~No.38~
ボロボロの軍衣姿の男二人は広場のベンチに項垂れる様に座った。重たい頭を上げ青空を仰ぐ。
「気持ちいいね」
「ああ」
血と汗で汚れきった身体、疲労しきった肉体のせいで基地まで歩くのも面倒になってしまったのだ。暫くの間、二人はだんまりと口を開かなかった。
「あの、セヴィルさ…」
咳払いをしながらヴィルは沈黙を破った。
何かを言いたそうなのだが、なかなか口にしない。
隣を見やると、ヴィルはそわそわと顔を動かし口を小刻みに動かしている。
「何だ」
「……さん」
「何?……聞こえないぞ」
「と、と、と………」
「と?」
急に背筋をぴんと伸ばしたヴィルはわなわなと口を震わせ……覚悟を決めて目をつぶると――
「と、父さん!!!」
突然の大きな声に餌をついばんでいた小鳥達は一斉に飛び去った。一瞬、その場の空気は停止したが。
言い慣れない言葉にヴィルの声は裏返る。それが可笑しくて傷む腹傷を抑えながら笑った。
「何だ。さっきモスキートの前では普通に言えてたじゃないか」
「あの時はモスキートが居たから言えたんだよ。今は、その、2人だし…。何だかまだ変な感じなんだ。セヴィルさんが僕の父さんだったなんて」
「ヴィル…」
「だけど、嬉しかったよ。やっぱり僕は一人じゃなかった。父さんがいて母さんがいて、帰る場所があった。もう満足だよ」
杖刀を支えに立ち上がり口一杯に新鮮な空気を吸い込んだ。いつもと同じ風景なのにいつもより目に見る光景が輝いて見えた。
「ってな訳で、帰りますか。父さん」
差し出された手は出会った時より遥かに大きく成長している……
頼もしくなった息子の手を握り立ち上がった。
朝の光が広場に差し込む中、父と息子は互いに傷ついた体を支え合いながら太陽に照らされた美しい街へと続く小道をゆっくりと歩いていった。




