表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/20

第五話 考察②

 俺の前に小さなモニターが現れ、そこに、驚いた表情のソフィが映し出された。

 これが、この魔法の良いところだ。テレビ電話みたいな感じで繋がるので、向こうの状況も把握することが出来る。


「久しぶりだな、ソフィ。手紙、見させてもらったよ」

「あ、うん、久しぶり、お兄ちゃん……って、大変なんだよ!手紙にも書いたけど、リーナが追放されちゃったの!」

 慌てた様子のソフィ。そんなソフィを安心させるために、俺は、リーナのことをソフィに話す。

「それなんだけどな、安心してくれ。リーナは俺の家で寝ているよ」

「どうしよ……へ?」

 キョトンとした表情になるソフィ。説明が足りなかったな。

「さっき、森の中で倒れていたんだ。それで、連れて帰って、お医者さんに診てもらって、今は隣で寝ているよ」

 そう言って、モニターを横に向ける。

「あッ!……よ、良かったぁ」

 リーナの寝顔を見て安心したのか、ソフィがホッとしたような表情になる。

 ここで俺は、ソフィの後ろの背景が寮ではないことに気が付いた。どうやら、まだ街中のようだ。

「もしかして、リーナを探してくれていたのか?」

「あ、う、うん……だって、リーナが危険な目に遭っていたら、嫌だし……」

「ありがとな。リーナも、きっと喜ぶよ」

「え!う、ううん、お礼を言われることなんてないよ。私、リーナのこと好きだし……」

 ソフィは、照れたように笑っている。

「いや、改めてお礼を言わせてほしい。今まで、リーナのこと見守ってくれて、本当にありがとう」

 俺は、深々と頭を下げた。ソフィには、感謝しかない。

「え、いやあの、あはは……うん、分かったよ。お兄ちゃんの気持ち、しっかりと受け止めたから、だから頭を上げてよ」

「そっか」

「うん」

「なら、お言葉に甘えようかな」

「あはは、そうしてよ」

 お互いに微笑み合う俺たち。

 やっぱり兄妹は良いな、と改めて感じた。


「さて、いくつか聞きたいことがあるんだが、良いか?」

「うん、私で答えられることなら」

「よし、じゃあ――」

 あのやり取りの後、俺は、ソフィにいくつかの確認をした。


「――やっぱりな」

「え?どういうこと?」

 そして、俺は確信した。この状況になったのは、強制力のようなものが働いたせいだと。

「実はな――」

 ソフィに、俺の仮説を話していく。

「……なるほど、可能性は高いよね。つまり、あの人たちやリーナは、強制力のような力で操られていたってことだよね?」

「そうなるな。そうじゃないと、リーナもそうだが、攻略キャラたちの行動がおかしすぎる。いきなり、何の脈絡もなく、複数人の行動が豹変するなんて考え難いからな」

「うん……あれ?でも、それならなんで私は自由に動けているんだろう?」

「俺たちは転生者だからな。もしかしたら、強制力が働かないのかも知れないぞ。まぁ、これは可能性の話だし……何より……もう終わってしまったことだからな。今となっては分からないな」

「あ……そうだよね。もう……終わっちゃったんだよね……」

 俺たちの間に、しんみりとした空気が流れる。

 そうなんだ。今、俺が状況を把握して仮説を立てているのは、リーナの状況を把握するためだ。もう、リーナは追放されてしまっている。だから、この世界が、ゲームの世界なのか、似ている世界なのか、それに、俺たちに強制力が働いていない理由すら、もう知る必要のないことだった。いや、知ってもどうすることも出来ない話だった。


 俺は、リーナを助けることが出来なかったんだなぁ……。


 今更ながらに、その気持ちが重くのしかかってくる。


「でも、お兄ちゃんのところに居るのなら、リーナも安心だね!」

 ――そんな時だ。ソフィが安心したように、そう言った。


「……は?」

 え、どういうことだ?

「ええ……、何で『え、どういうこと?』みたいな顔になっているの?もしかしてお兄ちゃん、気が付いていないの?」

「……ど、どういうことだよ?」

「あのさ、ゲームの最後って、リーナが追放されるシーンがあったよね?」

「そうだな」

「それで、その後のことは何も出てこなかったよね?」

「ああ」

「なら――その後は、リーナに強制力が働かないんじゃない?」

「……ッ!?」

 た、確かにッ!!

「だから、お兄ちゃんのところに居れば、少なくともリーナが、生活に困ることはないんじゃないかな。強制力が働かないのなら、普通に生活が出来ると思うしね」

「そ、そうだな。そこは考えていなかった。今のリーナは、ゲーム終了後の状態だ。なら、俺がリーナを支えてやれば……」

「私も相談に乗るから、何かあったらすぐに連絡してね」

「ああ、ありがとな。また連絡するよ」

「うん、リーナをよろしくね、お兄ちゃん」

 そんな会話をした後、俺は魔法を解除した。

 

 これで方針は決まった。

 ナイスなアイデアをくれたソフィに感謝する。

 

 後は、リーナがどう言うかだが……。

 まずは、リーナが起きるまで待つとするか。

 全ては、その後だ。


 俺は、リーナの穏やかな寝顔を見て、そう決めた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