無人島の機械
かなり短めのミステリーホラー
「今日で3日目か。」
男はそう言ってそばの木に3本目の印を刻む
「視界に人工物はなし、見渡す限り青い海。」
砂浜から水平線をじっと見つめるが、目に映るのは青ばかり
「なんて穏やかな海なんだろう。あの嵐が嘘みたいだ。」
男は海での一人旅の途中で難破しこの無人島に打ち上げられた
怪我は無く体は健康そのものだった
「さて、どうしたものか。」
男は海に背を向け森の中へと入っていった
しばらく歩くと少し開けた場所に出た
整地がされていてその中央に四角い機械が置いてある
「…。」
男は慣れた手つきでその機械を操作した
機械が唸りだしガタガタと振動する
それが止むと機械の側面がパカッと開く
コップの中に液体が入った状態で出てきた
「水か…。」
男はその一杯の水を飲み干す
「ふぅ。」
そのコップを反対側の扉に返却する
機械から出てくるものは男が欲するものばかりであった
お腹がすけば食料を、今のようにのどが渇けば水を
望むものは何でも出てきた
ただしそれに加えて何かしらおまけのようなものがついてきた
食事であれば皿が、水であればコップが
それを返却しないと再びスイッチを押すことはできない仕組みのようだった
「どうしたものか。」
普通は無人島から生還するために脱出を試みる
だがこの島では生きるために必要なものは何でも手に入る
無理にこの島から脱出しようとするよりはこの島で待機することの方が生存率は高い
不思議な状況だった
生きるために脱出しようと思うが、生き残るためにはこの島に留まるしかない
男の悩みはこれだった
ただ時間だけが過ぎていく
死ぬことは無い
しかしそれ以上の事もない
男の精神は限界だった
次の日また男はスイッチを押した
扉が開くと鈍い聞きなれない音が響いた
拳銃だった
男は不思議がることもなく森の奥へと静かに消えていった
機械もまた、音を立てることもなく二つの扉を閉めて静まり返った