第1楽章 8 ~君に会えて、良かった~
『さて、意見がある者は?』
大天使様は、いつだって声だけ。
しかし今日は、僕以外みんなが声だった。
この枷は、取れない。
「はい、大天使様。」
一人の女性の声がした。
『発言しなさい。』
「ありがとうございます。
今回の彼の行動ですが、天使の存在意義を大幅に間違えています!即刻、削除すべきです!!」
「異議あり!」
別の、男性の声がした。
『発言しなさい。』
「ありがとうございます。
彼は、確かに天使あるまじき行為をした!しかし、その力はかつて無いものだ。彼を削除するのは止めて、他のことで罪を償わせてはどうだろうか?」
「しかし、それは…」
『…では、少年の行いは罰する。その結論で良いですね?』
それには全員が肯定する。
『…少年。
君はそれで良いですか?』
「…はい。悪い訳が無い。」
『…君は、自分が何をしたかを、分かっているのですね?』
「…はい。
僕は…人間の命の定めを変えてしまいました。これは重罪です。」
『よろしい。
…幹部達。少年の定めを、私が変えることで罰するのは、良いですか?』
「「「「「え?」」」」」
すっとんきょんな声が、幹部と僕から発せられた。
『私は最近、天使があまりに増えすぎてしまったことを悔やんでいます。それは私の罪です。
ですから、彼の定めを少しいじって、天使を減らし、私と彼の罪を償う、ということをしたいのですが、よろしいですか?』
「…大天使様、お人が良すぎます…」
「大天使様がお決めになったことでしたら、どうぞ。」
「私も賛成です。」
『では、私があなたの定めを決めましょう。』
大天使様が、人間のような姿で現れる。
「エリ…?」
『よほど、彼女が大切なのですね。今、私はあなたの記憶で一番大きい想いを持つ姿を借りているのですよ。
あと、30年後に、君はまた生まれて来ます。その時、天使、人間の頃の記憶はありません。
あなたは、その時の使命を、次こそ果たして下さい。』
僕は、意識が無くなっていった。
最後に残るのは、君の記憶だと良いな。
ごめんね、エリ