第1楽章 7 ~ガイルの過ち~
「…で、ガイル君?」
ヴェルディが半分笑ったような音を出した。
「何ですか?信者サン。」
やや皮肉って言い返す僕。
「君…羽根まであと幾つ?」
「あと150ほどですが?」
「…ぷっ、名前まであと250ほどですかww」
「…悪かったな。」
「いいえー?良い名前かと思いますよ?
正式には貰って無いけどwwww」
「…本当のことを言っただけだ…おっと、そろそろエリのところに行かなくては。」
「……そっか、いってら!」
「…お、おう…」
きっとヴェルディのことだから突っかかってくるかと思ったけど…思いの外、引き上げた。
これも運命に関係あるとは、一度しか思ったことは無いが、
僕は迷わずエリの病室へ。いつもより、中が静かな気がした。
「エリ。僕だよ。今日はさ、森にあった木の実を…」
病室に居るはずの、愛しい大好きなエリ。
ベッドから、もう動けないエリ。
ベッドの上に…エリの姿は無かった。
代わりに置いたかのように、脱ぎ捨てたパジャマが目に入る。
退院することは無理だ。病気は悪化しつつある。
外出も同じ理由で。
トイレ…だとすると、わざわざパジャマを脱ぐ必要は無い。
と、なると、答えは。
「…っ、エリ!」
必死で駆け出す僕。
行く先々で不思議そうな顔をされるが、気にしている暇は無い。
ようやく探し当てた、その場所には。
『春日恵里 16歳 手術中』
天使は、人間よりも耳が良いようだ。
中で機械音が聞こえる。
ピッ、ピッ、ピッ、ピッ
天使は、人間に出来ることが出来なかったりする。
隣のご家族は、お守りを持っていた。
ピッ。ピッ。ピッ。ピッ。
天使には、人間に出来ないことが出来たりする。
誰にも気付かれず、病室のドアを開けたりとか。
ピッ…ピッ…ピッ…ピッ…
恵里…エリ。
僕の、最愛の人。
「エリ。ねぇ…君、きっと生きたいよね?
僕なんかより、ずーっと良い人間と、巡り逢いたいよね?」
フッとわらって、
エリの両頬に手をかけて、
最期に、一度だけ、思い出をつくらせてもらって、
「大好き。エリ。」
「大変です、先生!患者の様態が…」
「なんだって!?」
『これより、緊急会議を始める。』
大天使様の声を、僕は初めて聞いた。