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幕開け 神様だって子煩悩!!

 



「ゆ、許せ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ん!!!!」




 と、神界“ゴッドヴィアーウ”に男の怒声が響き渡り、その直後に震度5程度の規模の揺れが神界を襲い、その揺れが原因で神界の数多くの都市に被害をもたらした。



 その怒りの震源地はというと、獣神族が住まう国“アニマリーファズ”の中でも最大の敷地面積を誇る巨大都市である“ローゼフィア”のシンボルでもあり、国の観光場所にも指定されている獣神族の王族らが住まう居城のさる一室からであった。


 四神族の中でも一番権力や財力のある獣神族の王エリックの元、各神族の王たちは一同にエリックの元へと馳せ参じ、突然人間界へと降り立った自分たちの愛娘であるアリッサやノアシェランの動向を密かに探っていたのだが・・・・・・。


「全く!! なんということだッ! よもやアリッサが、ワシの可愛いアリッサが、あんな貧相な猿にお熱を挙げるとは!!」


 ダンッ、とガイゼル髭を揺らした猫耳を生やした初老の男が、怒りのままにテーブルを拳で叩きつけて咆吼する。その拍子にテーブルの上に乗った紅茶が入ったカップが跳ね上がり、中身をテーブルにぶちまける結果となった。


 同じテーブルに控えるのは各国の王や名だたる貴族たちであった。


 ここは城内で唯一の執務室であり、連日連夜に伴って各国のトップがお国の大事を決める話し合いを繰り広げている部屋であった。


 上座に座るのは獣神族の王エリック、それから順に座るのは巨神族、海神族、耳長神族の王であり、王たちには必ず一人の名門貴族と従者が伴い、王らをサポートするのが目的であった。


 しかし、こうも各国の王たちが一同に会することは非常に稀であり、今回の事態がとても申告であるということが容易に想像できる。


 だからだろうか、いつもの強面をますます強張らせて、皆一様にある一点へと視線を注いでいる。


 その視線の先には、大きな円形の鏡のような物が置かれており、その鏡面にはある光景が延々と写し出されていた。


 この鏡は人間界で言うところのビデオカメラに等しい物であるが、人間界のと比べると天と地ほどの性能の差がある。


 神力を用いて、土台が無くともいとも簡単に望みの場所の映像を観られるという、すばらし機能を備えているのだ。しかも、映像も音声もクリアときたものだ。


 さて、その問題の映像というのは――――――――――。



 アリッサとノアシェランが一人の人間のオスを、端正な容姿の人間のメスと取り合っているように見える映像であった。


 たかが、あんな短命で愚鈍な猿なんかにお熱を挙げるとは~~~~~~~~~~!!!!


 グギギギギギ、と忌々しそうに唇を噛み締めながら鏡面に写し出された光景を眺めているエリックを、自身の玉座の右側の椅子に腰掛ける涼やかな表情を浮かべる妙齢の男が、まるで聞き分けのない幼子を諫めるように注進した。


「―――――――――王。僭越ながら、此度の神例をお決めになったのは紛れもない貴方様と存じ上げまするが。それに、よく見るとその人間の男。中々に男気が溢れる様子。我々に喧嘩を吹っかけた人間など、後にも先にも彼だけですよ」


「・・・・・・フン、人間贔屓のお前の言うことなどアテにはならぬわ!! それにだな。お主の娘、かの神巫女さまもあのオスに執心の様子。それを見て、何とも思わぬか!?」


「・・・・・・娘の心は娘の物。私の物ではありませぬ。それに、かの娘とは久しく会うておりませぬ。なので娘にはとうに親として思われておりませぬ故に」


 平身低頭して答えるのは、巨神族の王でありノアシェランの実父であるアーヴァンであった。エリックの右腕的存在であり、また彼の唯一の親友でもあった。


 まぁ、巨神族は他の神族に比べて非常に長命なため、エリックと彼には10000もの歳の差があり、実際には親友というよりは祖父と孫の関係という方が正しい。


 それにしても・・・・・・、とエリックは苦々しい表情でアーヴァンを見つめた。


 この男は博愛に満ちた神らしい神なのだが・・・・・・、どうにも家族に対する愛情が希薄なのだ。いや、特に長女であるノアシェランに対して顕著なのだ。


 彼女を物心が付くか付かないかくらいで、神学校“マールスデウス”に幽閉という形で半ば強制的に入学させ、自らの元から追放させたと聞く。


 ノアシェランが泣いても喚いても、このアーヴァンは振り向きもせず、自身に縋りつく愛娘を冷徹に突き放したと。


 どういう心境だったらそんな酷たらしいことが出来るのだろうか。


 少なくとも自分は己に縋りつくアリッサを振り払うことは出来ぬ。


 しかし、そんな彼だからこそ巨神族の王として君臨できるのだろうな、とエリックは過去に読んだ巨神族の文献と比較しながらそんな感想を抱いた。


 四神族の中で、唯一人間に好意的なのはアーヴァン率いる巨神族だけであった。民も人間に非常に友好的で思考も人間よりに近いとされる。


 そんな一族の中である問題が浮上した。


 王であるアーヴァンの娘であるノアシェランが、神たちの中でも奇跡の紋章とされる“神紋”を右全身にくまなく刻まれたまま生を受けたことだった。


 右全身に走るようにして刻まれた神紋の影響で、巨神族では絶対にならないであろうアルビノ種として生を受けたノアシェランは、巨神族の中でも風当たりが非常に強かったらしい。


