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第1話 私が就活!?ありえな〜い!!

はじめて小説らしきものを書いています。

面白いかどうかは分かりませんが、しばらくこのテーマで文章を書く練習をしようと思ってます。

コメントや評価を頂けるとありがたいです。


あと、好きな魔法少女を教えて頂けると助かります。

「お、お姉ちゃんね……実は魔法少女なの……」

 仁科明美は、妹の雅にそれを打ち明けた。

 中学生の雅は午後から部活があったが、珍しく明美から話があると言われて、喫茶店に付き合っていた。

「…………少女……?」

「そこには触れないで……」

 明美は10歳年の離れた姉で、今は24歳だが、あと数ヶ月で誕生日を迎えて25歳になる。

 晴れてアラサーの仲間入りだ。

「いや、リアクションもっと色々あるでしょ?お姉ちゃんが、24歳にもなってニート生活をしてた理由とか!今まで彼氏が1人も出来たことなくて、処女なこととか!!今の発言ですべて納得がいったでしょ!?ビビビビーーーッて、きたでしょ?!きたよねぇ?!」

 雅はコップの水を一口飲んで、喫茶店の窓の外を見た。

「………………処女…………なんだ」

 雅の目からどんどん光が失われていく。

 口元だけ、気を遣ってくれているのか、半笑いだ。

「………………忘れて」

 カランコロンと、入口のドアについたベルが鳴った。常連の老夫婦が入って来たらしい。

 明美はそれを横目で見て、声をひそめた。

「お姉ちゃんはね。最強の魔法少女なの」

「最年長魔法少女……フッ……」

「最強!!ほかの子は1日で1体とか、そこらしか敵を倒せないけど!お姉ちゃんは本気出せば1日100体くらい余裕なんだから!」

「ふぅん……すごいね……」

 窓の外の景色を見続けて、目を合わせてくれない雅に、明美は段々いらいらしてきた。いい加減こっち見ろ。

「お給料でるの?魔法少女……」

「うぐっ…………!!」

 やっぱり雅は、姉がニートだったことをよく思っていなかったらしい。

「あっ、外見て!ポメラニアンだ。ふふん、かわいい」

 もう完全に興味を無くしたのか、雅は窓の外でお散歩中のポメラニアンに夢中だ。

「聞いて、ミヤビ。お姉ちゃんは、今年で魔法少女をやめる。この戦いに、今年で終止符を打つの!!」

 明美が真剣に話しているのが分かったのか、やっと雅がこっちを見た。

「ここからが本題なんだけど、ミヤビは今年14歳でしょ?ちょうど私が魔法少女になったのと同じ歳。今、魔法少女は超超超〜人手不足で、少しでも魔法少女を増やさなければならないの!」

 さっきから何を言ってるんだと、雅は露骨に嫌そうな顔をした。

「もう、なりふり構っては居られない。これだけはずっと言おうか、言うまいか、迷っていたんだけど……」

 大きく息を吸って、吐いた。

 自分の気持ちが伝わるように、しっかりと雅を見つめる。

「ミヤビ。私と契約して、魔法少女になってよ」

「嫌です」

 すぐ返事するじゃん。

 

「とりあえず、なんか頼もっか!今日はお姉ちゃんの奢りだぞ!ニートが奢っちゃうんだぞ〜!!」

 自分のニートという言葉に心が締め付けられたが、私の決意をみせてやる。と明美は財布を握りしめた。

「奢りって、自分で稼いだお金じゃないでしょ?」と雅。

「あっ、プリンあるよ!ミヤビ、プリン好きだよね!プリンにしよっか!!」

 隣にプリンアラモード1200円と書いてあるのを隠すようにプリン600円を指さす。コンビニで買ったら200円だぞ!ぼったくりだろ!

