~No.30~
「もういい、十分だ」
「何言ってるの、まだ完全には…
「治った」
完全には治っていない剥き出しの傷のまま傷口に添えていたヴィルの手をどけるとセヴィルはゆっくりと立った。しかし身体はまだ重かった。立てる程回復していない膝は伸ばし切った途端ガクッと崩れた。
「!?」
「セヴィルさ…」
ドサッ……
「…痛~…やっぱまだ立てないか。あ…悪い」
「…………」
「おい、大丈夫か?」
「……ファルの時より痛い」
「は?何の事だ」
「なんでもない……グスッ」
壁にもたれるようにして座るとセヴィルは上着とシャツを脱いだ。普段、服を着ている時はそれ程筋肉質に見えず華奢で細いと思っていたが、その上半身は軍人らしく鍛え上げられており無駄な筋肉が一切ついていない。
「すごい身体…」
思った事をそのまま口にした。
「俺がひ弱だとまずいだろ」
そう言って笑うと、セヴィルは血で汚れていないシャツの部分を手で引き裂き慣れた手つきで傷口に巻いていったが、長さが足りなかった。
待ってくれない傷からは血が滲み出し、床に垂れた。
「ハァ…このままいくしかないか」
壁に寄り掛かりながら立つセヴィルだったが滴り落ちる血はやはり痛々しい。
『これ以上治療色を使ったら僕の方が倒れてしまうしなぁ』
ふと自分の服に目が留まる。
『これだ』
ビリッビリッ……
「…?何してる」
自分と同じ様にシャツを引き裂くヴィルはそれを自分に渡してきた。それを巻け、という事なのだろう。
「包帯の代わり」
上半身裸のままヴィルは笑った。
その顔が愛おしくヴィルの頭をぐしゃぐしゃと乱暴に 撫でた。
「さてと、傷は塞がった。お前はこれからどうしたい?」
「そーだねー…僕らしくないけど、一生牢にぶち込んでおきたい奴がいるんだ」
「ほう、奇遇だな。俺も同じ事を考えていた」
腕組をしたままの男2人は目を合わせると声を立てずに笑った。
「でも僕はさっきの治療で疲労困憊で戦えない。セヴィルさんも下手をすれば傷がまた開いてしまう」
「そして俺達には武器がない」
「……じゃあどうするの?」
目をキラキラさせてセヴィルの名案を期待するヴィルにセヴィルは"妙案"をニヤリとして提示した。
「寝よう」
「……へ?」
言うやいなや、倒れるように横になると上着を被りセヴィルは寝てしまった。
納得がいかないヴィルは起こしにかかる。
「セヴィルさん、どういう事?何か策はないの?」
「…………」
「セヴィ…ブフッ!」
「うるさい、お前も寝ろ」
訳の分からない頭を抱えたまま顔に投げつけられた上着を被るとセヴィルの横でヴィルは目を閉じた。




