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第2楽章 6 ~俺は、いつかこんな日が来ると思っていた~






「サヨナラしな、エリ!!」



ヴェルディが、私の頭上に手を振り上げた。




思わず目をつぶると、



…ザッ、と音がして、ヴェルディが驚いたような声を出した。






目を開けると、そこにはさっき思い出した、あの人がヴェルディを止めていた。





「…っガイル!」



「お前、何でここに…!」






ガイルは、私を振り向いてニコリとだけ微笑み、「何すんだ、離せ!」とか言ってじたばたしているヴェルディを右腕で抱えて宙を浮いた。





「待って、ガイル、私も…っ」




飛ぼうとした私を、左手で制する。




そして、首を横に振った。






「…分かった。行ってらっしゃい。」





悲しそうにまた微笑んで、ヴェルディとどこかへ行ってしまった。




私はガイルに会ったことで、さっきの不安や恐怖を手放していた。







そして、ヴェルディ達が来たのは、上界。



「おい、離せ!離せってば!何すんだ、このガイル野郎!」



『口が悪いですよ、ヴェルディ。』




ガイルが、初めて話した。




この声は、ガイルのものではなかった。





「…え…?」




『…気付かれたようですね。貴女ほど私への信仰が深ければ、私の見える姿も私自身かと思っていましたが…やはり、見えるものは憎しみの姿なのですね。』




「…っあ、あの、下ろして頂けますか、大天使様…」





ヴェルディが青い顔をして、恐る恐る声を出した。




『…貴女の信仰心は、真のようですね。しかし、私も憎む対象でしょう?』




大天使が、ヴェルディを下ろしながら、クスクスと笑った。



ヴェルディは顔を少し赤くした。





『しかし…いくら信仰心が強くとも、貴女を罰しなければいけません。』




ガイルの顔で、大天使は悲しい顔をする。




それからくるこの感情の名前を、ヴェルディは知らなかった。




「分かっています、大天使様。俺は、同じ天使を傷付けようとしました。ですから…一番重い罰にしてください。」



大天使が、目を見張った。



しかし、彼は本気なようだ。




『…分かりました。しかし、それだとあの子も居るけれど…良いですか?』





ヴェルディは、目を細めて笑った。





「一番重い罰が、俺は愛する人が絶対に居ないところだと思ってます。嫌いな奴が居るところの比ではありません。

それに---選ぶのは、大天使様、貴方様です。」




大天使は静かに言った。




『では、貴方を送りましょう。




下界の下…人間達を消すところ、牢界へ!』









ヴェルディの姿が消えた。




上界は、静かになった。





だから、ポタリと音がして落ちた聖なる雫を、また誰も見ていない。

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