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改行が少なく携帯では読みづらいのではないかと思っています。え?パソコンでも読みづらい?それは困った。
改行を多く入れてほしい方は感想と一緒に送ってくださると泣いて喜びます。
迷宮とはなんなのか?この議題は長い間冒険者や魔術師、はたまた施政者によって考えられてきたがその答えはあるとき一つの冒険者パーティーによってもたらされた。
なんとその冒険者達は迷宮の最下層に到達してしまったのだ。襲い掛かる魔物たちを蹴散らし、最下層と思われる所へと到達したとき、そこには今までに出会ったことも無いような強大な存在が居た。
それは神のごとく力を持って冒険者パーティーへと襲い掛かったがさすがはそこに到達することの出来る冒険者達である。長い長い死闘を制しついには強大な存在を打ち倒してしまった。
打ち倒された存在から更に強大な何かが出てくるのを冒険者達は感じたがそれまでの死闘で精も根も尽き果てていた為、静かにそれを見守っていると現れたのは神の如き力あるものであった。
その力あるものは自らを解き放ってくれたことに感謝するとともに冒険者達の傷を癒し、自らの名を告げると冒険者達を地上へと転送したのだ。
冒険者達は力あるものの祝福を受け戦乱の大陸で一つの国を作り上げる。その国の名はルウツウ聖王国。
初代国王は祝福を受けた冒険者達のリーダーであり国の名前は冒険者達のチームの名である。
話が逸れてしまったが迷宮というものは恐らく、力あるものを閉じ込める檻の様な物だと考えられている。
その溢れる力から魔物が生まれ、様々な祝福が為された武器や防具が出来るのではないかと考えられている。そしてその力の欠片が魔物を倒した際に残る魔石なのではないかと思われているのだ。
冒険者や力を求める者はこぞって迷宮へと行く。なにしろ最下層まで行けば国を作り上げるほどの力が手にはいるのだ。
それを夢見て迷宮に入り散っていく者の数は計り知れない。迷宮で死んだ者は迷宮に食われていく。それを繰り返すことで迷宮は更に深く、そして複雑に、魔物は強大になっていくのではないかとも言われているのだが真実は定かではない。
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ノルンは冒険者ギルドを出ると街の南の飲食街に向かった。そういえば朝から何も食べていないことに気がついたのだ。適当に屋台で肉串を買い、食べながら宿屋に向かう。
朝は気にせずに入ったが今現在ノルンが泊まっている宿の名前はバーバの宿屋。なんのひねりも何も無い、そのまんまの名前である。そういえばバーバっていう宿屋があるっていうのは聞いたことがあるな。その程度の認識である。
そのまま宿に入るとノルンはカウンターに行く。
「ただいまバーバ。鍵くれよ。」
カウンターに手を突きながら催促をするが150ぐらいのお子様がすることである。本当に手を置いただけになっている。カウンターの高さは100cmぐらいだろうか、普通の大人なら肘をついて大層格好がつきそうである。
「おうおかえり。ずいぶん小奇麗になったじゃねぇか。最初はスラムの餓鬼かと思ったぜ?」
そう言いながらノルンに鍵を渡す。
「まあ確かにな。ちょっくら稼いでくるから夜はうまいもん頼むぜ。」
鍵を受け取ってそのまま自分の部屋へと上がっていくノルンを見ながらバーバは思った。
「態度だけは一流の冒険者だな…。」
あまりの自然さに腹も立たない。そんな不思議な子供を見ながら夜はちーとばかし頑張って飯を作ってやるかとバーバは思っていた。
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宿屋を出たノルンはその足で東の城門へと向かう。ギルドカードを持つ冒険者は原則素通りなので通行税も要らない。簡単に門番にどこに行くのかという質問をされ、東の草原にホーンラビットを狩に行くと答えるとやめとけやめとけと囃し立てられたが軽く流して門をくぐる。
