第3楽章 1 ~罪は償えない~
僕はここに来て、気づいたことがある。
…まあ、ここ、と言っても自分がどこに居るか分からないような暗闇の中に居るのだが…
一つは、僕には生きてる時の人生でさえ正式な名前が無かったこと。
いつも、勝手に付けられたことを思い出す。
二つは、僕は人生が何度変わってもエリを愛していたこと。
例え、エリの名がサリーになってもタケシになっても名無しだったとしても。
三つは、ここに居ると恐らくは誰にも会えないらしいということ。
つまり、どこかへ行かなくてはいけない。
しかし、ここがどこだか分からない。
ついでに言うと、僕は今度何になったのか分からない。
大天使が言っていた、最大の罰とは、まさか、僕では無くエリに何かする、ということでは…?
…という深読みをしてみるものの、まあ、何も無いよなー…とも思いつつ。
今、気づいたけれど。
僕は、真っ黒い服を身にまとって居た。
天使の頃は、人間の時と同じような服を着ていたから、気にしたことは無かったけど…
流石に、この黒い服は、スーツっぽくて恥ずかしいな…
…なあ、この駄話り、いつまで続くんだ?
少し不安が出てきた頃、後ろから光が当たったような感覚がして、振り向いた。
見えたのは、一筋の光線。
それが、縦に長く、横に広がって、思わず目を左手で隠すと、
僕はいつの間にか、
あの街に居たんだ。