第1楽章 終章 ~消えかけた思い出の下~
「恵里さん、よく頑張ったね。手術は無事終わったよ。」
主治医の声で、目が覚める。
見えるのは、いつもの病室の天井。
「恵里…よく、生きて…!」
母さんの声もする。
顔を左に向けると、立っている主治医と座っている母さんが見えた。
前と、同じように。
まるで、手術後この配置は決まっているかのように。
「…母さん、」
「何?恵里。食べたいものでもある?」
「…昨日、ここに男の子、居なかった?」
「うーん…そういえば居たけど…どんな子だったかしら?」
ガイルが、来たんだ。
じゃあ、きっとあれは夢ね。
…あれ、って、どんな夢?
「手術室、誰も入れないわよね?」
「当たり前です。入れたら、私のミスになりますからね。」
主治医が答える。
「そろそろ、良いですか?術後の経過報告に使う質問をしたいのですが…」
「あ、はい。どうぞ。」
「…ガイル…」
確か…天使の男の子。
羽根が無い、面白い、私の…
私の?何?
名前…なんだっけ?
どんな人?どんな姿?
私…そんな人知らない…?
「恵里!入るわよ。」
お姉ちゃんが入ってきた。
「うん、どうぞ。」
「何してたの?」
「…何してたっけ?」
「…手術失敗したんじゃない?ww」
「冗談でも止めてよね…」
本当…何、してたっけ…?
まあ、良いや…
「…消去、終わりました。」
『ご苦労様。ヴェルディ。』
…こんなのに、魂を使いたくなかったが…
ガイル、今、良い夢見てるか?ww
エリちゃん、元気にしてるぞ?お前のこと、忘れたけどww
ゆっくり寝てろよ?
そのうち、連れ戻してやるからなwwww