影の管理者? お仕事大好きジェシカの恋愛事情
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「ジェシカ!この回復薬は、どこに出す分だっけ?」
「ジェシカさん、このカルテは、どちらに運びましょう?」
「回復薬は第二騎士団へ送って、カルテは、第一診察室に届けて、そろそろ皆戻るころね。準備しましょう」
私の暮らす、カイライン王国の貴族は、多かれ少なかれみんな魔力を持っている。
魔力には、いろいろな特性があり、その中で私は治癒力を得意とする。
治癒力と言っても、聖女様の様に、何でもかんでも治せるわけでは無いし、傷を治すなら、ちゃんと傷の汚れを洗浄し、消毒をする必要がある。
ただ治癒力の力を持つ者は多くないので、貴族女性でも、こうして働きに出ることが求められる。
仕事をしていると貴族令嬢としては、婚期が少し遅れるが、治癒力やちゃんと仕事ができることが、評価され婚姻先としての人気は高い。
私…………以外は。
一緒に働く多くの令嬢たちは、釣り書がたくさん届くらしい、婚約者が決っている人もいる。
血を見るのや仕事に出るのが嫌で、治癒力を隠している人もいるが、お茶会してるより、よっぽど楽しいのにね。
まあ私には、釣り書も来ないけど、この仕事があるからお金には困らないし、良しとする。
仕事はやりがいもあるし、結婚しなくても生きていける。
「アマンダ様、そろそろみなさんお戻りになります。お出迎えお願いします」
アマンダ・ハーリー侯爵令嬢は、治癒力を持つ貴族の中で、一番の高位貴族、侯爵令嬢でありながらちゃんと、役割を果たされている立派な方だ。
治癒師の仕事場は、怪我をすることが多い、騎士団の施設に隣接しているが、怪我だけでなく、病気の治療も行う他ため、施設に宿泊して治療を行えるような施設もあり、かなり広い。
もちろん薬師や、患者のケアをする人、掃除や洗濯をしてくれる人など様々な人が働いている。
みんなで協力して、怪我や病気の治療にあたる。
例えば、薬師さんの調合した煎じ薬に、私達が回復力を強くする魔法を付与したり。
しかしこの魔法の効果は、使う人との相性で効果がだいぶ違って来る。
この人とは気が合うから一緒に居いて楽しい♪とかなんだかこの人とは意見が合わないな~みたいな感じと一緒だ。
準備を整えていると、玄関から声がかかる。
「遠征から第一騎士団お戻りになりました~」掛け声とともに扉も開く。
「みなさんお疲れ様です。大きなけがをされた方はいませんか?」
アマンダ様が、騎士の皆さんを優しく出迎え、重症度によって治療先を振り分けてくれる。
「すみません。こいつかなり傷が深くて」
「あら大変。少し見せて」
仲間の騎士に支えられて、腕から血を流した騎士が運びこまれる。
「ああ。かなり深いわね。デイジー様、お願いできますか?」
「はい。こちらにお願いします」
ピンクブロンドのストレートヘアをポニーテールにした、デイジーが手を上げる。
彼女は、傷の治癒力効果が高い、私の自慢の親友だ。
「傷が深いようなので、処置にライアンとジェームスも手を貸してあげてください」
私は、男性の治癒師に声をかけ、デイジーの補佐をお願いする。
今日は、怪我をした数名が手当てを受けに来たが、受傷の方は1名だけのようだ。
「アマンダ様、今日も的確な判断を、ありがとうございました」
「ジェシカご苦労様。あなたが治癒師の得意な分野を、まとめてくれているおかげよ」
アマンダ様が指揮を執ることで、初動の対応はスムーズに進む。
状況を判断するのも抜群に早い、そしてアマンダ様はいつも優しい。
✿ ✿ ✿
ひと段落ついたところで、私はカルテの記載と、今日使用した器材や消毒薬などの、確認と補充のための発注書の作成をしていた。
ふと、後ろに気配を感じ振り返ると、視界いっぱいに騎士団の制服が現れる。
んー。
一呼吸おいて、見上げると、金色の瞳と目が合った。
「グロブナー騎士団長様、今日はどうされたのですか?」
「今日貰った、打身に使用する貼り薬は、ジェシカが付与したものではなかったので、付与しなおしてもらいに来た」
「私のものでなくても、効果はありますよ」
「いや。お前の付与が一番効く」
第一騎士団長である、ルイズ・グロブナー公爵令息様は、なんやかやと私に付与をしてもらうために、二日と開けず私の元を訪ねてくる。
世の令嬢たちには、無口でクールで美丈夫なため大人気、アマンダ様と婚約するのではないかと、噂されている。
どこがクールなのかしら?