「24にもなって、お小遣いもらってるの、恥ずかしくないの?バイトでもしなよ。ニートよりはマシだよ」

「まぁ、私も魔法少女忙しくなるまでは、普通にバイトしてたんだけどね〜。あっ!ほら、ポメラニアン2匹目だ!2匹目だよぉ〜っ」

 明美は話を逸らそうとした。

「さっきから言ってる魔法少女って、日曜の朝にやってるアニメのやつでしょ?よくわかんないけど、それのゲームの話とかなの?一緒にやってってこと??」

「違うよ、ちゃんと現実の話!私が魔法少女で、闇の力を持った怪物と毎日のように戦ってるの!」

「…………そのネタ、スベってるよ?」

「もう!冗談で言ってるんじゃないの!!」

 話が全然噛み合わない。

 明美がうんざりという顔をするので、雅も気の毒になってしまった。

「じゃあ……。その、魔法少女がほんとだったとして」

 雅はアケミをまっすぐ見つめる。

 「それはアケミがニートやってまでやる価値があるものなの?24歳のおばさんになってまで続ける必要あるの?」

「いや、おばさんじゃないでしょ!ピチピチよ!ピチピチ!!世の中の24歳以上全員敵にまわしたよ、あんた!私まだアラサーですらないんだから!!」

 あら、喧嘩かしらとコーヒーを飲んでいた老夫婦のひそひそ話が聞こえた気がした。

「魔法少女としてはおばさんでしょ?」

 じっとりと雅が見つめてくる。

「あっ、ポメラニアン行っちゃった〜。かわいかったね!ポメラニアン飼いたいなぁ〜」

 だんだん『おばさん』と言う単語が心に響くようになってきたので、アケミは鍛え上げた精神力で平静を保った。


 話を逸らされてしまったので、仕方なく雅はメニューを手に取った。

「なんか頼もっか。私、ブレンドコーヒー」

「…………じゃあ、私はプリンにしよ」

 雅、コーヒー飲めるようになったんだ。もう子どもじゃないのか。明美はコーヒーが飲めなかった。

「すみませ〜ん!注文いいですか〜?コーヒーとプリンで!」

 雅が奥のマスターに注文をした。

 妹はちょっと前までは小学生だったのに、気がついたら大人になっていっている。

 

 しばらく、沈黙が続いた。

 やっぱり魔法少女の事なんて、話すだけじゃ信じてくれないよな。悶々とする明美を見て、雅が話を切り出した。

「私、高校から家出ようと思ってるんだ」

「へ??」

 明美は間抜けな声を出してしまった。いや、この会は、私がカミングアウトする会だったでしょ?

「親父とお母さんには、もう話してる。すごく迷惑かけたし、少しでも早く自立して、安心させたいって思って」

 そんなこと、はじめて聞いた。

 もしかして、私がニートだからそんな事を考えたんだろうか。

 罪悪感がぞわぞわ背筋を伝う。

「ミヤビの気持ちも分かるけど、お父さんもお母さんも、もっとミヤビと一緒に過ごしたいと思うよ?それに、高校から一人暮らしは無理じゃない?お金だってかかるし…。」

「私、今年バトミントンで全国行ったから、特待生として高校からスカウト来てるの。学費も全額免除なんだって。全寮制だから、住むところも困らない」

 流石……私の妹……。

 雅が部活を頑張ってるというのは、お母さんから聞いていたけれど、ここまでだったとは。

 妹は、もう自分とは違う世界で生きている。

「じゃあもう進路決まってるんだし、魔法少女もやれるね!完璧じゃ〜ん!」

「だから、特待生として真面目に部活もやらなきゃならないし、忙しいってこと!!そんな魔法少女とか、お遊びしてる暇、私にないの!!」

 それまでヘラヘラしていた明美だったが、急に真剣な顔になった。

「遊びじゃないよ」

 そう言う明美はさっきまでとは別人のようだった。

 雅は、まるでこっちが本物の明美で、さっきまでが中学生の雅に合わせて取り繕っていた姿のように思えた。

「みんな魔法少女は、本気で戦ってる。だから私も、この戦いから逃げる訳にはいかないの」

 

 頼んだ注文がやってきた。明美の前にコーヒー、雅の前にプリンが置かれた。

 明美が気にしない様子なので、仕方なく雅はコーヒーとプリンの位置を無言で入れ替えた。

「ミヤビの状況も分かるけど、今年だけでいい。今年だけ、私に力を貸して欲しい。来年になったら、ミヤビも魔法少女はやめていいから。お願い」

「………………じゃあ、一応聞くけど、妄想でした。とかじゃないよね」

 明美は精神的に参ってる様には見えないし、時々いきなり家を出て、よく分からない時間に帰って来たりしていることは、雅も知っていた。

 悪い男に引っかかってたりするのかと思っていたが、あれが全部、明美の言う魔法少女をするためにやっていた事だったとしたら。

 ただのニートか、最強の魔法少女でニートか。どっちも最悪だけど、どちらかというと後者の方が、ニートの理由がある分マシな気がしてきた。

「ミヤビ、私が嘘ついたこと、ある?」

 明美が嘘をつく時は、顔を見れば分かる。

 なんなんだよ、さっきから!普段はふにゃふにゃしてるくせに。

 魔法少女とか、信じられる年齢じゃないっつーの!!いいから、はやくいつもの明美に戻れよ!!