東の草原で魔物が出没するのはここから徒歩で行くと大体1時間ぐらいかかる場所である。何もない草原が延々と続くだけだがそこに道はない。
なぜなら草原の中央付近にはランクの高いアースドラゴンや集団で襲い掛かってくるシルバーウルフの群れ、更には血に飢えたオーガなど、草原は中にはいるほど危険なのである。王国から帝国に向かうには草原の中央を横断するのが一番早いが誰がそんな危険地帯に死ににいくだろうか。
帝国へは王国の南東から山脈沿いに草原を迂回していくのが常識である。しかしながら草原の外縁部にはそこまで強い魔物は居ない。せいぜいが縄張り争いに負けた魔物がうろついている程度である。
「お、居るじゃねぇか。」
草原を1時間ほど歩いたノルンは100m程先にいるホーンラビットを見つけた。未だこちらに気がついておらず目の前の草を食べている。
ノルンは身を屈めると背中に背負った両手剣を抜き放つ。刃渡り100cm以上あるその刀身は明らかにノルンの体のサイズにあっていない。しかし全く重そうにしていないどころか片手でそれを持ったまま身を屈めながらホーンラビットの死角になる方向から近づいていく。
そうして距離が20mを切った所でノルンは走り出した。それに気がついたホーンラビットは逃げようとするがもうすでに遅く、諦めたのかノルンを正面に捉えると自慢の角を向け起死回生のタイミングを見計らっている。
ノルンはホーンラビットが逃げないことを確認するとじりじりと近づいていく。ホーンラビットまで後1mという所でホーンラビットはこちらに向かって突っ込んできた。まさに弾丸といわんばかりのダッシュである。
一見弱そうに見えるこの魔物であるがランクの低い冒険者は大抵この突撃をかわしきれずに体のどこかに攻撃を食らい、もたもたしている間に逃げられるのだ。
ノルンは突っ込んでくることがわかっているかのように横へとステップをすると両手剣を振り上げ、ホーンラビットが通過するその瞬間に首を一撃で切り落とす。ホーンラビットは鳴き声を上げる暇もなく地面に叩きつけられた。
「こんなもんだな。この体は予想以上に性能がいいみたいでうれしいぜ。俺の全盛期よりも身体能力が高いんじゃねぇか…。」
そういいながらホーンラビットの胴体を拾い上げると周りの背の低い木に吊り下げる。血抜きをしているのだ。そうして懐から紙を取り出すと両手剣の刀身を拭き、鞘に収める。紙はもちろん捨てていく。
「さて、何匹かるかな。」
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日もだいぶ落ち、後1時間ぐらいで夜の帳が訪れようという頃、ノルンは帰り支度をしていた。
これまでに仕留めたホーンラビットは6匹。全て処理を終えて皮と角は回収済みである。6匹も狩ったというのに殆ど返り血を浴びていないのだが袖をまくった腕は血だらけである。ついでに皮の手袋も。
手に入れた戦利品を袋につめ背中に担ぐ。10kgは超える重量であるだろうにノルンに疲れの色はない。かなり上機嫌である。
「この体すげぇな。思い通りどころか更にそれを上回るぐらいに動くんだからちいせぇ事なんかもうどうでもいいわ。」
密かに身長が小さな事を不満に思っていたノルンだがそんなことはもう関係ないとばかりに上機嫌である。鼻歌でも歌いだしそうな雰囲気、というか実際に歌っている。
~♪~♪~~♪
以前の彼からすれば驚きである。常に力を求め、年老いて徐々に最盛期の体を失っていく恐怖に怯えていた彼からは想像もつかないほどである。
そうしてノルンは何事もなく東の城門への帰路に着いたのであった。
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城門にたどり着いたノルンを迎えたのは昼に居たときと同じ門番である。ノルンの姿を見て同僚と二人して何か騒いでいる。
