〜1章 Tutti gli inizi〜
黒いコートを羽織った黒髪の少女と、青いセーターの上に茶色いジャケットを着た茶髪の少年の二人が佇んでいる。
「ねぇ、なんで僕たちここに居るんだろう。」
「知らないわよ! あんたが変なゲームを買ってきたからでしょうが。」
あれは1時間ほど前のことだった。
*
「くるわ〜。あのさ、夏哉君が新しいゲーム買ったから一緒にやらない?だって。どうする?」
「行くも何も夏哉の家ってすぐそこじゃない。」
今私としゃべっているのは、流波 紅葉。私の親友でクラス委員だ。
小柄で目が大きく、愛らしい部類に入るしっかり者だ。
夏哉とは私の幼馴染の、蘇芳 夏哉。
何もかも平均点のヘタレである。
「じゃぁ、早速行こうか。」
「りょーかい。」
ピーンポーン
「おーい、夏哉ーっ。ナッキともみじちゃん来たぞー!」
「速いなー。さっき電話したばっかなのに。」
今僕に呼びかけたのは、親友の霧崎 蒼衣。女の子好きだが良い奴だ。
どちらかというと長身の格好良いタイプかな?
ナッキとは僕の幼馴染の、夏木 郭。なつきだからナッキだ。
美人だけど、何故か僕に対しては態度が厳しい。
「やっほー。蒼衣、夏哉君。お邪魔しまーす。」
「お邪魔します…」
「いらっしゃい、郭、紅葉ちゃん。」
「奥に準備してるから行こうぜ。」
皆で奥の僕の部屋へ進んだ。
「失礼しまーす、うっわー!部屋綺麗だね〜」
「相変わらずね…。」
「どこでも座って良いよ。 はい、ジュース。」
「ありがとう。」「どーも。」
「ゲーム早速始めよっか。」
「「うん。」」
「じゃぁ電源入れるよ。」
ブツッ
この時僕は見落としていたんだ、注意書きのところを…
___________________
| ※注意※ |
| |
|・これは、体感型のRPGです。 |
| クリアするまでは、元の世界へは |
| 戻れません。 |
| |
|・この件については、本社は責任を |
| 一切問いません。 |
|_________________|
ドンッ!!
「っー、ちょっと、なによこれ…」
……ここは何処だ? 僕の部屋は跡形もなく消えていて、代わりに目の前には街が広がっていた。
そうして今に至る。