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第百九話「夜のアウロラ」

“認識阻害”の魔法で、夜の町に身を溶かす。

“身体強化”の魔法で、街の中を跳び回る。

“消音”の魔法で、音すら闇へと呑んでいき、

“探知”の魔法で、人の動きを把握する。


道から道へ、壁から壁へ、屋根から屋根へと跳んでいく。

バレない方へ、見つからない方へ、人目の少ない方へと駆けていく。


あちらに近道、こちらに回り、少し戻り、しばし待つ。



「…ふふっ」



頭をよぎる、ツキノ村での記憶。

コソコソと隠れながら、人間達を観察した日々の記憶。


あの頃に比べて、ワタシは随分と力を付けました。

魔力は増え、体力も増え、出来る事も随分増えた。


魔力切れに備えながら魔法を使う事も無く、体力を気にして食事を取る事も無く、知識も経験も足りないから出来る事が少ないという事も減りました。


あの頃よりも、何をするにも、格段に、楽に、事を成せるようになりました。


しかし、ワタシのやる事は何一つ変わっていない。


ただ好奇心を満たす事。

ただ知識欲を満たす事。

ただ、その為に必要な事を成していく。


魔法を使い身を隠し、人目を避けて掻い潜り、人里の中を駆けていく。


道から道へ、壁から壁へ、屋根から屋根へ。

バレない方へ、見つからない方へ、人目の少ない方へ。

あちらに近道、こちらに回り道、少し戻り、しばし待つ。


暗い夜の闇の中、人間達を見つめ、駆けていく。


ワタシは、あの頃を少し思い出していました。



『なに笑ってんのよ?』



そう言って、フードの奥から顔を出すペタル。



「いえ、なんでもありませんよ」


『えー?何よー教えなさいよー…ん?』



屋根から屋根へと跳ぶ間際、ペタルは何かに気が付いた様子で、人混みの中を見ました。



『ねぇねぇキミドリ』


「なんですか?」


『あれあれ』



人混みの方へと指を差すペタル。

ワタシは、ペタルが指を差す方へ顔を向けました。



『あれ、ギルベルトちゃんじゃない?』


「おや、本当ですね。クエストから帰ってきていたのですね」



そこに居たのは、鎧姿のギルベルトさんでした。



「丁度良いですね。ついでですから、宿を移動した事をギルベルトさんにお伝えしましょう」



町を出ると決めてからワタシは、まだギルベルトさんに会えずにいました。


数日かけて町案内をしてくれたり、宿を手配してくれたお礼を改めて言いたかったのですが、その日は朝一番から簡単なクエストに向かったらしく、宿の受付に伝言を残して出かけてしまっていたのです。



『あらぁ、でもどうやって伝える気?周りの人間に見つかったら駄目なんでしょ?』


「駄目という程ではありませんが、あまり見つかりたくはありませんね。さて、どうしましょうか」


『今から考えんのね。んーそうねん…手伝ってあげましょうか?』


「おや、それはありがたいですが…どうするおつもりで?」


『そんなの簡単よぉ!アーシが姿を消して、ギルベルトちゃんに声をかければ良いのよぉ!あとはアンタのいる場所までギルベルトちゃんを連れてってあげるから、アンタはその辺の路地裏か物陰にでも隠れて、待ってれば良いわ♪』


「なるほど、それは名案ですね」


『でしょう?アーシってば天才♪もっと褒めてくれて良いのよ♪』


「流石ですね。それで、要求はなんですか?」


『あらぁ、分かってるじゃない♪アーシ、コンペートーってお菓子が食べて見たいわ♪あっちの方のお店で、最近入荷されたんですって♪』


「ふふっ。やはり、そういう事だろうと思いました。良いですよ。後日、そのお店に行きましょうか」


『やったぁ♪じゃ、いってくるわねん!』



そう言うやいなや、風に溶け込み、姿を消すペタル。


魔力の花弁が舞い、風と共に、ギルベルトさんの方へと流れていきました。




「さて」



花弁を見送った後、屋根の上から路地裏に降りたつワタシ。


ワタシはそこで、ペタルがギルベルトさんを連れて来るのを待つ事にしました。


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