第1話 二人の新入部員 4
part4
時は過ぎ、5月も中盤に差し掛かった。
ここ二週間ほどで分かったこと。
トランペットパートに入ってきた二人の新入部員。
実にこの二人は対照的である。
倉田瞳は毎日誰よりも早くパート練習に来る。そして誰よりも一生懸命練習する。
トランペットは既に一年生にしてパート内No.1の腕前だ。
顔は高1のため幼さが残っているが美人系であり背も高め。スタイルも抜群に良い。
性格も印象ではおっとりしている…と見せかけておいて実は中身はしっかり者である。
無口…と言うわけではないが練習中は殆ど無駄口を叩かない。真剣そのものである。
それに対して塩谷桃…こいつはいったいなんなんだ。
パート練習には最近来るようになったが、来ても大抵楽器を吹いていない。
練習中お喋りばかりしてる。倉田瞳に常に話しかけ、邪魔をしているようにしか見えない。まあ何を話しているのか知らないが。
見た目は背の小ささで中学生にしか見えず、性格は元気…というかお喋りでうるさいだけだ。まあ見た目は確かに可愛いが。
そして、彼女の最近のお喋りターゲットは倉田瞳でなく、僕になってきたみたいだ。
「はるあき先輩~」
「なんだ?塩谷」
「わたし今日気分いいんですっ」
「数学のテストで追試をギリギリ免れたとかか?」
「なわけないですよ~余裕で追試ですっ」
…その言い方だとまるで追試を受けることに誇りでも持ってるみたいだな。
「そんなことより先輩聞いてくださいっ今日新発売のコンビニスイーツがめっちゃ美味しかったんです~」
「先輩も食べますか?美味しいですよっ」
「じゃーん!ロールケーキですよっ今話題の!!ほらここにイチゴ味と抹茶味と…あっもも味もありますっ」
「先輩遠慮しなくていいですよーどれでも好きなものをどーぞ」
「ああ、ありがとう。じゃあこのもも味をいただこうか。ちょうどお腹が空いて…」
「っておい!今は練習中だ。音楽の話以外僕は受け付けないぞ!後にしろよ!」
「というかもうそろオーディションだぞ。お前練習しないとコンクールメンバーに受からないぞ」