 王族でなかったら、王の実子でなかったら産まれた直後に亡き者として葬られていた身だ。


 人間寄りな思考を持つ彼らは自分たちとは違う見目のノアシェランを気味悪がり始め、なんら罪のない彼女に容赦ない誹謗中傷を浴びせた。


 そんな彼らの暴言に幼少のノアシェランは痛く傷付いたが、親の手前必死に堪え忍んでいたが、それもまだ幼い彼女には酷という物。


 とうとう我慢のたかが外れてしまい、己の神紋が自己防衛のためその秘めたる力を解き放ったのだ。


 その力の威力は凄まじく、彼女の周り約3~6ノブァータム(人間界で言うところのKMと同じ単位。1ノブァータムは約1000メートル)ほどが更地になった程だという。

 

 死人は出なかったが彼女の周りにいた巨神族のほとんどが手酷い痛手を被った。


 まぁ、彼らの場合は自業自得であり、本来は表に出さず秘密裏に処理するところであるが。


 このアーヴァンはそれを世間に公表し、娘であるノアシェランにもそれ相応の罰を下した。その罰というのが先程の“マールスデウス”への幽閉というわけである。


 いや、追放と言う方がしっくりくるだろうか?


 彼は実の娘に“二度と”我が土地に帰ってくることを禁止したのである。


 確か・・・・・・、自身の記憶が正しければ彼女はかれこれ1000年以上、あの学校に幽閉されているのではないか? 


 そういえばアリッサが『学校にとても真っ白で綺麗な髪をした小さくて可愛い先輩がいる』と言っていたから、どうやら今でも学校に軟禁状態らしいということが窺える。


 別人ということもあろうが、マールスデウスにアルビノはノアシェランを除いて他にはいない。


 なので、アリッサが見誤ったということは決してない。


 それほどまでに、この神界でアルビノは貴重であると同時に畏怖の対象として扱われるのだ。


 ただ、産まれてくる種族を間違えたのだ、ノアシェランは。


 巨神族に産まれたばかりに、このような扱いを受けるハメになるのだから。


 


 ・・・・・・話を元に戻そうか。



 ノアシェランの境遇には同情するが、今は目先の問題から取りかかるべきである。


 あの様子だと今更『あ、ごめ~ん。あれは冗談でした♪ テヘペロ』などと撤回するわけにはいかない、と心中でもう一人のエリックが頭を抱えて苦悩していた。


 というか、無理矢理に娘たちから引き離したら嫌われるのは目に見えて確実である。


 ならば、ここは定例した通りに事を進めよう。


 あとはどうとでもなろう。


 自分たちと人間の間には、決して“恋愛”など成就しないのだから。


 クックッ、と黒い笑みを浮かべながら、



「さぁ、皆の衆。先程は取り乱してすまなかった。我が娘であるアリッサと、かの神巫女さまが気に入った人間ならば信用に足りるであろう。ならば、ここは最初に話し合いで決めたとおり。かの人間の男を我がゴット・ヴィアーヴに迎え入れようではないか」



 先程とは120度変わったエリックの態度に、みんな訝しげな表情を浮かべて互いの顔を見合わす。



 しかし、付き合いの長いアーヴァンや耳長神族の王ダーフィンや海神族の王ガエサニックは、エリックの腹の内を見事に見抜いていた。


 この王は、最初から人間界などを救う気などさらさらないのだ。


 それどころか、愛する娘までもを人間界破滅への“駒”として利用する気なのだ。


 物事を瞬時に理解してその裏の裏までをも読み取った上で出す、つまりは計算し尽くされた知略さには敬服するに値するが、この王は少々、性格に問題があるのだ。


 その上まんざら馬鹿ではないから、尚更タチが悪い。


 四神族のトップに立つくらいのスペックを備えている男なのだが、何せ“超”が付くほどの親バカッぷりで有名で、娘のためならどんなことでもやりかねないお方だ。


 しかし、今回ばかりは娘の要求に応じる気はないらしい。


 ただでさえ溺愛している娘に男の影がちらつくのでさえ忌々しいのに、その男が“人間”という事実がますますお気に召さないらしい王は、考え抜いた末にある妙案を思いついたのだ。


 自分のメンツもプライドも守れて、その上大切な娘も守れるという、まさに一石二鳥な作戦である。


 人間を好む一族の王であるアーヴァンは何か含むところがあるようだが、この男がエリックの考えに異議を唱えるはずもない。


 ダーフィンやガエサニックの思惑通り、アーヴァンは澄まし顔で「王の望みのままに」と賛同した。


 こうなっては仕方ない。


 エリックの右腕的存在のアーヴァンが賛同してしまったからには、自分たちが逆らえる余地はどこにもなく・・・・・・。



「「・・・・・・王の望むままに」」



 眉間に皺を寄せながらも、両神族の王はエリックへと深々と頭を下げてその意向に従う。


 そんな二人を目の前した臣下たちも王に続く形で慌てて頭を下げる。



 一斉に下げられた頭の見下ろしながら、




「そうか。皆、大儀であるぞ」



 実に満ち足りた表情を浮かべながら、パンと軽く手を叩いて己に従う臣下たちを褒めるエリック。



 そんな王の横顔を、真横から淡々とした面持ちでアーヴァンは見続けていた。


 


 ――――――――――――――まるで、過ちを犯した子どもを見るかのように。




 


 

 

 

 

 


 

 今回はここまでです。なんか短くてすみません。

 

 次回からは残りのヒロインを出す予定ですので、よろしくお願いします。


 来月にはアリッサのイラストも載せられたらいいなぁ、と思っていますので、そちらの方もよろしくお願いします。

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