「ほーらな?ちゃんと帰ってくるって言ったじゃないか。つうわけで俺の勝ちな。」
「いや待てって、まだ獲物を狩ってきたかどうかわかんねぇだろ?もしかしたら逃げ回ってただけかもしれねぇだろ。」
二人の話を聞く限りではノルンが無事にホーンラビットを狩ってこれるかどうかで賭けをしていたらしい。
「おつかれさん。確かノルンって言ったっけ?無事にホーンラビットは狩れたのか?」
賭けに負けそうな男はそうノルンに尋ねる。
「お勤めご苦労さん。ああ、今日は時間がなかったから6匹だけだけど狩ってきたぜ。」
言っている内容に見合わない綺麗な声である。
「マジかよ…。くっそー、って、6匹も狩るとか相当凄腕なんだな!ちょっと戦果を見せてもらってもいいか?別に取ったりはしねぇからさ。な、いいだろ?」
まだ諦めてないのかしつこい男である。機嫌がいいのか背中の袋を目の前に置くと袋の口を縛っている紐を解き中を見せる。
「マジかよ…。見直したぜ坊主。俺はいつも東門の衛兵をしてるジョガナって言うんだ。あー、ったくまたセレナスに負けたぜ。」
「ほんとに6匹も昼から行って狩ってきたんだ。すごいなお前。ジョガナが言ってたと思うが俺はセレナスだ。草原に行くなら俺達は大体ここに居るから頻繁に顔を合わせることになると思うぜ。よろしくな?」
そう言って二人と握手をする。賭け事はしてるが悪い奴らではなさそうである。
「二人ともよろしくな。俺はノルンだ。」
その後暫く喋っていたが他の通行者が現れたので3人は別れた。
「今日はお疲れさん。うまいもんでも食ってしっかり休めよっ?」
「こっちに来るならまたな。なんか差し入れに来てくれてもいいんだぜ?」
調子のいい二人である。
「明日もまた来ると思うがまたな。差し入れとか10年はえぇんだよお前ら!」
そういって3人は笑いながらそれぞれの道にいった。
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ジョガナとセレナスの二人と別れたノルンはそのまま冒険者ギルドに向かった。ギルドの扉を開けて中に入るとノルンと同じく狩りを終えたのか昼間よりも冒険者が多く居た。
カウンターへの順番待ちに並ぶと受付に居るエリスと目が合った。そしておもむろにカウンターから出てくるとノルンのほうへと小走りで近づいてくる。
「ノルン君無事だったんだね。よかったよ~。」
そのまま抱きついてきそうな雰囲気だったがノルンは自分が今血で汚れているのを自覚している為手で静止する。
「ただいま。依頼達成を頼みたいんだが…、人が多いからまってるわ。」
そう言ってもう一度列に戻ろうとしたのだが服を引っ張られてカウンターまで連行されていく。
「おいおい、流石にこれはまずくないか…?」
「いいよいいよ。私のカウンターってなぜかあんまり人が来ないから暇なんだよ?」
人が来ない原因は冒険者達が牽制しあって余程の勇者でない限りエリスのカウンターに近づけない為である。
「はぁ、分かった。これが依頼品のホーンラビットの皮と角だ。6匹分入ってるから確認してくれ。」
そう言ってノルンは袋をカウンターに乗せてある大き目のトレイに乗せる。それを受け取ったエリスはカウンターの後ろの職員に声をかけるとそれを引き渡した。
「依頼人に直接会うならここで待ってもらうことになるけど明日の朝でよければ手続きも全部終わって報酬だけ渡せるよ?どっちがいい?」
「俺はもう帰って飯が食いたい。明日の朝で頼む。袋も明日の朝に返してもらえればいいから今日はもう帰っていいのか?」
周りの視線が怖いノルンは一刻も早くここから立ち去りたくてしょうがない。
「うんそうだよ。今日は無事に帰ってきてくれて私もうれしいよ。また明日、かな?」
「ああ、頼んだ。」
そうぶっきらぼうに言うとそそくさと冒険者ギルドの建物を出て行った。
ノルンが出て行った後のギルドはざわざわしていた。
