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第6章 架純の葬儀 敏彦の涙

看護師の工藤美香の運転する車が葬儀場へ着いた、結構の人が集まってくれていた。工藤は後部から車椅子を出すと敏彦を軽々と抱きかかえ車椅子に乗せた。参列者が「ウオーと声をあげた。」敏彦と場違いなまっしろの看護服を来たナースがきたからである

。工藤は敏彦の車椅子を押しながら受付まで来た。工藤はサインをし香典を預けた。「病院からです。お収めください。」工藤は係員にそう呟いた。「敏彦さん。来てくれたんだね。」架純の母が敏彦の目を見て目頭をハンカチで押さえた。通夜が始まった。棺桶に入っている架純の顔を覗くと顔は真っ白で化粧が綺麗にされていた。触れる事も出来ずに只々泣くだけだった。「助けてあげられなくてごめん。」と棺桶に獅噛みついた。通夜は続いた。敏彦はただ只々泣くだけしかできなかった。自分も深手をおっている身であった。「今晩はここで寝かせてくれ」敏彦は工藤に頼んだが希望は通らなかった。美香も「そうしてあげたいがあなたの身体の方が心配なので残されたお子様の為にも今晩は病院にかえりましょう。元気になってください。」美香は敏彦をはげました。敏彦は病院へ帰る決心がついた。蓮と凛を抱き寄せ、「お父さんはあまり具合がよくないから病院へ帰るから二人がママの側に居てあげてね。冴子お祖母ちゃんの言う事聞くんだぞ!ママ居なくなっちゃって悲しいな?また明日。」敏彦は二人の目をきっちりと見て話した。「お母さん。お義母さん。お願い致します。僕は帰ります。」敏彦は泣きながら二人の目を見て工藤美香看護師に車椅子を押され退場した。


