第1総合部隊誕生!
「気をつけ!敬礼!」
海上自衛隊舞鶴地方隊総監…守本沙㮈総監や俺達司令そして幹部官達の目の前で綺麗に誤差もなく整列された海上自衛隊員達はある人物に向けて敬礼をした。
そうその人物は現役の防衛大臣である楊海太郎である。海自の部隊が1961年9月1日以来の大改編を行い新たな部隊になったため、大臣による訓示を行うために舞鶴まで来たのだ。
その大臣も元海自の自衛官だったからか敬礼を綺麗に45度前方で水平に、二の腕を地面に対して水平に上げて肘を張るという海自式のをやっていた。
過去の防衛大臣に自衛官経験者は少数で、今回の楊海大臣のような元海自の自衛官が防衛大臣になるというのは初だ。そのため上はもっとイージス艦を建造させるために働きかけているらしい。
「ええ…第1総合部隊そして第5総合部隊が旧護衛隊群などを再編させここ舞鶴にできました。これは半年前に起きた異世界転移事件によって再編せざるを得なくなったためです」
大臣は懐から出した手紙を見てそしてマイクに向かってそう話した。真剣な眼差しで自衛官に語りかけるその姿はまさに次期総理大臣に相応しいであろう姿勢でもある。
(やはりか…だから第1総合部隊は普通に自衛艦隊の枠を、域を越えているからおかしいとは思っていたがそうだったか。第5総合部隊なんて異常な程の部隊だからなぁ…もしかしたら、うちの第1とさほど変わらないかもしれない)
俺はそう考えるとさらに真剣に防衛大臣の話に耳を傾ける。
「そして皆さんは異世界諸国という強大な脅威から日本国民を守ってください。そのために今回自衛隊に関する法律を改正しました。これで絶対にこの自衛隊という国民のヒーロー…である皆さんは国民の命を落とさせることなく守れます」
続けて大臣は驚きのワードを入れた文章を述べていく。
『法律を改正した』というがそんな簡単に改正はできなかったはずだ。転移をして翌日に強行採決をして法律の改正案を通したという話は新聞で見たがやはりそう実感させられる。
「だから改正し強化を施したのだ。もちろんこれは海上自衛隊に限った話ではない。陸上自衛隊も航空自衛隊も国民の命を守るために強くなったのだ」
今の内閣総理大臣は記者からの質問をされた際にそう答えたそうだ。この回答で野党や左翼は
「軍事化させるのが目的だろ!さっさと退陣しろ!」
そう国会やインターネットで言ったが国民やマスメディアで形成された世論はそれを無視した。
そして意外なことに賛成したのだ。おそらく異世界という脅威のためなら仕方ないと判断をせざるを得なかったのだろう。
そして最後に防衛大臣はこの言葉で訓示を締めた。
「天は人の上に人を造らず、人の下に人を造らず、と言へり」
我が国では有名な学問のすゝめにも載っている福沢諭吉の言葉だ。これからの日本の外交方針を表したものだろう。平等で普通に平和に接していけたら良いなと俺はそう思った。
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「いやぁ…まさか空母まで入れてしまうとはねぇ」
俺の目の前で足を組み座っている女性はコーヒーを机に置くとそう言った。
スカートに白色のセーラー服…胸元には大量の階級章、そして特科つまり火力戦闘と広域な地域制圧ということを表す職種き章をつけたその女性は海上自衛隊初の女性地方総監である守本沙㮈舞鶴地方総監だ。
「本当ですよ…第5総合部隊なんて怖すぎますよ7個の潜水艦を持っていて更に原子力潜水艦もそのうち進水しますし。アメリカ海軍にわざわざ空母まで作ってもらいましたし」
俺は森本総監の言葉に分かるわぁと思いながら言葉を紡いだ。なぜアメリカ海軍が協力してくれたのか分からないが向こうにも事情があるのだろう。
「ちなみに永遠っち、コーヒーどう?」
「美味しいですよ…何杯でもいけそうですし。後その呼び名、他の司令の前で言っちゃったら出世コースから落ちちゃいますよ」
「えぇ…私は永遠っちという呼び名気に入っているのになぁ」
そう守本総監は俺に向かって悲しそうにいうとお願いと手を両手で組み、そして目を輝かせ見つめてきた。
こういうところは本当にずるい…可愛いって思ってしまうからか許したくなる。
「はぁ…そのままでいいですよ」
こうして俺は守本総監の誘惑に負けてしまった。彼女には人を引き込ませるセンスみたいなものがあるから勝てない。
