1-1
不定期連載となります。
僕は、目の前の光景に目を疑った。
おぞましい数の魔物と呼ばれる「それら」は、敵意がこもった視線をこちらに向けてきた。見た目からは、全く凶悪性を感じないが、やつらから放つ殺気はこいつらが常識の範囲内の生き物でないこと再確認するには充分だった。
時間は夜の9時を過ぎようとしていた。いつの間にか周りには、明かりが灯っている民家は一軒も見当たらなかった。田舎町とはいえ、まだ正午にもなっていないのに、完全に消灯してしまうのはどう考えても不自然だった。まるで、自分が見知らぬ空間へ迷い込んだような感覚だ。
辺りが闇に包まれ静寂している周りとは裏腹に、僕と対峙している怪物達との間には、一触即発の「魔力」が渦巻いていた。
しかし、もっと驚くことにその魔物の群れに果敢にも飛び込んでいく影があった。
僕と同じ年齢とおぼしき少女が鋭い口調で僕に向かって叫ぶ。
「何ぼさっとしてのライヤ!」
その後に、先ほどと比べやややわらかな口調の赤髪の少女も叫んだ。
「ライヤ、早く!」
二つの影、いや二人の少女は僕に声を掛けてきて、僕も戦うよう促した。
「戦うっていったって、いったいどうすれば…」
僕は、状況が飲み込めず狼狽していた。そんな僕に励を飛ばすように銀髪の少女が再び叫んだ。
「ライヤ!そのアクセサリーを握って強く念じてっ!」
「これを…?」
僕は、慌ただしく今日身につけたばかりのネックレスに付いている純白のブローチを握りしめた。そして、言われるがまま彼女達の言うとおりに念じたが…
ブローチの中に橙色に輝く宝石が力強く光りだし、ふと、頭に知らないはずの言葉が自然と浮かんできた。
「古の力よ、我に従い力を与えよ。光の聖獣!」
時は遡り
「ふぅ、やっと着いたか。十年ぶりか、懐かしいなぁ。」
そう呟きながら、懐かしい香りがする駅の改札口を通った。
僕は、芯央ライヤ。今は都会暮らしをしている高校生だ。
昔、この龍神町で生まれ育ったが、考古学者兼遺跡発掘屋を営んでいる両親の仕事の都合で、僕が幼い時、ここを離れ都会の方に引っ越した。
しかし、突然父さんが調査している海外のドレークシティ付近にある遺跡から、今までの常識を覆すような大発見をしたらしく、長期間海外に赴かなければいけなくなったということで、一人となった僕を夏休みの間だけ故郷であるこの龍神町に帰したというわけだ。
さっきも言ったけど、僕にとっては十年ぶりの里帰りとなるわけだ。
「おかしいな。もう来ているはずなのに…」
僕が、辺りをキョロキョロ見渡していると…
「おーいライヤ。ここだよ。」
駅の入り口の近くに僕と同じ位の赤髪をポニーテールで結んだ女の子が立っていた。
僕は、その子がすぐに誰だか分かった。
「カガリ。わざわざ迎えに来てくれたんだね。」
僕は挨拶を交わしながら早歩きで彼女の車に向かった。
「ライヤを迎えに行ってくれって先生に頼まれたからね。」
彼女は僕に向かって笑顔を見せてくれた。
彼女はカガリ・ヘイゼル。ドレークシティ出身であり僕の両親の助手を務めており、僕にとっては小さい頃よく遊んだ幼馴染みのような存在だ。
今日僕が都会から龍神町に帰ると父さんから聞いたので、先に龍神町に来て、この駅前まで迎えに来てもらったのだ。
「ここで立ち話もなんだから、とりあえず歩こうよ。買い物もしなきゃならないことだし。」
そう言いながら、僕とカガリは駅を後にした。
これから連載していこうと思います。