第12話 兄の受験②
帰ってきたアベル視点。
父が帰ってきた!久々にゆっくりお話ができると思っていたアベルだが父からの一言に思考がお受験モードに切り替わる事とあいなりました。
ちゃんちゃん。
アベル。父。母。妹。
今お受験に向かう為馬車に乗っている。
北に6時間、馬車に揺られながら緊張と不安がアベルを襲う。
せっかくだからと言って付いてきてくれた家族を見ながら感謝し「ふぅ」と息を吐くと目を瞑り、意識を眠りの先へと預けた。
ガタンゴトン。ガタンゴトン。
ひーひーん。
王立アルフォード学校。
さすがに4つの中で最大難関学校。
敷地内は広く豪華装飾に彩られている。
煌びやかな門には、僕と同じく受験を受けに来た人達がチラホラ中に入っていくのが見える。
僕達も門の中に入ると受付と書かかれた紙と机が見える。
時間帯がよかったのか、あまり並ばずにすんなりと終え受付の人に「あちらの会場にどうぞ」と言われ示された何千人か入れそうな建物に向かう。
第一訓練所と書かれた建物に入ると剣戟の模擬戦をしていた。
剣、槍、短剣、双剣、など皆自分の得意分野の武器を持って仕合っている。
僕は緊張のあまり額から汗が1筋落ち、体が震えているように思う。
「アベルぅ」
ぴと。
そんな僕を見て何か思ったのか、後ろから妹が抱きついてきた。
ニパッと笑う妹。
身長差があり下から覗き込むようにして笑う妹は、まさに天使であった。
「………。」
僕は無言で振り返り抱きしめる。
バタバタと暴れる妹。
緊張感は一気に無くなり。
妹補充を行った僕に敵はない!
と意気込み模擬戦の受付に向かう。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「アベル・フォン」
「スーベル・ヤン」
対戦の前に挨拶を交わす。
僕は会場にあった木剣を構える。
相手を凝視する。
茶髪で糸目、体は細身、二本の木の短剣を携えていて機動力を活かした戦い方をしそうだ。
「始め」試験官の掛け声と同時にスーベルが動きだす。
僕は慌てず、相手の正面に剣を構えて待つ。
スーベルは僕の正面まで突っ込んできてしゃがみ踏み込んで飛んだ。
アベルの目からは、一瞬スーベルの姿が消える。
空中で1回転してそのまま斬り込んでくる。
僕はそれを横薙ぎに払い回避する。
回り込んで追撃を加えてくる。
なんとか体制を整え僕は追撃を凌ぐ。
カッカッ、パン、パッと音が鳴る。
距離をとる2人。
「中々やるじゃねかこのロリコン野郎」
へ?アベルは言葉の意味が解らず首を傾げてクエスチョンを浮かべる。
チッと舌打ちをし、木の短剣を引き絞って駆けてくるスーベル。
上段から素早く真直に木剣を振り下ろすアベル。
木の短剣二本で捌こうと頭上にクロスさせ応対するスーベル。
会場に「パコン」と乾いた音が鳴る。
アベルの腕力が勝ったのか勝負が決まる。
試験官の「それまで。」と言う言葉でアベルの模擬戦は終了した。
頭に小さなコブを擦っているスーベルと握手をするアベル。
「ねーさっきのロリコンって何?」とスーベルに聞くが「お子ちゃまにはまだはぇ」といって踵を返してしまう。
自分だってお子ちゃまの癖にとアベルは思いながらも笑顔でコチラに手を振っている妹(天使)を見るとどうでもよくなったアベルであった。
時に学園で噂を聞いた同級生がロアベと命名するのは間もなくしての話であり、ロアべと呼ばれたアベルは愛称を貰えたと勘違いし、好意を持たれた女子生徒に事実を知らされ、膝をついて顔を真っ赤にし「家に帰りたい」と呟いたのはまた別の話である。
もうちょっと続くなぁ〜