第3楽章 4 ~見えない相手は誰?~
当たった。
また当たった。
ヴェルディはもう僕の居る位置を把握したようで、ぶつからない拳を何度も何度も当ててくる。
「この野郎…この悪党ッッ!
お前なんか、俺と同じようにエリに会わずに終われば良いんだッッ!!」
一つ、また一つ当たる度に泣けてきて、
僕はヴェルディに一体何をしたのだろうか
ヴェルディはどうして泣きそうな声なのだろうか
僕は何故、ここに存在するのだろうか
僕は何故、ヴェルディを哀れんでいるのだろうか
どうしようも無い疑問は果てず、
前に居る者の流す涙をせき止めることさえも出来ず、
許可された慰めの一言すら出てこない。
ふと、ヴェルディが手を止める。
「嘘だよ、バーカ」
まだ終わらない涙を無理に止め、ヴェルディは独り言のように呟く。
「…」
「バーカ
バーカ
バーカバーカ」
「…」
ヴェルディの気持ちが、分からなかった。
ただ、悲しいのだろうと、
「何か言えよ」
「…僕に、何して欲しい?」
「は?」
すっとんきょんな発声。
「君が傷ついたことは十二分に分かった。
だから、僕は何かしてお詫びをしたい。」
ヴェルディが、後ろに下がったようだ。
丘に生えた草が、風も無く横たえた。
「何が良い?
僕が死ぬ?エリを殺す?思い切り殴る?」
「バーカ
エリも俺も、お前は見えないだろ。」
「む…案を出しただけだ…」
少し唇を突き出すが、恐らく見えていないだろう。
しばらく、沈黙が流れる。
考えているのか、唖然としているのか、分からない。
でも彼は、少なくとも、
離れることも近づくこともしなかった。
と、ヴェルディが唐突にぼそりと言う。
「…ガイル、俺を殺せ。
悪魔の仕事は、生きている魂を取り出し、
罪人を人外へと変えることだ。」
耳が、カッと熱くなることを感じた。