 雅はテーブルの下で、ギュッと自分の手を握った。

「例えば、大学のレポートをやるためとか言って買ってもらったパソコンで、主になんかエロいBL読んでることとか…」

 明美の脳髄に電撃が走った。

「パソコンは大学で買わされるやつだから!!嘘ついて買ってもらったんじゃないです!!あとなんで私のパソコンの中見てるの!!」

 雅は安心した。こっちが本物の明美だ。

「もう……こういうところで、BLとかの話しないでよ……。恥ずかしいから……」

 顔を赤らめた明美がヒソヒソ話しかけてくる。しょうがない、この惨めな女に付き合ってやるか。

 

 少し考えて、雅は言う。

「魔法少女、付き合ってあげてもいいよ」

「ホント!?」思わず大声を出してしまった。

「やったーーーーッ!!やっぱりミヤビ、分かってるなぁ〜〜!!流石、私の妹!!ミヤビならそう言ってくれると、思ってたんだ!!」

「でも条件つけていい?」

「へ……?条件……?」

 なんだ?なにやら不的な笑みを浮かべている。

 明美は何か嫌な予感がした。

「そう。私がアケミのお願い聞くんだから、アケミも、私のお願い聞いてくれないと、おかしいでしょ?」

 明美は唾を飲んだ。

「私が魔法少女になるから、アケミも就活をして」

 言葉の意味を理解するのに、少し時間がかかった。

「しゅう……かつ……?」

「そう、普通の社会人になって」

 雅は『言ってやった』という顔をしている。

「しゃかい……じん……??」

 社会人……って、あのサラリーマンとかOLとかそういうやつか!!

「だはは!私が?社会人??いや、話聞いてた?私、魔法少女で忙しいから!」

「就活しないなら、私もやらないから」

「む……」

 明美は黙ってしまった。やられた。完全に主導権を握られている。

「アケミと同じで、私も忙しいの」

 雅からの、ダメ押しの一言。

「いや、ちゃんと考えてるよ!?自分の将来のことも。だから、今年は魔法少女に専念を……」

 明美は大学生の頃に、就職活動をした事がある。

 でも、何社受けても内定は貰えなかった。

 明美には、魔法少女しかなかったので、自己アピールもまともに出来なかった。

 突然敵が現れたせいで、最終面接に行けなかった会社だってあった。

 同じ事を繰り返すのか……。

 それに大学生だった自分と、今のニートの自分では、社会からの見られ方が違う。


「逃げるの?」

 雅の言葉に、はっと目が覚めた気がした。

 『最強の魔法少女ってのは、何だか分かる?』

 昔、明美が魔法少女を始めた頃に、先輩の魔法少女から言われた言葉を思い出した。


 『絶対に負けを認めない魔法少女、普通なら諦めてしまうような状況でも、最後まで勝つ方法を考えて、闘い続けられる魔法少女が、最強の魔法少女なの』


 そうか。そうだったんだ。

「……………………わ…………」

「わ?」

 小首を傾げる雅。

 社会人になれるかどうかは分からなかった。

 ただ、自分が人間社会で『負け』を認めてしまっていたような気がした。

 それじゃあ駄目だ。最強の魔法少女は、魔法少女を理由に、社会から逃げたりしない。

 そんなんじゃ、『あれ』には勝てない!

「分かり…………ました…………」

 明美の手に、汗が滲む。

「しゅうかつ……します……」

 どんよりとした空気を放つ明美。

「じゃあ、決まりだね!!」

 雅は、今日1番の笑顔を明美に見せた。


「ふぇえ……。働きたくないよぉ……」

 自然と涙が溢れてきた。

 

 明美の頭の中で、ナレーションが流れる。

『魔法少女アケミ 地獄の就職活動編 始動』


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