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謳歌
『何で』
『どうして』
唯一無二の家族を失って、彼らは初めて非力な自分に気づいてしまう。怒りの矛先を誰かに向けて、時には傷つき傷つけられた。
自暴自棄になっても何にもならないのにね。置いて逝った俺らにも、そうさせてしまった罪悪感はある。けれどね、それは彼ら自身や他人を傷つけていい理由にはなりえない。
大勢の幸福には犠牲はつきもの。この世の忌まわしい理だ。
むしろ喜んでくれたらいいんだ、俺じゃなくてよかったって、手放しで。
忘れられることには慣れている。後ろを振り返ったところで、もう道は寸断されている。
俺たち贄は、賽の河原で永遠に石を積み上げて、壊されて、積み上げて。
『次の生へ向かいなさい』
無慈悲な言葉を待ち続ける。
ああ、あなたは残酷。こんなことして、満足?
俺たちは確かに罪人。償うべき業を理解している。
永遠の石積が終わったと思えばすぐさま次の苦しみ。いや、苦しくはないか。治らぬ歪みを正しに行くだけ。
そしてまた、産声をあげる。
数年しか生きられない生を、謳歌する。




