第1楽章 2 ~それは、天使の独り言~
少年は尚も人を集めなかった。
仕事であるのに。
そう、彼等は、何を隠そう天使達。
使命を持ち、汚れ無い心を持たない…とは耳に聞く、あの天使。
少年は、つい先週天使となって生まれた、新人の天使だった。
そして、彼等が集めるのは、人間の魂。
勿論生人では無く、死に、行く道が分からない者を。
さて、少年は丘から戻って3時間、ただただそこを歩いていた。
「…僕が、天使…」
そして、少年は呟く。
人間にはまだ聞こえない、天使独特の音を。
「おい…!やっと追いついた!」
先程の男の子が、少年を追ってきた。
息は、切れない。
「…どうしたの?」
「どうしたもこうしたも無ぇよ!…お前、魂を集めないと消えちまうの、忘れたのか!?」
天使の使命は、魂を集めること。
この世界では、1ヶ月の間に一つでも送らないと、無力な者と見なされ、存在を消される。
逆に、魂を集めれば、存在を更にに確実に増させるという特典がある。
男の子には、少年のその無力さが信じられなかった。
「…消えても、良いかなって」
「…は?」
少年は、つい先日に天使になったばかりの子。
人だった、無数の人生が、彼には思い出せるのである。
「…生きてて、ロクなことがなかった。
生きる価値、分かんないよ。僕じゃなくて、他の人が頑張れるように、僕は消える。」
「駄目だ。それは、この俺が許さねー。」
「許すも何も、要らないんだけど…」
「なら、俺が取った魂を、強制的にお前にやる。生きる気力が出来るまで、俺のを分ける!」
男の子は、親分のような気持ちが残っていた。
生前の魂の欠片だろうか。
しかし、少し意外な言葉で、これは撤回される。
「…なら、集める。人のを取りたくないから消えると言ってるのに、そんなことしたら本末転倒。さっさと探す。」
「…お、おぉ…
お前、優しいな!」
「…気色悪い。」
「酷っ!」
こうして、一方的に生まれた友情は、いつしか少年も男の子に対した気持ちに変わっていくのであった。
「…本当に、お人好しはどっちなんだか。」
使命を確立させた彼は、一つ、呟く。




