18
オークが可哀相にも殲滅された後、オーガの皮も回収が終わったのか一行はまた先に進んでいた。
「もうすぐ丘が見えてくるぜ。気合入れろよ?あそこを越えたら魔物の質が一気に変わるからな。さっきまで相手にしてたオーガが可愛く見えてくるぜ。」
ノルンの言葉にベリベルとイルアリアハートは気を引き締める。ユラルルはどこまでいっても楽観的であるが。
草原の外周部の魔物の分布は、ホーンラビットを底辺にボアスネーク、シルバーウルフ、オーガなどである。たまに大森林や周り土地から流れてくる魔物もいるが概ねこういった感じである。
しかし、丘を越えるとそうではない。底辺に存在するのがマッドブルと呼ばれる巨大な牛の魔物である。巨大な群れで生活する彼らは気性が荒く何も考えない。唯一草を食べているときだけ大人しい。その体長は、普通のものは2m程であるが、草原の中央部を住処とするマッドブルは大きいもので4mを越える。その大きな体から繰り出される突進は恐ろしい威力を誇っている。しかもそれが群れで突っ込んでくるのだ。普通の冒険者では近づきたくも無いだろう。
その恐ろしい魔物であるマッドブルを底辺とする草原中央部の魔物の分布はもはや魔窟である。
年を重ね知恵を得たハイオーガや、この草原に君臨する絶対王者アースドラゴン。強力な神経毒で獲物を捕食するスコルピオンキングや、点在する巨大な知恵ある樹、トゥレントォ。上げればきりが無い。
そんなところに後一歩という所にさしかかってきていた。
そんな時、もはや索敵は任せろとでも言いたげにユラルルが声を上げる。
「あ、あそこに何かいるよー?」
その指を差す先には一頭のマッドブルがいた。
それを見たノルンは呟くように言った。
「おい、逃げるぞ。ありゃマッドブルだ、一匹見たら後100匹いると思わなきゃならねぇ。」
そういって身を低くして踵を返そうとしたとき、2kmは離れた所にいたマッドブルがこちらに気がついたのか、草を食べるのをやめ、その首を向ける。
そして雄たけびを上げた。
「ブモオオオオオオオオオォォォォ!!」
それが合図になったのか、マッドブルの方向から地響きが聞こえる。
「やべぇやべぇやべぇ!この距離じゃ逃げらんねぇ。ベリベルがんな目立つ格好してっから見つかんだよ!」
大層な言い草ではあるがまさしくその通りなのである。マッドブルの目に色彩などというものは無い。よって色の濃いものに反応するのだ。その点では漆黒の鎧を身に纏ったベリベルはいい標的である。
「ええ!?おでのせいっすか!?」
などと言っている間にマッドブルが突っ込んでくるのが見える。丘の後ろに隠れていたのか、その数はまさに無数としか表現できない。それが波のようにノルン達に向かって突っ込んでくる。
まるで黒い津波である。
「おいおめぇら!ベリベルの後ろに隠れろ!ベリベルは死ぬ気で踏ん張れ!一応シールドはかけてやるよ!」
一斉に指示通りに動く。
その間にも黒い津波は最初にいたマッドブルを避けるように突き進んでくる。
【契約魔術:ネビィガノルン】
ノルンはその間に自分達に突っ込んでくる先頭集団に向かってランスを投げつけた。
先頭の数匹のマッドブルがランスに貫かれその場に沈む。しかしその亡骸を悼む事無く後続のマッドブルに踏みつけられていく。
「無理無理!ベリベル、もしもの時は頼むぜ!」
そう言うとベリベルの真後ろに引っ込んだ。そしていつでも魔術を発動できるように集中していく。
段々と加速していくマッドブルの集団がノルン達に、主に盾にされたベリベルにぶつかる瞬間にノルンの魔術が発動する。
ベリベルの前面に楕円形の闇色の塊が張られる。
しかし、それがどうしたといわんばかりに無慈悲にもマッドブルは止まらない。
一瞬の後、両者は激突した。
空間に固定された壁にぶつかり、全ての衝撃を返されたマッドブルが弾き飛ばされていく。
しかしそんなことをマッドブルは気にしない。次から次へと突進してはそのたびに弾き飛ばされていく。
その均衡も長くは続かない。
「やべ、崩れる。」
その言葉と共にベリベルの前に展開されたシールドがガラスが割れるように砕け散る。後はマッドブルに蹂躙されるだけかと思われた。
ベリベルは目の前のシールドが砕け散るのを見ながらウイッデンの言葉を思い出していた。
『おめぇは丸くなってりゃいいんだよ!』
それは自信の身を守る為に言ったのか、それともこういう事態を想定していったのか。それはベリベルには判らない。しかしその瞬間、ベリベルの目に生まれてから一度もともった事のないような闘志が燃え上がる。
(ここで、おでが、逃げるわけには、いきやせん!)
