第7話 癒やしの力
異世界には魔法だよね。
兄に抱えられながら、絵本を読んでもらい私は本をジッと見つめ文字の解読に励む。
私が絵本を気に入ったと思った兄は何度も絵本を読んでくれる。
何時間か過ぎた頃、夕食ができたのであろう。
ママンが部屋にやってきた。
ママンの目に飛び込んだのは、寝具が壊れている横で夢中に絵本を読んでいる私とアデル。
ただ寝具は壊れているというか組み込み式なのが外れているだけなのだがママンはアデルが妹に絵本を読ませたくて破壊したのではないかと思っている。
疑惑の目を向けられたアデルはキョトンとしている。
一方トワは寝具を破壊した事を思い出しママンから目を背け体も一緒に反転させ兄の懐に視線を落とす。
(怒られる)身構えるトワに近づいてくる足音。
一歩また一歩ビクビクするトワの頭にそっと手が伸びる。
「なんてこと!!大変!!」
何も分かっていないアベルもびくっとなるママンが出した大きな声に驚いている。
ママンは私を左腕に抱きよせ左手で私の頭の上にそっと手をかざす、そして右腕で一冊の本を手にする。
目にするその本は如何にも古めかしく高そうな本だった。
ママンは本を広げると詠唱をはじめる。
「母さま!」
アベルはいきなり魔術書を取り出したママンに驚いている。
それをを無視してママンは集中する。
「癒しの女神よ 我 前に 癒しの精霊よ 力を 傷に倒れた者に 祝福を 」
母の周りに魔法陣が広がり左手に小さくなって集まっていく。
「 ハイ ヒーリング 」
ピカっと左手が光ると全身が暖かくなり気持ちがよくなる。
私はポカンとなり呆然としている。
頭の中は大混乱だ(何が起きたの!!?)
そんな中ママンは、言う。
「もうたんこぶなんて作ってるからびっくりしたわ」
あ、そういえば私、寝具から降りる時後頭部強打したっけ?
そんな数時間前のことも忘れていた。
やっぱり私アホな子なんでしょうか?
とはいえ魔法か~
ママンかっこよかったなぁ~
私にもママンの血が流れてるからできるよね、ね!
そのあと、妹のたんこぶに一切気づかない兄がママンに長々とお説教されたのは、また別のお話。
さすがママン。