第三昼 そういう家系
放課後
「三ツ葉ー!一緒に帰ろー!」
「あ、晴流。いいよ、一緒に帰ろ!」
校門を出てしばらくして、おれが三ツ葉に聞いた。
「…なあ三ツ葉。昨日の夜、おれの部屋にいた?」
「っえ!?いいいいい、いるわけないじゃん……」
「……今明らかに動揺してただろ」
「しししし、してないよ!動揺なんて!あ!ごめん急に用事を思い出した!」
「今日は一緒に帰るんだよな?」
「ぅええぇぇ……」
三ツ葉がはぁ、と息を吐く。
「晴流に隠し事は出来ないね…」
(三ツ葉が隠し事下手なだけだと思うぞ…そして諦めが早い…だけ)
「うん、昨日の夜晴流の家にいたよ」
「なんで?」
おれが聞くと、三ツ葉は少し躊躇ったあと、口を開いた。
「っ、ぼくが、サンタだから」
最後の方は、声が小さくなっていた。
「あ、やっぱり?」
「え、やっぱりって…?そ、そんなあっさり…?ぼく、今サンタだって言ったんだよ…?」
「『プレゼント配りきれない』って言ってたから、もしかしたらそうかなぁ〜と思ってたんだよ」
「え、聞かれてたの…?ぼく頑張って隠した意味ないじゃん…!」
「ところでなんでサンタなんてやってるんだ?」
「家が…サンタの家系なんだよね」
(サンタの家系なんてあんの…?)
「他にも色んな家系があってね、ぼくん家みたいな季節の行事に、動物、植物、妖怪などがあるんだ」
「妖怪!?そんなのもあんのか…!」
「ぼくの知り合いにはいないけどね。そんな人達」
「あれ?でも三ツ葉って兄ちゃんが2人いなかったか?」
「うん、いるんだけど、サンタはの仕事は3番目に産まれた人がやるっていう決まりがあるんだ。1番上の兄ちゃんは一葉、2番目が二葉っていうんだ」
「へ〜大変だな、三ツ葉。ていうか、サンタの事は家族以外に誰が知ってるんだ?」
「晴流だけだよ?」
「そっ、そんな大事な事おれに話して大丈夫かよ!?」
「晴流だから話したんだよっ!」
三ツ葉がおれのおでこを指で弾く。
「そっか……」
おれは三ツ葉にそんなに信頼されてる事が嬉しくて、つい口もとが緩んでしまう。
「なんか困った事があったら、おれになんでも言えよ!三ツ葉の力になるからな!」
「うん!ありがと!晴流!」
三ツ葉がニコッと笑う。その太陽のような笑顔につられて、おれも自然と笑顔になってくる。
「じゃあ晴流、早速なんだけど。ぼく今めちゃくちゃ困ってんだよね」
「え、早速すぎない?」