表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
116/196

第百十五話「もう一度」

“もう一度”。


…もう一度、ね。


まさか、あのもう一度という約束がキッカケで、洞窟に長く滞在する事になるとは、この時は思っていませんでしたねぇ。


あ、はい、そうです。


ワタシが以前言っていた、洞窟に滞在している諸事情とは、ベルさんとしてしまった、もう一度遊びに行くという約束の事を言っていました。


その約束をしたのも、前回で何度目でしたかねぇ。


えぇ、そうなんですよ。


ベルさんと会う度に、毎回同じ約束をしてしまっていましてね。


結果、長い期間あの洞窟に滞在してしまっているのです。



…もっと大きな理由があると思っていましたか?


もしかすると、拍子抜けしてしまったかもしれませんねぇ。


当初のワタシにとっても、本当に何気無い、なんて事無い約束のつもりだったのです。


ですが、いえ、だからこそ、もう一度だけ、また次でも良いだろうと、ズルズル、ズルズルと、別れを先延ばしにして、何度も同じ約束をしてしまったのでしょうねぇ。


気がつけば季節が一巡するよりも長い間、あの洞窟で過ごしていたのですから、惰性とは恐ろしいものです。


…いえ、惰性とは違いますね。


ワタシはきっと、まだベルさん達と離れたくなかったのでしょうね。


こんな単純な気持ちにも気づかなかったとは…ワタシはもっと、自分の思っている事に敏感になった方が良いのかもしれません。



さて、話を戻しましょうか。


“明時の空”のメンバーと共にアウロラの町を出たワタシは、彼らと事前に話し合っていたとおり、少し大回りをして洞窟に向かっていました。


というのも、ワタシが瀕死のギルベルトさんを発見した場所以外にも、調べておきたい場所があったそうなのですが、その内のいくつかの場所が、洞窟に向かうまでの途中に点在していたようなのです。


ですから、洞窟に向かうついでにその場所に寄ってしまおう、という事になりました。


当初の彼らの予定では、ワタシを洞窟に送り届けた後に、調査をしながら遠回りにアウロラへ帰るつもりだったそうですが、ワタシが彼ら冒険者の調査方法に興味を持ってしまいまして、見学させて欲しいとお願いしたのです。


いやぁ、彼らが快諾(かいだく)してくださったおかげで、とても充実した旅路となりました。


近くでしっかりと観察出来た上、質問まで出来るなんて、素晴らしい時間でしたねぇ。



そんなこんなで、彼らと行動を共にしてから数日後。


ワタシ達は、洞窟の近くまでやって来ていました。



「…ふむ。もう少しですね」


「そうだな」


「あーあ!もう終わりかー!もっとキミドリと旅したかったなー。魔術ももっと見たかったしー」


「散々見せてもらっていただろう」


「でももっと見たかったなー!なーキミドリー。やっぱりアタシらのパーティに入ってくれよー?冒険者になってさー?」


「お断りしますね」


「なーんでだよー?」


「こらこらラナンちゃん。キミドリさん困っちゃうだろ?キミドリさんにも事情ってものがあるんだからさ」


「ちぇー」


「うふふ。でも、ラナンちゃんの気持ちも、ちょっと分かるわぁ。キミドリさん、お料理が上手だし、魔術のおかげで、色々と便利だったし、魔法のお話も出来て、楽しかったものねぇ」


「荷物にも魔術がかかってたから思ったより軽かったし、結構快適だったよね。森の調査の面でも、キミドリさんの意見も聞けたし、本当、良い旅だったよ」


「そう言ってもらえると有り難いです…ん?」



会話を楽しむワタシの耳に聞こえた、ワタシ達のものとは違う微かな話し声。


方向はおそらく、洞窟の方。



「どうした?」


「いえ…洞窟の方から話し声が聞こえた気がして…」


「え?マジで?何にも聞こえなかったけどなー?」



魔物の聴力は、人間よりも良い。



「あー…ローブに刻んだ魔術のおかげです」


「なるほどー!」


「あの洞窟は、アウロラでは有名だからな。誰かが拠点として使っていてもおかしくはない」


「…有名なのですか?」


「…“シェブナの森の幽霊の住処”…そういう噂が立っていてな」


「あぁ…」



そんな話をしながら、洞窟へと向かっていく。


徐々にはっきりと聞こえてくる話し声と、何やら別の音。


やはり誰かいる。


なんとか荷物だけでも置かせてもらえないかと考えながら、洞窟の前へ出る。


そこでワタシが見たのは、



「?!」



変わり果てた洞窟の姿でした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