「ねね…さっき可愛いって思ったでしょ?思ったよね?」
(あぁ出てしまったな守本総監の着任当初からの悪い癖、その名も余計な事を聞ーく。
これがなかったらモテそうなのに…)
そう心の中で考え俺は口を開きこう言った。
「やっぱり永遠っちというのやめてもらえません?」
(やはり仕方ない…守本総監には普通に霧島司令って呼んでもらおう。しょうがないんだこれが昔からの風習だから。仕方ない…仕方ない…)
俺が守本総監って呼ぶ様に普通は海上自衛隊では霧島か霧島司令と呼ぶのだが、永遠っちとか階級名をつけずに呼ぶ人もいるがそれは一般自衛官のみだ。
俺達みたいな幹部自衛官や防衛記念章を持つ自衛官が言っていい言葉ではない。
「嫌だっ!あぁごめんなさい、許して!だから呼んでもいいかな?」
アニメやラノベに出てきそうな話し方で守本総監は俺に向かって陳謝…謝罪しあだ名で呼んでいいかどうかを聞いてきた。
「いいですよ…」
「やった!」
完全に諦めた俺に対して守本総監はなぜか子供みたいに喜んでいた。
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「ええと…俺達第1総合部隊の武装はF−35A、F−15J改、P−3cとSH−60kなどの航空機と護衛艦が18隻か。多すぎだろ、こんな武装でも上はまだ足りないって言ってるからなぁ…どんな奴らと戦うことになるんだ?」
執務室で俺は配布された自分の部隊の武器や護衛艦を頭に叩き込む。有事の際に1回1回確認していると時間がものすごくかかるし何より国民の命が更に脅かされる可能性もあるからだ。
コンコン
「はい…お入りください」
俺は執務室のドアがノックされると反射的にそう言った。念のために丁寧に言ったのはもしかしたら俺より階級が上の海将補などが入ってくると考えたためだ。まぁそんなことは少ないのだが…
「失礼します」
その言葉と同時に女性が1人執務室へと入ってきた。そして俺の執務机の前に彼女は立つと敬礼をし
「今日付で第1総合艦隊副司令を拝命しました2等海佐、十六沢桜月です。これからよろしくお願いします!」
ちょっと緊張気味にそう言った。彼女の胸には第2号第1級賞詞もついていることからなかなかの強者だと分かった。事前に彼女が副司令になるということはわかっていたが、やはり若い。
27歳…俺と比べたら一個差だが俺でも第3号第2級賞詞が最高の防衛記念章だ。エリート街道を歩いてきたのだろう。
「1等海佐霧島だ、第1総合部隊の指令をやっている。よろしくな」
俺は答礼をすると軽く自己紹介をした。余り固く話すとその印象が良く無くなると聞いた事があるので、俺は入隊してからは普通に挨拶を司令になった去年からはこんな感じに挨拶をしている。
そして握手を交わした。なかなか頼りになりそうだなぁと俺はそう思った。彼女はエリートだということは入試の結果を見て知っている。入試は驚異の満点で、主席で卒業した彼女は本当なら海上幕僚監部にいてもおかしくはない。
これで最高のメンバーが揃ったと考えていたときに電話が鳴り響く。
「失礼」
そう言って俺は電話を取る。こういう時は非常事態だと思っていた方がいいと俺の父親も言っていたので俺は動揺する心を沈め電話を取った。
『こちら舞鶴地方隊、第1総合部隊です』
『海上幕僚監部です。今から1時間前に日本海において不審船の集団を発見しました…海上保安庁の巡視船が向かったところ、謎の火の玉を出してきたのことで海上保安庁の装備ではきついと判断しました。そして閣議の結果、防衛大臣の命令で海上警備行動を発出することとなりました。第1総合部隊は不審船を追跡してください。なお巡視船は轟沈しましたのでご注意を』
そう電話の主は要件を伝えるとすぐさま電話を切ってきた。ヤバイな巡視船が沈んだとなると相手は日本と同等なのかもしれないそう考えながら俺は執務室の電話から命令を下した。
『第1総合部隊に伝える…日本海にて不審船の集団発見との報告あり。巡視船が向かうも轟沈した模様。自衛隊法82条に基づき海上警備行動を発出したため。第1総合部隊は出港せよ。繰り返す…』
館内アナウンスを使いそう命令すると椅子に座り、十六沢副司令にも座る様に促した。
こうして異世界転移以後初の海上警備行動が発動された。




