~No.35~
モスキートは苛立っていた。二人の首を持ち帰るはずのwhiteがまだ戻らない。
「……遅い…まさか、しくじったか」
whiteを培養器から取り出したのは三日前。それまでは強靭な戦闘力をつけさせる為、内臓に取り付けたチューブへ様々なものを流し込んだ。
身体中の筋肉を普通より20倍発達させた。
あらゆる臓器の機能を普通の人間より倍向上させた。脳の思考機能はある特定の場所へ一定間隔で強い電流を流すことで向上させた。
どれもwhiteにとっては苦痛を伴うものだったが、培養器の中でのたうち回るwhiteを観察するモスキートには哀れみなど一切なかった。
全ては完全なる"人間兵器"を作る為……
己の内に宿る戦争を愛でる心の為…
whiteを取り出すと早速任務を与えた。
「軍界権力者セヴィル・スグナとお前の元であるもう1人のwhiteの首を持って来い」
それを聞くとwhiteは培養液で濡れた髪をかきあげながら怪訝な顔をした。
「セヴィル?誰だ、そいつは」
モスキートは意地の悪い笑をしながら答える。
「お前の父親にあたる男だ」
「父親…」
「いまさら関係ないだろう。お前をここまで育てたのはこの私だ。だからその男と自分に同じ血が流れているからと遠慮する事はない。現に今まで一度もお前を助けに来た事はないのだからな」
無表情なままwhiteはモスキートのにやついた顔を眺めた。ジッと見つめられモスキートは笑みを引っ込めた。
「…俺の元であるwhiteとセヴィルの関係性は?」
「父と子。つまり親子だ」
それを最後にwhiteが口を開く事はなかった。
与えられた武器を装着しモスキートと目を合わす事無く夜の闇へと消えた。
「早く首を使者に渡さなければ…交渉が破談になる……」
震える唇でそう呟くと激しい頭痛がしている頭を強く抱え机に突っ伏した。




