第1楽章 4 ~少年のターン~
彼女の名前はエリだった。
病名は覚え切れないほどに長ったらしく、寿命は長くても1年。
学校に通ったことが無いことも教えてくれた。
「ねぇ、キミ、名前も無いの?」
「…200人分集めると貰える。」
「えー、面倒くさい!私が付けちゃ、駄目?」
「…良いけど。どうせ別のが付けられるんだよ?」
「まあまあ、良いじゃん!私だけのキミになるんだから。」
そう言って、本気で考え込む君。
愛おしく、切なくなった。
「ねぇ、キミって何食べるの?」
「…天使は食べ物食べない。」
「食べることは出来るの?」
「…らしいね。僕は要らないけど。」
「へぇ…勿体無いなー…私は食べたくても食べらんないものが沢山あるのに。
…なんちゃって。えへっ」
そうやって、思わず本音が出たところを、なんちゃって、で隠す君。
哀しくて、美しかった。
君への愛を、ただただ増やし、どうしようもない感情を、魂狩りにあてた。
君に会って1ヶ月。
僕は魂を50ほど集めた。
君にガイルと名付けられた。
男の子にヴェルディという名前が付いた。
彼はもうすぐ羽根を貰える。
君はよく咳き込むようになった。
…もし最短で死ぬとしたら、半年だと言われたそうだ。
君と会って1ヶ月。
ヴェルディは変わった。
君は変わった。
僕は…変わらない。
だからこそ、気付かなかった。
もう…幕は上がっていたことに。
それに気付かせてくれたのは、ヴェルディでも君でも駄目だったのだろう。