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「えっと…これ、なんの冗談ですか?」
私、鸛舞は今、なぜか馬乗りになって私を押さえつけている幼馴染兼婚約者、鳳凰巧様に困惑していますの。これ、なんのお遊びですか?
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私は日本最大の鸛グループの兄弟の末の娘です。上には二人の兄がおります。それなりに見目も良く(自分では言いたくないのですけど)、頭脳明晰と評判になるぐらいには学問を極めましたわ。運動もそれなりにしておりますの。鸛グループの娘として恥じないように十七年になる時を励んでまいりました。
そんな私の話、聞いてくれませんか?
というか、聞いてくれなくても話しますが。
幼馴染兼婚約者である巧様は鸛グループに並ぶ鳳凰財閥の跡取り息子ですの。容姿端麗、頭脳明晰、運動神経が素晴らしいという三拍子揃った方です。あれですね、チート様です。
彼と私は日本最大の七つ星学園ーー通称金持ちのボンボンが通う学校ーーに通っております。そこに最近学園長の孫娘の方が通いだしまして、その…なんと言ったら良いのでしょう、男性の皆様を次々と籠絡していますの。しかもそこに巧様も入っておりますの。最近は休み時間でも少ししか話せませんの。せっかく同じクラスだというのに…。彼女も同じクラスなので仕方ないかもしれませんけど。はぁ…
…その籠絡された男に生徒会役員とか教師とか年下のアイドル系少年もいるでしょうって?すごいですわ、大当たりです。最後のなんて条件細かすぎますわ。
…え?それは乙女ゲームですって?乙女ゲームってなんのことですの?…あらこんなところにゲームカセットが…KAITOグループのものですわね。これが乙女ゲームというものなんですの?
とりあえずしてみますので二時間お待ちくださいな。
…やってまいりましたわ。確かに状況が似てますわ。でも、今はこんなゲームがありますのね。面白かったですわ。
ですが、現実でしてしまったらそれはバカも同然。あの子はなにを勘違いしているのでしょう。
…電波少女?そんな風に言いますの?それか転生記憶持ち勘違いヒロイン?…とりあえずそんな感じですのね?わかりましたわ。
なんて思っていると目の前に影が入り込んできました。いま私、自分の部屋にいるのですけど。誰ですの…って
「あら?巧様じゃありませんか。今日は部活動はありませんの?」
「今日はな。…ノックしたが返事がなかったが、なにをしていたんだ?」
「っいいえ?なにも…」
「ん?なんだこれは」
さっきまでしていた乙女ゲームのカセットとられましたわ!あれ、ちょっと見られたら…
「…乙女ゲーム?そんなの興味あったのか?」
「えぇ、まぁ…」
「ふぅん…」
なぜか巧様の顔が怖いですわ。というよりあれに気づかれないかの方が心配ですわ。
「…おい、これ全年齢版だけど、刺激が激しいとか言われてるやつじゃん!」
「え、えと、それはその…」
仕方ないじゃないですか!落ちてたのがそれだったんだから!…とは言えず(だって、持ち主がわからない物は勝手に触っちゃいけませんもの)
「なんだよ。こういうのしてみたいのか?」
「そうじゃないですけど…」
さっき感想で面白いと言いましたけど、それは…巧様にされたらその、いいな…って思って…なんて恥ずかしい!
「…そうか」
「え、キャア!」
ドンと座っていたソファに押し倒されました。
巧様が、どうしてか、こわい
「ほら、ゲームではどんなことされてたんだ?どんなことを言われた?言ってみろよ、俺がやってやるよ」
そう言って私の鎖骨を撫でてきます。って思ったらどんどん下に下がってますけど!?
「ちょ、巧様…!」
「なんだよ舞…俺じゃ嫌か?…他のやつがいいのか?なぁ、どうなんだよ、舞…」
そんな、寂しそうに言わないでください…私は、巧様しか見ていないというのに…
「っ…そんなこと言われても…巧様は、梢枝さんが、お好きなのでしょう?私にそんなことを言われては、梢枝さんは嫌じゃありません?」
「…は?」
手を止めて私の顔を覗き込む巧様。でも私の上に乗っかるのはやめてくれない。
あ、梢枝さんは、あの学園長の孫娘です。
「梢枝?…ああ、あの学園長の孫娘の」
「そうですわ。最近ずっと一緒にいましたでしょ?私のことなんて気にせず行ってきたらいかがですの?」
「なんだよ、妬いてくれねぇのか?」
「もう妬いてます」
あ!つい本音が…
「…ふぅん。」
「あ、あの…」
「言っとくが俺はあいつが好きなわけじゃない。それに今日はおまえのために早くきたんだ。他のヤツのためじゃない。だからいるぞ」
「巧様…」
どうしましょ
嬉しすぎて笑顔がとれませんわ。それを見て巧様も笑ってます…
「…じゃ、続きするか」
「え?!ちょっと、巧様!」
そういえばあの体勢のままでしたわ!
「…冗談だ。まだ、婚約者だし、親の庇護下だしな。…まだ待つさ」
「え?最後なにかおっしゃいましたか?」
「いい。こっちの話だ」
そして、ところで…とニッコリ笑って話を続ける。
「あのゲームをなんで舞が持っていたか、説明してくれるか?」
そのあとは必死に落ちていたことを説明しました。そして、せめて高校を卒業してからしなさいと言われました。反省してますっ
「もちろん、卒業してもやらせる気はない!!」by巧