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影の管理者? お仕事大好きジェシカの恋愛事情 

作者: とと
掲載日:2026/01/06

読んでいただきありがとうございます。


「ジェシカ!この回復薬は、どこに出す分だっけ?」


「ジェシカさん、このカルテは、どちらに運びましょう?」


「回復薬は第二騎士団へ送って、カルテは、第一診察室に届けて、そろそろ皆戻るころね。準備しましょう」


私の暮らす、カイライン王国の貴族は、多かれ少なかれみんな魔力を持っている。


魔力には、いろいろな特性があり、その中で私は治癒力を得意とする。


治癒力と言っても、聖女様の様に、何でもかんでも治せるわけでは無いし、傷を治すなら、ちゃんと傷の汚れを洗浄し、消毒をする必要がある。


ただ治癒力の力を持つ者は多くないので、貴族女性でも、こうして働きに出ることが求められる。


仕事をしていると貴族令嬢としては、婚期が少し遅れるが、治癒力やちゃんと仕事ができることが、評価され婚姻先としての人気は高い。


私…………以外は。


一緒に働く多くの令嬢たちは、釣り書がたくさん届くらしい、婚約者が決っている人もいる。


血を見るのや仕事に出るのが嫌で、治癒力を隠している人もいるが、お茶会((社交))してるより、よっぽど楽しいのにね。


まあ私には、釣り書も来ないけど、この仕事があるからお金には困らないし、良しとする。


仕事はやりがいもあるし、結婚しなくても生きていける。


「アマンダ様、そろそろみなさんお戻りになります。お出迎えお願いします」


アマンダ・ハーリー侯爵令嬢は、治癒力を持つ貴族の中で、一番の高位貴族、侯爵令嬢でありながらちゃんと、役割を果たされている立派な方だ。


治癒師の仕事場は、怪我をすることが多い、騎士団の施設に隣接しているが、怪我だけでなく、病気の治療も行う他ため、施設に宿泊して治療を行えるような施設もあり、かなり広い。


もちろん薬師や、患者のケアをする人、掃除や洗濯をしてくれる人など様々な人が働いている。


みんなで協力して、怪我や病気の治療にあたる。


例えば、薬師さんの調合した煎じ薬に、私達が回復力を強くする魔法を付与したり。


しかしこの魔法の効果は、使う人との相性で効果がだいぶ違って来る。


この人とは気が合うから一緒に居いて楽しい♪とかなんだかこの人とは意見が合わないな~みたいな感じと一緒だ。


準備を整えていると、玄関から声がかかる。



「遠征から第一騎士団お戻りになりました~」掛け声とともに扉も開く。


「みなさんお疲れ様です。大きなけがをされた方はいませんか?」


アマンダ様が、騎士の皆さんを優しく出迎え、重症度によって治療先を振り分けてくれる。


「すみません。こいつかなり傷が深くて」


「あら大変。少し見せて」


仲間の騎士に支えられて、腕から血を流した騎士が運びこまれる。


「ああ。かなり深いわね。デイジー様、お願いできますか?」


「はい。こちらにお願いします」


ピンクブロンドのストレートヘアをポニーテールにした、デイジーが手を上げる。


彼女は、傷の治癒力効果が高い、私の自慢の親友だ。


「傷が深いようなので、処置にライアンとジェームスも手を貸してあげてください」


私は、男性の治癒師に声をかけ、デイジーの補佐をお願いする。


今日は、怪我をした数名が手当てを受けに来たが、受傷の方は1名だけのようだ。


「アマンダ様、今日も的確な判断を、ありがとうございました」


「ジェシカご苦労様。あなたが治癒師の得意な分野を、まとめてくれているおかげよ」


アマンダ様が指揮を執ることで、初動の対応はスムーズに進む。


状況を判断するのも抜群に早い、そしてアマンダ様はいつも優しい。




✿ ✿ ✿




ひと段落ついたところで、私はカルテの記載と、今日使用した器材や消毒薬などの、確認と補充のための発注書の作成をしていた。


ふと、後ろに気配を感じ振り返ると、視界いっぱいに騎士団の制服が現れる。


んー。


一呼吸おいて、見上げると、金色の瞳と目が合った。


「グロブナー騎士団長様、今日はどうされたのですか?」


「今日貰った、打身に使用する貼り薬は、ジェシカが付与したものではなかったので、付与しなおしてもらいに来た」


「私のものでなくても、効果はありますよ」


「いや。お前の付与が一番効く」


第一騎士団長である、ルイズ・グロブナー公爵令息様は、なんやかやと私に付与をしてもらうために、二日と開けず私の元を訪ねてくる。


世の令嬢たちには、無口でクールで美丈夫なため大人気、アマンダ様と婚約するのではないかと、噂されている。


どこがクールなのかしら?


