第3楽章 6 ~奇跡の2人~
『………なん…で…………?』
ぼとり、と彼女が何かを落とした。
それは何かが詰まっていたらしく、重い音がした。
『…え?…な、に?
何?なんなの…?』
状況が掴めていて、
なおかつ受け止めたくない。
…そんな声を彼女は発した。
涙が、軽く、下へ落ちていった。
『君が…やったの?』
彼女はこちらにようやく気づいたような感じで、僕に呟いた。
「…ああ。」
沈黙。
不思議と、心地よかったのは、彼女が僕を恨んで居なかったからであろうか。
次の、彼女の言葉。
『どうやって、運命を変えたの?』
僕には単純に理解出来ないものだった。
が、彼女が発したからこそ、何か意味があると、素直に思えた。
「…ヴェルディには、楽になって貰いたかった。
それだけですよ、エリーヌサマ。」
僕は、ヴェルディを消してからすぐ、ヴェルディとの記憶が沢山蘇った。
故に、何故ヴェルディが僕を恨んだのか、今更ながら、解る。
『…君は、強い人だ。
君は、強い人だ。
だから頼む。私を----』
誰も居なくなった丘の上で、1人。
エリに、どうしても会いたくなった。
「エリ…」
思わず、口にしていた。
エリ…エリ。
僕の、最愛の人。
「どこに、居るんだよ…っ
エリ…っ」
雫は、自分の手をすり抜けて、ぽたっ、と地面に落ちて、
気づいた。
僕は、この世に存在していない。
そういえばあの暗闇の中、
何故黒い服を着ていると分かった?
そういえば、さっきヴェルディは見えなかったのに、
エリーヌは何故見えた?
そういえば、エリーヌが発した言葉、
運命をどうやって変えた、だと?
何故、何故、何故?
降って湧いた疑問は、あくまでも疑問に過ぎず、
答えは出ない。
思い悩み、悔やんで、叫んで、泣き喚いて、息が切れて、
僕は、結論を出す。
これにはもう1人、
犠牲者が必要である。
そいつは、
昔、大罪を犯した天使である。