ベリベルだけであれば丸くなってさえいればボールのように弾き飛ばされはするが大事にはならないだろう。しかしベリベルの後ろにいる者達は生きて帰ってはこれない。
ベリベルは重心を前に傾けると片足を前に出し踏ん張る。そしてショルダーシールドを前面に押し出すような姿勢をとった。職人達に教えられた姿勢である。
そして黒い波がベリベルを襲う。
マッドブルがベリベルに当たった瞬間、ベリベルの鎧が'ガチン'という音を立てて鎧の隙間が全て繋がり、まるで一枚の鉄塊のようになる。マッドブルがぶつかった瞬間、肩についているショルダーシールドの刻印が仄かに光る。それにぶつかったマッドブルがまたしても弾き飛んでいった。
このギミックは天才職人ウイッデンの渾身のものである。鎧の各部の連結を全て理解して、ある特定の姿勢をとると全てが繋がるようにしたのだ。元々の鎧の強度もさることながら、全ての衝撃を地面に逃がすというこのギミックの発想こそがウイッデンを天才職人たらしめているのである。
衝撃で地面に打ち付けられるようにベリベルの体が沈んでいくが、そこに危険などは無い。あるのは頼りがいのある安心感だけである。
そうして耐えている間にノルンがシールドを張りなおした。
ノルン達はマッドブルの突進を何とかかわしたのである。
丘の上に居たマッドブルは最初の位置から動いていない。良く見るとその姿は普通のマッドブルよりも大きく、そして額から伸びた角も捻り曲がり、一目で只のマッドブルではないとわかる。
そのマッドブルが更に雄たけびを上げた。
「ブモオオオオオオオオオオォォ!!」
それを聞いた黒い津波は円を描くように反転すると、そのまま最初から動かないマッドブルの後ろに抜けていった。その後を優雅にマッドブルの群れの主は追いかけていく。
後に残ったのは、弾き飛ばされ、そして踏み砕かれたマッドブルの瀕死の姿だけであった。
「あー、死んだかと思ったぜ。」
ノルンがそうぼやく。
「うんうん。アレは怖いね、夢に出てきちゃいそう。」
二人して笑い合っている。
「お、おでももう駄目かと思いやしたよ……。」
そう言いながら埋まった足を引き抜くベリベル。イルアリアハートは恐怖からかぐったりしていた。
「ま、過ぎたことはもういいだろ。手分けして止めと剥ぎ取り済ませちまおうぜ。」
そうなのである。ノルン達の周りには未だ呻き声を上げ横たわる瀕死のマッドブルが大量にいた。
ノルンの言葉にベリベルが嬉しそうな声を上げる。
「マッドブルの皮なんて久しぶりでさぁ。こいつはなかなか手に入りやせんからね。」
物凄く嬉しそうである。先ほどのことなどもう頭の中から抜け落ちているようだ。
マッドブルの皮は手触りが良く、見た目がいい。強度もそこそこあり何よりオーガみたいに分厚くない。その為上流階級の服などの素材として恐ろしく高価である。たまに装備品の裏地に使われるが、そんなもったいない事をするのは見た目優先の貴族や騎士団のお偉いさんぐらいである。
手に入りにくさも折り紙つきであるが。
その高級素材が目の前に大量にあることに狂気しているベリベルは手近なマッドブルの解体を鼻歌交じりで開始した。
「ユラルルも手伝ってやれ。イルは周りの警戒だな。俺は止めを刺してこっちに集めとくわ。」
そう言って指示を出すと、ノルンはマッドブルの頭に両手剣を突き刺しに行った。
「ベリベルさん、体は大丈夫ですか?」
イルアリアハートがそう尋ねた。
今は何事もなく、嬉々として剥ぎ取りをしているが先ほどの光景を見たのである。心配しない方がおかしい。
