第2楽章 4 ~思い出せっ、僕は僕じゃない!~
「会ったことあるよ。何回も。ほら、覚えてない?」
不敵に笑った彼は、(彼自身は優しさなんてものとかけ離れているが、)言葉で僕を安心させる。
その安堵は気持ち悪く、いっそのこと別の感情の方が良いと思ったくらいだ。
「で、天使を辞めるっていうのは…?」
興味本位で、聞く。
ヴェルディはさっきからずっと笑っていて、その方が気持ち悪い…
「辞めるっていうのは…そうだな…
お前、まだ思い出してないと思うけどさ、恋人が居たんだよ。だから。」
…続かない言葉。
沈黙が、2人の間を通っていく。
「…いや、理由になってないし。」
「うんうん、分かるよーその歯がゆさww
でもさ?大天使様との約束だから、言えねー。ごめんな☆」
いや、そんなテンションで言われても。
なんか…段々イライラしてきた…
「じゃあ、僕魂取るから、街に降りる。
先ほどはありがとうございマシタ。」
超棒読みで、お礼を言っておく。
「おう、またな!」
もう会いたくはない…
僕は無言で身を翻し、街へと降りて行った。
こうして僕は、魂を取ることに専念した。
一人は少し寂しかったけど、知り合いが居なかったから。
魂は、2日に一個取るペースで取って行った。
あまり多くは取りたくなかった。丁度50個目を取った日、ちょっとずつ取り戻していた記憶のことを考えていた時、今まで思い出した、いくつもの人生の中で一番新しいと思われる人生。
自分に、最愛の人が居た時の記憶が、少し戻ったのである。