第24話 アベル夏休み①
夏休み♡
アベル回
学園生活2年目の僕は、2度目の夏休み実家に久しく帰っていなかったので今年は帰ると手紙を書いておいた。
一年目の夏休みは、ロアベ帰らなくていいのか?
ロアベ妹ちゃんが待ってんだろう?
とか、散々色んな人に言われ少しトラウマになりかけた。
この1年間で戦闘訓練や魔法技術知識などの授業を受けそれなりには伸びていたがそれでも、中の下。
誇れるような成績になれていなかった。
剣ならそれなりに振れるのだが、魔法混合での戦闘を苦手としていたのである。
そんな時、妹があーだこーだと母さんから手紙が来てアベルは、決意する。
イモウト補充しに帰るのだ!!
そこはやはりアベルであった。
馬車に揺られながら数時間。
懐かしい街へとたどり着く。
「ちょっと離れただけなんだけどなぁ~」
馬車を降り感涙深くふぅと息を吐くと帰宅の道を歩き出す。
たったったっ、ぱふっ。
よそ見をしていると何かに当たる。
ふと胸元を見下ろすとクリーム色で金髪のお団子頭が見えた。
もぞもぞする中ニパッと僕の腕から顔を出すトワ。
うん。可愛いい!さすが僕の妹だ!
「迎えにきてくれたのか?トワ!」
頭を撫でながら癒される。
「ううん。違うよ。ミレーユちゃんと川に行くのー」
「あ、そうなのか僕もついて行っていいか?」
僕を迎えに来たのではないのか?
ガクッとなるアベル。
妹がうーんと少しの間考え「いいよー」と声が帰ってくる。
そんなこんな妹とじゃれあっていると「あらあら、ふふふ。」と声がする。
声の方を振り返ると母様がいた。
右手にバスケットを下げ、左手に日傘を持っている。
「ただいまです。母様」
「おかえりなさいアベル」
このやり取りだけでなんだか安心する。
帰ってきたんだなぁと思う。
母様と妹と手を繋いで川へと向かった。
少しいった所に大きなお屋敷の大きな門が見え、その一本道のとなりには河川敷が流れていた。
整えられた階段を下りると太陽の光で照らされた綺麗な緑の髪をしたエルフの親子が見えた。
あの小さい方がミレーユちゃんなのだろう。
トワがエルフの親子に手を振って、僕の手を振り解いて駆け出していく。
妹がエルフの女の子を抱きしめてきゃっきゃしている。
妹よ僕とあった時より嬉しそうだな。
僕はその光景に羨望を抱くのだった。
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エルフのお母さんダフネさん娘のミレーユちゃんとの自己紹介を終えお昼のサンドイッチを食べた。
ふわふわのパンにレタスと卵を挟んで塩を振ったシンプルな物だ。
久しぶりの母様の手料理に涙が出そうになる。
その後、母様やダフネさんと学校で習った事や友達になった子の話なんかして過ごした。
トワとミレーユちゃんは、川ではしゃいでいた。
横目に見ながらアベルは癒やされた。
そんなこんなで帰る時間になった。
「そろそろ帰るわよー」
母様から声が掛かる共にバシャンと水が跳ねる音がした。
盛大に転げそうになるミレーユちゃん。
それを支えようとするトワが一緒に川にダイブをしていた。
ずぶ濡れになる幼女二人。
あらあらと呑気な母。少し顔を青ざめて心配そうな顔をしているダフネさん。
僕は取り敢えず母からタオルを奪い取るとずぶ濡れ幼女2人に向かう。
「二人とも大丈夫か!?」
特に怪我とかは、負ってないみたいだ。
えへへ、と頭を掻きながら立ち上がるトワとえっぐえっぐと半べそを掻きながらトワに抱きついて立ち上がるミレーユちゃん。
いい友達関係だなぁと僕はタオルをそっとトワに渡した。
パッぱっと手際よくミレーユちゃんを拭くとタオルを返してきた。
もっとしっかり拭いてやらないと風邪引くだろと僕が思っていると詠唱を開始するトワ。
「温かい風を 此処に 暖風」
右の手から手のひらサイズの魔法陣が現れそこから柔らかな風が溢れだす。
なんだこの魔法!?
学校の授業でも聞いた事のない詠唱呪文!?
驚くアベルを他所にトワは風を強弱を使い分けながらミレーユちゃんの髪を慣れた手つきで梳かしミレーユちゃんは気持ち良さそうに身を委ねるのだった。
「はぁ」
僕は、ため息を吐きながらトワの身体を拭いてやった。
すると、椅子にするには、いい感じの岩に腰掛けるトワ。
僕が首を傾げて顎に指を当てていると、まだぁ?とこちらをちらちら見ているトワと目が合う僕は、無言で団子頭を振り解いて乱暴にタオルをトワの頭に押し当てて心の中で「「できるかー」」と叫ぶのだった。
なんとかかんとか。