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第4話 夫が目をそらすんです


私はゆっくりと、アルフレッドへ視線を向けた。

アルフレッドは目をそらす。

その横顔には苦悩が深く刻まれていた。

いつもムスッとしていたのは、その苦悩を隠すためだったの?


「アルフレッド」

私は声をかけ、食い入るように見つめる。


「ねえ、アルフ」

もう一度名を呼んだ。

アルフレッドの口は重い。


「……ひとつだけ呪いを解く方法がある」

「あるの?」

「イリス、この家から出ていくんだ。離縁すれば、お前は呪いから解放される」


「そんなの、全然解決じゃないでしょ?」

「…………」


「次世代が生まれなきゃ、封印が解けるんでしょう?」

「……お前があの夜。私を椅子で殴って逃げたとき、私は少しほっとしていた。

これで良いのだと思った。

だが朝方、お前が帰って来たのを見たとき、お前に掛かる呪いの深さに私は……」


「そんなの全然、質問に答えてない。

あのね、あれは自分の意思で戻ってきたの。

呪いとか関係ないわ。そこに勝手な運命とか感じないで。

もう一度聞くわ。

次世代が生まれなきゃ、封印がヤバイんでしょ?」


「だがお前は助かる」

「そんなのは答えじゃない、タスクがデスマーチ過ぎて逃げるってわけ?」

「なにを?」


私は心の妙なところに火がついた。

面白いっ、面白いじゃないのっ。

これは実に面白い!


いいわそうね、この世界がAIの創出した世界なら、そのAIの生みの親である私が逃げるわけないでしょ!

300年前? 冗談じゃないわ。

開発中のAIにVR空間を生成させたのは、半年前だっての。

(よわい)半年の古の魔獣に、私が屈してどうするっ。


「面白い研究対象だわ、気に入った。

私がその呪いをデリートして見せるっ」


私は「やったるぞ」と言う思いを、右手に込める。

すると右手に埋め込んだ、デバッグツールが起動した。

右手の指先が半透明になり、藍色(あいいろ)に染まる。


「その指は!?」

「奥様の指があっ」


「これが私の魔術研究の成果よ。

指に、沢山の魔法の妖精を住まわせているの」


私は体をズラして、ベッドの真下の隙間へ手を伸ばした。

その隙間へ指を差し込むと、案の定、人目につかない箇所は手抜きでローポリ化してる。


人差し指の先についた光学グラスアイが、それを「観察」したとき、ローポリのベッド下が高精細のテクスチャに変化しようとした。

私はその揺らぐ表面に指を突っ込んで、ベッドのソースコードを引き抜いた。

私の指先を追従するように、銀色の(コード)がベッドの下から抜き出される。


「イリス、それは一体!?」

「この部屋に住む、魔法の妖精さん。

この屋敷がロードなんとかの墓所だとしたら、その呪いは屋敷中に偏在しているはず。

だからまず、どういったものなのかサンプルを取ったの」


「さんぷる?」


私は銀の糸へ、小指から解析用のコマンドをたくさん注入した。

その反応を見て、親指と中指がデータを素早く仕分けしていく。

ベッドのソースコードは、そのほとんどがベッドに関してのもの。

だけど仕分けていくうちに、奇妙なものが浮き上がってくる。


私は迷わず、薬指から「ホーリーフレイム」を注入。

ホーリーフレイムは「FFF」の火炎系浄化魔法だけど、爆発(エフェクト)を全て抜き取った、純粋にダメージだけが加算される、超地味な仕様に改良してある。

すると着弾と同時に、私の部屋全体が反応した。


空間が歪み、部屋いっぱいに、カゲロウのような女の顔が浮かび上がる。

その半透明の顔が声も無く笑い、やがてゆっくりと霧散していった。

私はその間、目をまん丸くして硬直した。


うん、本当に吃驚(びっくり)すると、悲鳴とか出せないもんだね。

私は止めていた息を吐き出す。


「ふううっ、びっくりした。

なにあれ、効いてないアピールのつもり?

う~ん確かに、呪いなのに浄化の炎が効いてないみたいな……」


「おっ、奥様ああ!」

「おい、今のはなんだ!?」

「まだ分かんない」キリッ





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