「へ?大丈夫っすよ。昔から頑丈なだけが取り柄ですんで。」
そういって笑いかける。今はフルフェイスのバイザーを上に上げて、目元までは顔が露出している。つぶらな瞳が可愛い、かもしれない。
「そうはいっても心配です。そのまま剥ぎ取りを続けていて構いませんのでその場からはあまり動かないでくださいね。」
そのままイルアリアハートはベリベルに向かって手をかざす。
【神聖魔術:癒し】
ベリベルの体が暖かい光に包まれ癒されていく。それを感じながらベリベルは驚いたように言う。
「うあっ!なんですかい、これ。」
手元が狂ったのか皮を大きく切り裂く。
「ああああ!もったいない。親方すいやせんすいやせん。」
ここにはいないウイッデンにぺこぺこ頭を下げるベリベル。
「あ、ベリベルさんここはどうすればいい?大きく切っちゃっていいのかな?」
「へ?ああああ、だめでさぁ!側面の皮が一番たかいんでさぁ、うまい具合に腹から掻っ捌くんです。ここからナイフを入れてこっちと繋げるんでさ。」
そういって実演してみせる。
「ふんふん。判ったよ~。あとはお任せだよ!」
それを頼りなさげに見つめるベリベル。諦めたのかどうやら速度を上げてなるべく自分で剥ぎ取ろうとするようである。
「……、驚かしてしまいすいません。ですがもう暫くこのまま治療しますね。」
ベリベルは興奮から気がついていないが、間接や骨などに多大な負荷がかかっているのである。ほおって置けば暫くベッドから動けないかもしれない。
「ありがてぇっす。さっきのはおでのミスなんで気にしないでくだせぇ。」
そういってやはり嬉しそうに剥ぎ取っていく。
全ての剥ぎ取りを終えたのは3時間ほど経ってからだった。
今はテンザスの街に帰っている。
丘までの道のりが長いのもあるが荷物が一杯なのである。ベリベルの背嚢はパンパンに膨らんでいる。ノルンでさえも袋を背中に担いでいた。
「今日は大活躍だったなベリベル。」
笑いながらそうノルンは言った。
「思い出させねぇでくだせぇ。今考えただけでも恐ろしいっす。」
巨体を震わせるようにちじこまる。それを見てユラルルも笑いかけた。
「え~。後ろで見てたけど物凄くベリベルさんかっこよかったよ?なんて言うかもう鉄壁?とにかく凄く頼もしかったんだから!」
言われたベリベルは照れている。
「いやぁ、あんま褒めねぇでくだせぇ。慣れてないんすよ。」
「いいじゃねぇか、俺らみんな感謝してんだぜ?俺のおかげなんだぐらい言っても誰も怒りゃしねぇよ。なぁイル?」
とぼとぼと一緒に歩いていたイルアリアハートにノルンは声をかけた。
「はい。ベリベルさんはもっと自信を持ってください。みんなに頼りにされて羨ましいです。」
それは拗ねるように言った言葉だが、イルアリアハートの内心をそのまま反映していた。
「おめぇもそんな顔すんなって。ベリベルの事治療してやったんだろ?いいじゃねぇか、役割分担だよ。」
いつに無く饒舌に話すノルン。それぞれがそれぞれに頼もしい仲間であると思ったのだ、機嫌がよくもなる。
「ああそうだ、おめぇ今晩暇か?うちの宿に来いよ。酒でも一緒に飲もうぜ。」
嬉しそうに誘う。ノルンの中で着実に仲間意識が作られていた。
「へ?いいんですかい。それじゃあ親方に話してみまさぁ。」
ベリベルはどんどんと深みにはまっていく。冒険者への道はどうやら避けれない運命へと変わりつつあるようだった。
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街に帰ってきた頃には日が沈みかけていた。東の城門を抜け、いつものようにウイッデンの所へ行く。ユラルルとイルアリアハートは先に宿へと帰していた。東地区にあるバーバの宿屋から西地区にあるウイッデンの防具加工店は東の城門から入ると遠い為である。
