第3話 名前の意味
練習の休憩中、僕がふと理人くんに言った。
「ねえ、理人って名前、かっこいいよね。理人くんにぴったりの響き!」
僕がちょっと照れながら言うと、理人くんは優しく微笑んでくれた。その表情は僕の他愛ない言葉をそっと受け止めてくれるようだった。
「ありがとう。光太郎って名前もかっこいいよ。ねえ、理人 《りひと》ってどういう意味か知ってる?」
僕は首を横に振った。理人くんは、少し得意げな顔で教えてくれた。
「《りひと》はね、ドイツ語で『光』っていう意味なんだ。光太郎くんの名前も『光』っていう漢字が入ってるだろ?僕たちの名前って、意味が一緒なんだよ。」
僕は目を丸くして、本当にびっくりした。まさか自分の名前が理人くんと同じ意味だなんて!その事実に、もうたまらなく嬉しくなった。僕と理人くんの間に目に見えない光の糸が結ばれたような気がした。
「ねえ、理人くん。今回のコンサートで僕たちがペアになったのって、もしかして、僕たちの名前が一緒だからなのかな?誰かが僕たちの名前に気が付いて、この組み合わせを選んでくれたのかな。」
僕が興奮してそう言うと、理人くんはくすっと笑って、僕の目を見た。
その大きな瞳も、僕たちの名前と同じ『光』を宿しているみたいにキラキラしていた。
僕たちはただの練習仲間じゃなくて、ちょっと特別な関係になれた気がした。