第5話 中学校入学
俺は中学1年生になった。
中学生活、マジで楽しい! 想像してたよりもずっと充実している。
バスケ部に入って、週3回の活動日は体育館で汗を流す。練習は正直キツいけど、バスケで体を動かすと頭の中がスッキリするし、バイオリンを弾く時の集中力も上がっている気がする。練習が終わって、汗だくになりながら仲間と他愛ない話で盛り上がるのも最高だ。
クラスも部活も一緒の健太とは、すぐに打ち解けた。健太は明るいムードメーカーで、シュートが上手くいかなくて落ち込んでいる時も、いつも明るく声をかけてくれる。「ドンマイ、光太郎! 次こそ決めるぜ!」と言われると、自然とまた頑張ろうと思えるんだ。
健太や他の友達とバスケ選手のことを話していると、あっという間に時間が過ぎる。部活以外でも、たまにみんなで集まって近所の公園でストリートバスケをしたり、ゲームをしたり。家でバイオリンを弾いて集中する時間とはまた違う、仲間とワイワイ騒ぐ時間も、俺の日常に欠かせないものになっている。
もちろん、バイオリンもちゃんと続けている。
バスケの練習で疲れていても、家に帰ってバイオリンを手に取ると落ち着く。むしろ、バスケで鍛えた体力と集中力が、バイオリンを弾く時に役立っているのを感じる。どんなに疲れていても、毎日2時間はバイオリンの練習を続けるという目標を掲げているんだ。(できない日もあるけどね)
俺がバイオリンに真剣に取り組むようになったきっかけは、小学校5年生の時に理人くんと一緒に出たジュニアコンサートだ。あの時の理人くんの演奏は、まるで魔法みたいだった。繊細で、優しくて、聴いている人の心を鷲掴みにするような音色。俺はあの時、理人くんみたいに弾けるようになりたいと心から思った。
そして、いつかまた彼と一緒に舞台に立ちたいと強く願った。
その気持ちが、俺を大きく成長させてくれたんだと思う。
小学校6年生の時、毎年出ている地元のバイオリンコンクールでは初めて1位になれた。それまでも上位入賞はしていたけど、1位は初めて。名前を見つけた瞬間は、本当に信じられなかった。なんていうか、胸の奥からこみ上げてくるような、特別な感情だった。
理人くんは俺の1つ上の学年だから、去年のコンクールでは中学生部門に出ていた。
結果は、もちろん彼が当たり前のように1位。
授賞式で理人くんと並んでトロフィーを受け取った時のことは、きっと一生忘れない。嬉しくて、誇らしくて、なんだか夢みたいだった。
理人くんとは違う学校に通っているし、バイオリンの教室も違うから、普段はなかなか会う機会がない。でも、バイオリンを続けている限り、彼との接点は途切れないと思うと、これからも頑張ろうと思える。理人くんが「バスケットボールで鍛えた体力とか集中力が、そのまま音に出てるんじゃないかな。両方頑張ってる光太郎くんならではって感じ」と言ってくれたことがある。その言葉がすごく嬉しくて、今も俺の原動力になっている。
身長もこの1年で10cmくらい伸びた。理人くんと同じくらいになったかな?
なんて、ちょっと得意になっている。これからも、バスケもバイオリンも、全力で楽しんでいきたい。そして、理人くんみたいに、もっともっとバイオリンが上手くなりたい。