もちろんノルンは先に風呂にでも入ってろ、と言ったがそれが聞き届けられるかは謎である。
ノルンとベリベルがウイッデン防具加工店に入るとそこにはウイッデン自ら店番をしていた。
「おうウイッデン、今日も大量だぜ?」
そう言って袋を地面に置いた。
「ノルンじゃねぇか。今日は大分遅かったが、もしかして結構奥まで行ったのか?」
そう言ってノルンの後ろにいるベリベルを心配そうに見た。
「ああ、今日は丘の一歩手前まで行ってきた。酷い目にあったが獲物は大量だぞ?」
ほうほう、と言いながらウイッデンは袋を開ける。
「おめぇ、もう何とってきても驚かねぇと思ってたがこいつまで獲ってくるとはな。無事だったのか?」
心配するのも頷ける。あの、マッドブルである。メンバーの一人や二人帰ってこれなくてもおかしくはない。
「いやな?ベリベルが予想以上にやってくれてよ、こっちは無傷だよ。」
な?ベリベル、と話を振られたベリベルは少し照れながら、へ、へぇ。と曖昧に答えた。
「ほぉ~、あの気弱なベリベルがなぁ。役に立ってんならなんもいわねぇよ。無事に帰ってきてくれりゃ何の問題もねぇ。まあ立ち話もなんだ、奥に来いよ。おい!誰か代わりの店番しろ!」
そう声をかけて奥に連れて行く。
奥に行った二人から渡された獲物を全て出して確認する。
「おいおい、マッドブルの皮が大体……、17匹分か。傷もあんまねぇしこりゃ、すげぇわ。それとこっちはオーガにボアスネークか。いいねぇ、考えただけでやる気が出てくらぁ。」
帰る途中に遭遇した哀れなボアスネークも含まれていた。
「おいてめぇら!すぐに処理にかかれ!いいか、マッドブルの皮は丁寧に扱えよ!」
ウイッデンがそう言うと周りの職人が威勢の良い返事をし、すぐに素材を持って行った。
相変わらずここのやつらは良く訓練されてるなぁ、とノルンは思っている。
「報酬はどうする?かなり値が張るが正直すぐに払えるだけの金はうちにはねぇぞ。」
当たり前である。なめした皮をそのまま売るだけでも凄いお金になる。ウイッデンは値段を付けかねていた。
「ああ、別に今すぐどうのってのはいい。ウイッデンの思う値段分あとでギルドに振り込んどいてくれ。ってイルに言われてな。」
「なんだ?えらい信用のされ方じゃねぇか。それでいいならこっちもありがてぇ。んで、そのイルってのはなんだ?」
突然名前が上がった人物に疑問を持ったウイッデンが尋ねる。
「ああ、そういや紹介してなかったな。うちのメンバーだよ。そのうち一緒に来るからそのときは頼むわ。」
「なんだ、てっきりどっかの貴族にでも捕まったのかと思ったぜ。今度連れて来い。採寸もしなきゃならねぇだろうしな。」
そこで思い出したのか、ウイッデンが急にニヤリ顔になる。
「そうだそうだ、おめぇに渡すもんがあんだよ。おいべリベル、この間作ったアレもってこい。」
部屋の隅で、鎧を苦労して脱いでいるベリベルにウイッデンがそう指示を出す。
「へ?へい!」
脱いでいる途中だったのか、レガースを履いたまま慌てて奥に走っていった。
「前、おめぇが装備作ってくれって言ってただろ?それができたんだよ。」
物凄く嬉しそうである。やはり職人の作品自慢は喋りだすと止まらない。
「何を作ろうか迷ったんだがな、おめえの戦闘スタイルじゃあんま嵩張るもんは邪魔にしかならねぇと思って作ったんだよ。」
そこへベリベルが走りこんできた。
