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第百十六話「大改装」

洞窟らしい洞窟。


それがワタシの住んでいた洞窟でした。


全体的に薄暗く、奥に(すぼ)まった形をしており、実際の広さよりも手狭な印象を受ける洞窟内。


湿気が溜まりやすく、気が付けば洞窟の隅にはカビやキノコが生えてしまう為、時々魔法や魔術を使って空気を換気する必要がありました。


ゴツゴツとした地面は出来る限り平らに整えたものの、元々奥に向かって若干の傾斜がついていたようで、雨の日には水が流れ込み、水捌けも悪い。


対策として出入り口に土や石を盛る等しておりましたが、それでも限界はありました。


その出入り口はもちろん、吹きさらし。


扉など無く、外と内の境界が曖昧になっている。


工夫や細工はすれども、ワタシのいた洞窟はやはりただの洞窟でしたし、ワタシはそれでも良いと思っていました。



それが、なんという事でしょう。



奥に窄まった形をしていた洞窟内は、四角い形に整えられ、部屋と呼ぶに相応しい程スマートな印象に。


壁にはいくつかの穴が開けられ、空気中の湿気と魔力を吸う魔光苔が植えられ、優しい光を放っています。


光が不用な時は穴に取り付けられた蓋を閉めれば、いつでも明かりの調整が出来るようになりました。


固いゴツゴツとした地面は、持ち込んだ土を踏み固め、固すぎず、されどしっかりとした踏み心地の新たな地面へと様変わり。


傾斜も無くし、外よりも少し高い位置で踏み固める事で、水の侵入も防ぎます。


出入り口は、元の洞窟の形を活かしつつ木材で壁と扉を作り、外と内が明確に分けられました。


洞窟内には新たに竈門(かまど)も新設され、もう地面を薪で焦がす事もありません。



元の雰囲気を残しつつも、住みやすく改装された洞窟が、ワタシの目の前にありました。



「な…な…」



何故。


一体何故こんな事に…?



「おー!ビックリしたろう幽霊さんよ!あ、元々あったボロボロの机とかもよ!今きれいにリメイクしてやってっから!ちょッと待ってろぃ!」



そう言いながら作業をする、冒険者らしきドワーフの男性。

と、その仲間らしき人間の男性が二人。



そう言えば、あの日の冒険者ギルドで、酔い潰れていたのを見たような…?


とも思いましたが、当時のワタシはそれどころではありませんでした。



「なん…な…」


「おう、なんでぇ。はっきり言ってみろぃ」


「…なん、なんで、こんな事を…?」


「あん?そりゃあアンタの為のサプライズってもんよ」


「サプライズ…?」


「魔術の研究の為に、人里離れたこの洞窟に住むんだろ?」


「え?」


「ちげぇっておやっさん。俺ら冒険者の為に、森に居着いてくれるって聞いたぜ」


「え?」


「いやいや、それも違ぇよ兄弟。そもそも旅から帰ってきただけって話だぜ。だからここに立ち寄った冒険者で、元よりも住みやすくちょこちょこ改装していってんだろ?」


「え?」



言っていない。


ワタシはどれ一つ、一言も言っていない。


何故か洞窟に住み着く前提で話が進んでいる。


一体いつから改装されていって…?


これも噂の影響か。



口々に好きずき言う三人の冒険者を他所に、ワタシはギルベルトさん達の居る方へ顔を向けました。



「スッゲーっ!!めっちゃ綺麗になってんじゃんっ!!」


「あらあら、まぁまぁまぁ」


「あー…こうなっちゃったかぁ」


「…」



大はしゃぎするラナンさん。

ニコニコと微笑むチャロアさん。

苦笑いをするファルケさん。

片手を顔に当てているギルベルトさん。



「…」



ワタシは洞窟に向き直りました。


そしてワタシは、目の前にある光景を頭の中で整理しようとして、ただそこに立ち尽くすばかりでした。



こうしてワタシは、自身の知らぬ間に大改装された洞窟へと戻り、その後、先述した通り、季節が一巡するよりも長い時間をそこで過ごす事になったのです。


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