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予章
~プロローグ~
千年間、ずっと輝きを失わない宝があると、少女は語った。
幼い少女だった。幼い故に、少女の話に耳を傾ける者など誰ひとりいなかった。年老いた村長も、力自慢の男も、泣いてばかりの女も、少女の話を聞こうとはしなかった。
『こんな幼い子供が、そんな昔の話を知っているはずがない』と。
いつの間にか少女は、その話を語らなくなった。大人達は少し安心の色を見せて、次第に少女の話など、忘れていった。
そんな大人たちが安心しきった直後だった。少女が眠ったまま、目を覚まさなくなったのは。
大きな音を出しても、体を揺すっても、何をしても少女は目を覚まさなかった。
大人達は、次第に少女の話していたことをふと思い出した。千年の宝の話を。
大人達はその宝を探し出せば、少女が目を覚ますのではないか、そう悟った。大人達は死に物狂いで宝を探した。危険なところも、命懸けで探した。
けれどその宝は見つからなかった。
そして、その村の住民は、少女を残して姿を消していった。
千年の宝、それは次第に、死の宝と呼ばれるようになった。