞いた話なのですが、どうもワタシが洞窟に住み着くという噂の元となったのは、とある一人の冒険者の善意のようでした。


どうやらその冒険者も、昔ワタシに助けられた一人だったらしく、なんとかお礼をと思ったようなのですが、その時にはもう討伐依頼を受けてしまっており、すぐにシェブナの森に入らなければならなかっそうです。


ならば仕方ないと、その冒険者はワタシに直接お礼をするのを一旦諦め、お礼の代わりとして、シェブナの森の幽霊の住処と噂される洞窟を綺麗に掃除する事にしました。


で、その冒険者は、アウロラを発つ前に、その話を他の冒険者にも少し話していたようで、じゃあ俺も俺もと、便乗する者が出てきたのです。


そこから冒険者の間で話が広がり、話はいつしか噂に変わり、尾ヒレに羽ヒレまで付いて、いつの間にやら、ワタシが洞窟に定住する、という話になったようでした。


いやはや、噂とは恐ろしいものですね。


冒険者というのは楽しいもの好きな方が多いようで、今回の洞窟を改装するという話も、皆んなでちょっとずつやるのは楽しそうだ、とか、暇つぶしには丁度良い、なんて考えた方がいたらしいのも、噂を広げるのに一役買っていたのではないかと思います。



まぁ実際、皆さんが頑張ってくれたおかげか、洞窟はかなり住みやすく改装されており、なんだかんだと長く居座ってしまっているので助かっているんですけどねぇ。


特別何か不都合な事があるわけでもなかったので、有り難くそのまま住まわせていただいてます。


あぁただ、一つだけ不都合な事があるとすれば、冒険者を含めた旅の方が、時々洞窟を訪ねてくるようになった事ですかねぇ。



ある時は、以前から洞窟をキャンプ地として使っていた者。

ある時は、シェブナの森の幽霊に会いに来たという者。

ある時は、負傷者を休ませて欲しいと助けを求める者。

ある時は、凄腕の魔術師がいると聞いた者。


と、色々な理由で様々な方々が訪れました。


ワタシとしては、自身の正体が露呈しないようにする為にも、あまり人間に訪ねて欲しくはなかったのですけどねぇ…


元々あった洞窟を占領してしまっているのはワタシですし、幽霊の噂はもうワタシにはどうしようもありませんし、怪我人を放っておくわけにもいきせんからねぇ。


あとはまぁ、そうですね。

アウロラの町に居た頃に比べれば、まだ正体がバレる心配もないでしょうし、もう人間は訪ねて来るものだと思って割り切る事にしました。


いざとなれば、洞窟内にある全てを置いて、さっさと逃げてしまえば済む話でしたし、逃げ切る自信もありましたからね。


隠蔽、隠密、逃走はワタシの十八番(おはこ)ですから。



あぁ、あと、これは余談なのですが、この生活になってから、ペタル以外の妖精さんとは、パッタリと会わなくなりました。


極たまに作り置いてあったジャムやドライフルーツが無くなっていたり、お土産を置いていかれてたりするのを見るに、全く洞窟に来なくなった、というわけでは無いようなんですけどねぇ。


やはり時々とはいえ、洞窟に人間が訪れるようになったのが原因のように思います。


多分、妖精の本能か何かなのでしょうねぇ。



さて、そんなこんなで、改めて洞窟での生活を始めてから時は過ぎ、季節は冬の終わり、春の始まり。


まだまだ空気は冷たいものの、地面にうっすらと積もっていた雪が溶け始めていた、とても天気の良い日の事でした。



コンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンッ‼︎

「たーーーのもーーーーーーーーっ‼︎‼︎」


「…」



ラナンさんが、訪ねて来たのです。


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