私から見たら、手のかかる大きなわんこにしか見えない。


…………そのうえ良く話す。


話が盛り上がると、気が付けば2、3時間も、話し込んでいることもある。


「もう。付与はして差し上げますが、私の真後ろに、声もかけずに立つのは禁止です!」


「熱心に仕事していたから、声を掛けにくかった」


「ああ。もうこんな時間なんですね」


外を見ると、すっかり夕日が沈み、空の色が濃くなり始めている。


「早く帰らないと、夕飯を準備するシェフが困りますよ」


「ああ。今日は断った」


突然歯切れの悪くなった団長様は、ポリポリと頬を書いている。


「もしやデートですか?ではなおさら急がなければ!」


私は、塗り薬に急いで付与をかけなおす。


「いやあの……そうでななくて」


「はい。付与終わりましたよ」


私は、団長様の手に、薬江尾握らせる。


「私も早く帰らなきゃ。デート頑張ってくださいね~。ではお休みなさーい」


もごもごと何か言っている団長様を置いて、さっさと荷物をまとめ家路に着いた。


アマンダ様とデートかしら……。


なんだか少し、気持ちがへこんだ。


なんだろ…………。




✿ ✿ ✿



数日後。


「よお。影の支配者、裏番長!」


治療所の裏庭で、休憩している私に、大声で話し掛けてきたのは私の幼馴染。


あんなに軽い感じなのに、由緒あるポールブル伯爵令息で、第二騎士団長を務めている。


赤い髪を、後ろで三つ編みに束ねて、背も高いため何しろ良く目立つ。


深い海の様な青の瞳が、ニコニコ笑って近づいてきた。


「もーフレデリック!変な呼び名を、大きな声でしないでよね!」


「実際、治療所の仕事は、ほとんどジェシカが裏で牛耳ってるんだろ?」


「そんなこと無いわ、アマンダ様が外部とうまく交渉し、仕切ってくれているおかげよ。見る目が無いわね、フレデリック」


いつものように軽口で返事をすると、フレデリックは突然真剣なまなざしを私に向ける。


「ん?どうしたの?お腹でも痛い?」


「…………。」


なになに!


どうしたの?


じわりじわりと間合いを詰められる。


「フレデリック?なに?どうしたの。」


無言のフィードバックに、どんどん距離を詰められ、後ずさる私は、ついに大きな木に背中がついて、逃げ場がなくなった。


追い詰められた、私の顔の横に、バン!とフレデリックが、両手を置いた。


顔が近い!


なななななな なんなの!近すぎる!


急な接近に、不覚にも顔が赤くなる。


耐えられなくて私は横を向いて目をつむる。


ガキン!


大きな音に驚いて目を開けると、まじかに迫っていたフレデリックが、受け身を取って転がっていた。


フレデリックが今いた場所には、剣がすごい勢いで振り下ろされて突き刺さっている。


剣を振り下ろしたのは…………。


真横の大きな影を見上げると、ルイズ騎士団長!


ルイズ様は、私を片手に抱き込むと、フレデリックを険しい表情で睨む。


そして、お腹に響く、低い声で叫んだ。


「フレデリック!どういうつもりだ!」


睨み合う二人の間に、アマンダ様が慌ててやってきた。


「もうリック!二人のことは、静かに見守りなさいと言ったじゃない!」


「待ったよ、待った!十分見守ったよ!俺こういうじれったいの、好きじゃないんだよな~もー。もやもや、イライラするだろ!」


あきれたように、両手を広げて、アマンダ様がため息をついた。


「リックも悪いけど、ルイズ様もルイズ様よ。裏では、ジェシカの御父上に、釣り書を止めてもらうようにお願いして置きながら、自分は一向に告白しないから!」


ん?アマンダ様今なんと?


…………。


なななな……なんと!もしかして、ルイズ様は私を好き?


密着するルイズ様に、心臓が止まりそうな私は、何とか声を絞りだした。


「あ あの…………ルイズ様は……。アマンダ様と、婚約するのではないのですか?」


「ジェシカ。そこもわかってなかったの?私はリックと来月婚約する予定よ」


なななな……なんと。


私は相当鈍くて、世情に疎い?


見上げると、ルイズ様と眼が合った。


「その。ジェシカ……。俺はお前の事が好きだ………………ずっと前から」


私の顔も、ルイズ様の顔も、顔面紅潮!火が出そう。


「ジェシカ、俺ではだめか?俺は怖いか?」


「ここ 怖くないです。 どちらかと言えば大型犬は 好きですーーー。」


「ジェシカが望むなら、俺は大型犬になる」


拳を突き上げる団長様に、フレデリックとアマンダ様が声を上げて笑う。


「あの…………大型犬にならなくても、ルイズ様のことは好きです…………。」


私がつぶやくと、ルイズ様の顔がパーっと輝き、破顔した。


「これから、もっともっと俺を好きになってもらうぞー」


私はルイズ様に、力いっぱい抱きしめられて、全身真っ赤になって意識を手放した。


意識を手放している間に、3人は私を伯爵家に連れ帰り、お父様は、意気揚々と私とルイズ様の婚約の手続きを進め、目覚めると私には、不器用でやさしい婚約者ができていた。


ジェシカ以外はみんな気が付いていましたが、あたたかく見守り中でした。

ジェシカの仕事だけでない。あままま生活が始まります。

ジェシカは仕事を辞める気がありません。

(#^^#)

誤字脱字などつもありがとうございます。

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