「おい、さっきのやつ誰だ?俺のエリスさんに馴れ馴れしくしやがって。」「っていうかいつもクールなエリスさんがものすごい可愛くなっているんだが。いや、いつも可愛いんだが今日のは違うというか…。」「さっきの奴見ない顔だな。このギルドの常識を叩き込んでやる必要があるみたいだな。」「やべぇ、えりすたんもえ。」
ざわざわ…
当のエリスはそんな囁き声は聞こえていないのかいつものクールなエリスに戻り淡々と仕事をこなしていた。先ほどのエリスを見ようと勇気を出してエリスのカウンターに行ったものはいつもの通り軽くあしらわれていたがギャップもえ!と心の中で叫んでいる。
そのギャップもえの彼が無事に家に帰れるかは定かではないが。
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幸運な事に夜道を襲われる事もなく無事にバーバの宿屋までたどり着いたノルンはバーバに鍵をもらうととりあえず部屋に荷物を置きに行った。荷物を置いたノルンはその足で一階に下りるとバーバに話しかけた。
「晩飯を頼むわ。ついでにエールを一杯頼む。」
そう言って食事カウンターに座ると銀貨2枚と銅貨2枚をカウンターの上に乗せる。
「おいおい坊主、エールを飲むにはちいとばかし早いんじゃないか?つうわけでこれは返すぞ。」
そういって銀貨を2枚だけ取ってカウンターの奥の厨房に居る料理人に声をかける。
「晩飯一人分頼むわー!」「へーい!」
厨房から元気のいい返事が聞こえるとバーバはノルンに向き合った。ノルンはかなり不機嫌である。
「そんな顔すんなって。もうちょっと大きくなったらエールぐらい浴びるほど飲ませてやるよ。」
がはははっと大きく笑いながら更にノルンに話しかけた。
「そういや今日はどんぐれぇ稼いだんだ?」
興味深そうに聞いてくるバーバ。ノルンは明らかに不機嫌な声で答えた。
「…、今日はホーンラビット6匹だけだよ。銀貨12枚って所だ。」
ノルンとて自分の見た目から酒が飲めないだろう事は理解している。しかしながら理解しているから不満がなくなるかといわれれば答えはノーである。
「すげぇじゃねぇか!一人でいったんだろ?そんだけ出来りゃ一端の冒険者だな。いいぜ、確かに一端の冒険者の夜はエールがなきゃはじまんねぇ!がはははっ!」
そういって樽の口をひねってエールをジョッキに注ぐとノルンの前に置いた。
「こいつはサービスだ。さっきは失礼な事を言って悪かったな。」
このおやじ、なかなか分かる奴じゃねぇか。
「そういうことなら遠慮なくもらうぜ?」
そういってノルンは一気にエールをあおる。
「っー、かーーーっ、やっぱ仕事帰りの酒はうめぇなぁ!」
そうだろうそうだろうとバーバは笑っている。2杯目のエールを飲んでいる所で料理人が晩飯を持ってきて更にエールも進む。そうして食って飲んだ後に自分の部屋に戻ってきたノルンは着ていた服を脱ぎ散らかし、パンツ一丁でベッドに潜り込んだ。
こんなに騒いだのはいつ振りか…。そんな事を思いながら直ぐに寝息を立てていた。
ジョガナは24歳の新米騎士見習いです。同じくセレナスも25歳の新米騎士見習いです。見習いというのは未だに騎士にランクアップを果たせていないということです。人間の職業にはランクアップがありノービスから戦士や魔術師、弓使い、僧侶など様々な職業に別れていきます。騎士は戦士からランクアップできる職業です。なのでまだまだ彼らには遠いのではないかと思います。
ノルンが立ち去った後の会話
「じゃあ次の休みはジョガナのおごりで色町な!」
「マジかよ! かーっ、こんな大きな賭けにすんじゃなかったぜ!」
ジョガナの口癖はマジかよです。
バーバのおやじさんマジいい男っす!つい背中を預けたくなりますね。バーバのおやじさんはスキンヘッドのラテン系の大男です。彫りの深い顔に顎まで伸びたモミアゲと口ひげが特徴的なムキムキマッチョです。意外と話の分かるいいおやじ。