「親方、持ってきやしたぜ!」
息も絶え絶えである。流石は下っ端、見事な動き。
「見ろ!靴だぞ!」
そういって差し出したウイッデンの手には一足の靴。靴底やつま先には何の金属か分からないもので補強されており、靴全体はどうやら皮でできているようだ。
「見ろよこの表面の美しい色合い。ミスリル銀の糸で編んだ特別製の繊維なんだぜ?色を赤黒くすんのに時間がかかっちまった。んでその中はオーガの皮を強度を保ったまま薄くしたもんと軟金属のネメラルの合板で作ってあんだぜ?裏地には天蚕の糸で編んだ生地を使ってるし、履き心地もいいと思うぜ。先端と踵、それと靴裏は黒鋼とミスリルの合金で補強した。サイズもおめぇにあわして作ったから多分合うと思うぜ?」
そう喋りきると押し付けるようにノルンに渡す。その目はとりあえず黙って履きやがれ、といっているようだ。
(親方……、幾らなんでもネメラルは使いすぎですぜ……。同じ重さで金より高いんじゃなかったですかい……。)
ウイッデンにそんなことを求めてもしょうがない。ちなみにネメラルは、重いが伸縮性があり千切れにくいという性質を持つ金属である。
ノルンはウイッデンからの期待に満ちた目に急かされるように靴を履き替える。
「んで、どうなんだ?どっか違和感があったら何でもいいから言ってくれ。」
なにか悪戯でもしているかのような顔である。
「あ?なんだこれ。軽いっつうか殆ど重さがねぇぞ。」
その言葉を聞いたウイッデンはニヤリとする。
「それがその靴の一番の売りなんだよ。ネメラルは重いからなぁ、それにちいとばかし頑張って重量軽減の刻印を4重で張ってやったんだよ。それに刺繍で使った糸は秘蔵のピーコックの羽を織り込んだもんだ。それ自体に重量軽減の効果があるしな。」
それがどれだけ非常識かベリベルの驚きの顔が物語っている。
(最近工房でずっと何か作ってたのはそれっすか……。ピーコックの羽なんて触らせてすらもらえない素材じゃないですかい。)
ピーコックとは王国の南のザグラ山脈に生息する竜である。鮮やかな色彩の羽を持つ綺麗な竜である。その羽は、軽いと言うよりも重さがない。もっと言えば空気よりも軽いのである。その為素材としては扱いにくく、ピーコック自体がとても危険な魔物である為、市場には全く出回らない。ピーコックの住処の洞窟に運よく侵入し、洞窟の上に溜まっている羽を取ってくるのが限界である。
「んで、どうだ?擦れたり履きにくいとか重心がおかしいとかあるか?」
「いや、別にねぇよ。履き心地も問題ねぇ。なんか軽すぎて違和感があるがすぐに慣れんだろ。」
その場で腿を上げたりしゃがんだりしていたノルンはそう答えた。
「そうかそうか、いやー作ったはいいが普通の奴には使いこなせそうにもねぇからよ。心配してたんだよ。」
そう言ってくっくっく、と笑う。
「おう、ありがとよ。そんでどれぐらい払えばいんだ?前の奴だけで足りるとは到底思えねぇんだが。」
ベリベルの顔がウイッデンの説明が進むにつれてどんどん呆然としていくのを見ていたノルンはそう切り出した。
「おお?そうだな、今回のマッドブルの分からも少し引いとくからそれでいいか?」
なんとも適当な会話である。
「それでいいなら頼む。ん~、なかなかいい感じじゃねぇかこれ。」
そういいながらその場で宙返りをする。もちろん体を丸めたりはしない。
それを見ながらウイッデンは子供のようにはしゃいでいた。
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長いので分割しました。




