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第4話 響き合う光 

ついにコンサート当日を迎えた。


 すごく緊張してたけど、それよりもワクワクする気持ちの方が大きかった。文化ホールの客席は、お客さんでギューギューの満席! その熱気に僕の胸はさらに高鳴った。


 僕と理人くんが演奏するのは、バッハの『二つのバイオリンのための協奏曲』。二人のバイオリニストが同じくらい大事な役割でソロを弾く、バッハの有名な二重奏の曲。

 前の人の演奏が終わって、僕たちのことを紹介するアナウンスが聞こえてきた。アナウンスが終わると、理人くんと一緒にステージの真ん中へ。理人くんが隣にいるってだけで、なんだかすごく安心できた。


 深く息を吸って、弓を構える。


 二人で目を合わせて、演奏を始めた。


 僕のバイオリンと、理人くんの優しくて美しいバイオリンの音が重なって、会場いっぱいに響き渡る。まるで二人で楽しくおしゃべりしているみたいに、音符一つ一つが生き生きと弾んでいた。隣で演奏している理人くんの、今まで見たことないくらい真剣な横顔。そして、彼のバイオリンから生まれる澄んだ音色。僕はこれまでで一番、心を込めて、理人くんとぴったりの息で音楽を奏でた。


 理人くんと一緒に弾くバッハは、難しいところも、なんだか楽しいことや嬉しいことに変えてくれる魔法があった。演奏してる間、胸の奥から熱いものがグーッとこみ上げてきた。ただ楽しいだけじゃない、何かもっとすごい気持ち。気がついたら、自然と口元がゆるんでた。バスケットボールで感じる情熱とはまた違う、新しい熱いものが僕の胸をいっぱいにしていく。会場のお客さんにも、僕たちの気持ちが伝わって、心に響いている気がした。


 第3楽章の最後の音が、ふわーっとホールに吸い込まれるみたいに消えると、一瞬シーンとなって、それから割れんばかりの大きな拍手が会場を包み込んだ。


 あっという間に終わっちゃったな。


 隣で満足そうに微笑む理人くんと顔を見合わせて、最高の笑顔を交わした。この瞬間、僕にとってバイオリンは、もう「やらされているもの」じゃなかった。確実に、何かが僕の中で変わっていた。


 演奏を終えて、客席に向かって二人で礼をし、舞台裏に戻ると、僕は自然と理人くんに深々と頭を下げていた。


「本当にありがとう、理人くん! 理人くんのおかげで、バイオリンって、音楽って、こんなに楽しいものだって気づくことができたよ! また絶対、一緒に演奏しようね!」


 理人くんは優しく笑ってくれた。彼の大きな瞳は、いつものように光を宿してキラキラ輝いている。

 「どういたしまして。光太郎くんのバイオリン、これからも楽しみにしてるよ。きっとまた一緒に演奏しようね。そのためにも、お互いもっと練習頑張ろう。僕たちは友達であり、ライバルなんだから。」


 理人くんの言葉に、僕はハッとした。そうだ!友達になれたけれど、同時にライバルでもあるんだ。もし僕がバイオリンの練習をサボったりしたら、理人くんと一緒に演奏できるチャンスは二度とないかもしれない。その事実に気づいた瞬間、僕の心に新しい、メラメラとした情熱が灯った。


 僕のバイオリン人生は、まだ始まったばかりだ!

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