私から見たら、手のかかる大きなわんこにしか見えない。
…………そのうえ良く話す。
話が盛り上がると、気が付けば2、3時間も、話し込んでいることもある。
「もう。付与はして差し上げますが、私の真後ろに、声もかけずに立つのは禁止です!」
「熱心に仕事していたから、声を掛けにくかった」
「ああ。もうこんな時間なんですね」
外を見ると、すっかり夕日が沈み、空の色が濃くなり始めている。
「早く帰らないと、夕飯を準備するシェフが困りますよ」
「ああ。今日は断った」
突然歯切れの悪くなった団長様は、ポリポリと頬を書いている。
「もしやデートですか?ではなおさら急がなければ!」
私は、塗り薬に急いで付与をかけなおす。
「いやあの……そうでななくて」
「はい。付与終わりましたよ」
私は、団長様の手に、薬江尾握らせる。
「私も早く帰らなきゃ。デート頑張ってくださいね~。ではお休みなさーい」
もごもごと何か言っている団長様を置いて、さっさと荷物をまとめ家路に着いた。
アマンダ様とデートかしら……。
なんだか少し、気持ちがへこんだ。
なんだろ…………。
✿ ✿ ✿
数日後。
「よお。影の支配者、裏番長!」
治療所の裏庭で、休憩している私に、大声で話し掛けてきたのは私の幼馴染。
あんなに軽い感じなのに、由緒あるポールブル伯爵令息で、第二騎士団長を務めている。
赤い髪を、後ろで三つ編みに束ねて、背も高いため何しろ良く目立つ。
深い海の様な青の瞳が、ニコニコ笑って近づいてきた。
「もーフレデリック!変な呼び名を、大きな声でしないでよね!」
「実際、治療所の仕事は、ほとんどジェシカが裏で牛耳ってるんだろ?」
「そんなこと無いわ、アマンダ様が外部とうまく交渉し、仕切ってくれているおかげよ。見る目が無いわね、フレデリック」
いつものように軽口で返事をすると、フレデリックは突然真剣なまなざしを私に向ける。
「ん?どうしたの?お腹でも痛い?」
「…………。」
なになに!
どうしたの?
じわりじわりと間合いを詰められる。
「フレデリック?なに?どうしたの。」
無言のフィードバックに、どんどん距離を詰められ、後ずさる私は、ついに大きな木に背中がついて、逃げ場がなくなった。
追い詰められた、私の顔の横に、バン!とフレデリックが、両手を置いた。
顔が近い!
なななななな なんなの!近すぎる!
急な接近に、不覚にも顔が赤くなる。
耐えられなくて私は横を向いて目をつむる。
ガキン!
大きな音に驚いて目を開けると、まじかに迫っていたフレデリックが、受け身を取って転がっていた。
フレデリックが今いた場所には、剣がすごい勢いで振り下ろされて突き刺さっている。
剣を振り下ろしたのは…………。
真横の大きな影を見上げると、ルイズ騎士団長!
ルイズ様は、私を片手に抱き込むと、フレデリックを険しい表情で睨む。
そして、お腹に響く、低い声で叫んだ。
「フレデリック!どういうつもりだ!」
睨み合う二人の間に、アマンダ様が慌ててやってきた。
「もうリック!二人のことは、静かに見守りなさいと言ったじゃない!」
「待ったよ、待った!十分見守ったよ!俺こういうじれったいの、好きじゃないんだよな~もー。もやもや、イライラするだろ!」
あきれたように、両手を広げて、アマンダ様がため息をついた。
「リックも悪いけど、ルイズ様もルイズ様よ。裏では、ジェシカの御父上に、釣り書を止めてもらうようにお願いして置きながら、自分は一向に告白しないから!」
ん?アマンダ様今なんと?
…………。
なななな……なんと!もしかして、ルイズ様は私を好き?
密着するルイズ様に、心臓が止まりそうな私は、何とか声を絞りだした。
「あ あの…………ルイズ様は……。アマンダ様と、婚約するのではないのですか?」
「ジェシカ。そこもわかってなかったの?私はリックと来月婚約する予定よ」
なななな……なんと。
私は相当鈍くて、世情に疎い?
見上げると、ルイズ様と眼が合った。
「その。ジェシカ……。俺はお前の事が好きだ………………ずっと前から」
私の顔も、ルイズ様の顔も、顔面紅潮!火が出そう。
「ジェシカ、俺ではだめか?俺は怖いか?」
「ここ 怖くないです。 どちらかと言えば大型犬は 好きですーーー。」
「ジェシカが望むなら、俺は大型犬になる」
拳を突き上げる団長様に、フレデリックとアマンダ様が声を上げて笑う。
「あの…………大型犬にならなくても、ルイズ様のことは好きです…………。」
私がつぶやくと、ルイズ様の顔がパーっと輝き、破顔した。
「これから、もっともっと俺を好きになってもらうぞー」
私はルイズ様に、力いっぱい抱きしめられて、全身真っ赤になって意識を手放した。
意識を手放している間に、3人は私を伯爵家に連れ帰り、お父様は、意気揚々と私とルイズ様の婚約の手続きを進め、目覚めると私には、不器用でやさしい婚約者ができていた。
ジェシカ以外はみんな気が付いていましたが、あたたかく見守り中でした。
ジェシカの仕事だけでない。あままま生活が始まります。
ジェシカは仕事を辞める気がありません。
(#^^#)
誤字脱字などつもありがとうございます。
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