病院へ帰ると部屋が405号室に変更になっていた。405号室は大部屋だった。敏彦の部屋は一番奥の窓際だった。ベッドサイドまで行くともう一人看護師がやって来た。礼服を脱がせ、二人で敏彦をベッドに寝かせた。敏彦はちょっと痛かった。工藤はサラシの中を確認すると「大丈夫だ。出血なし!」工藤はそう言うとサラシを巻き直した。点滴やいろんな管を付けられ、電気を消され就寝モードへいれられた。「佐久間さん、明日7時に迎いに来ます。おやすみなさい。」工藤はそう言うと部屋を出て行った。敏彦は目を瞑るが瞼の裏に架純の死に顔が浮かびなかなか眠れなかった。ナースコールを押し、眠剤をもらった。暫くするとナースが眠剤を一錠と白湯をもって来てくれた。それを飲むといつの間にか寝てしまっていた。敏彦は朝、看護師の朝食を配膳せるゴンドラのガラガラの音で目が覚めた。6時に朝食が出て来た。敏彦の食事はいつもオカユと不味いオカズだけだった。たまに出るカットフルーツがお気に入りだった。安いヨーグルトも良かった。牛乳は苦手だった。食べ終わる頃、工藤が来た。「おはようございます、」工藤が優しく微笑んだ。「おはようございます。本日も宜しくお願いします。」敏彦も工藤の目を見て優しく微笑んだ。「葬儀9時からなので8時には出ます。着替えましょう。」工藤は敏彦の目を見た。もう一人看護師をが来た。ベッドから敏彦を立たせると礼服への着替えを始めた。工藤さんは今日は礼服を着ていた。工藤さんは敏彦より5歳くらい年上に見えた。8時に部屋を出てエレベーターで降りた。昨日と同じで工藤さんが車椅子を押してくれた。駐車場までくると昨日と同じ車の前に居た。工藤は車椅子から助手席に乗せると自動で座席が上下し、クルリ回転して定位置で止まった。車椅子は後部に畳んで入れた。流石に慣れたものだった。車は駐車場を出て走りだした。暫く走ると葬儀場へ着いた。工藤は受付を済ませ香典を出した。病院の名前を記帳した。会場に入ると沢山の参列者でごった返していた。敏彦は母真理子の先導で喪主の席に座った。その後に工藤が座った。隣は蓮と凛であった。その隣に架純の父と母、その隣に敏彦の父と母が座っていた。坊さんが入場して来た。テレビ関係のカメラがズラリと並んでいた。病院のテレビでストーカー殺人なんてタイトルでやっていたのを敏彦は見ていた。敏彦は、本日がテレビデビューになる。病院にいたからカメラの前に立っていなかったからだ。架純の両親と敏彦の両親が取材拒否をしたがこの調子であった。マスゴミだった。とくに今日は県警のお偉いさんや所轄署の所長、刑事部長、生活安全部長をお揃いと言う事をで責任問題にしたい狙いもあったように思えた。架純の両親がテレビの取材で想わず警察が動かなかった事を漏らしたせいだった。敏彦も覚悟はしていた。今日辺りが危ないだろうと考えていた。式が始まった。とどこうりなく終盤まで来た。架純と触れ合うことが出来る釘打ちの儀が来た。敏彦は献花を架純の顔を触りながら顔の周りに沢山入れた。子供達も架純の顔を触って泣いていた。「架純さん、心臓に深い傷があったわよ。それが致命傷だったて!」敏彦の母真理子が敏彦の耳元で囁いた。「架純痛かっただろう。」敏彦は架純の心臓のあたりを撫でた。涙が止まらなく、工藤が気をきかせて本日はティシュボックス1つを持っていた。涙と鼻水を拭いたティシュは上着のポケットに入れていた。「蓮、凛。ママにお別れを言おう。」敏彦が二人の涙をティシュで拭きながら二人の顔を見た。「ママ、バイバイ!また、皆でハンバーグ作ろうね。」凛が言った。「ママ、また、100点とるからね。ママ、バイバイ。」蓮が言った。敏彦は涙が止まらなかった。三人は架純の棺桶の釘打ちをした。敏彦が弔辞を読み上げた。「架純、27歳の若さで逝かせて悪かった。後何十年と思い出を作れたのに残念だ。俺の過ちから招いた事だった。蓮と凛は俺が責任を持って育てる。架純には苦労かけちまったな?こんな俺について来てくれて有り難う。最後に結婚前に行った思い出の場所に行けてよかった。四人で作ったハンバーグは美味かった。また、出来ないのが寂しい。定期的に三人でやるから、お前の分も仏壇に供えるから食ってくれ!佐久間敏彦。以上。」敏彦の鼻水をすすりながらの弔辞だった。皆さんから拍手が沸いた。「これにて、ご葬儀終了致します。ご清聴有り難うございました。これから出棺になります。男性の方、お手伝いお願いいたします。」司会からのアナウンスだった。チカラ自慢の男達が集まって棺桶を担いで台車に乗せた。敏彦も右手を棺桶に添えるだけで参加した。この市の葬儀場は隣が焼き場になっていた為霊柩車には載せなかった。焼き上がりまで皆で食事をした。「工藤さん。俺、飯食べてもいいですか?お寿司なら5巻くらいなら大丈夫でしょう。お味噌汁も。お酒は駄目よ。」工藤は敏彦の目を見た。「工藤さんもご一緒にどうぞ!俺の隣に座って!」敏彦は工藤の目を見た。「すいません。およばれいたします。」工藤は敏彦の顔を見た。敏彦と蓮と凛は食べ残しがだいぶあった。「工藤さん。持って帰ってナースのみなさんで食べてください。」敏彦が工藤の顔を見た。係員をよんでパック詰めをしてもらった。「持って帰れません。」工藤は頑なに拒否したが、架純からのプレゼントだからと言って強引に持たせた。「それでは遠慮なく。いただきます。」工藤は敏彦を見てニコリ笑った。全員焼き場に呼ばれた。骨だけになった架純を見て敏彦は泣けて来た。「パパ、ママ骨なっちゃたね。」凛が敏彦の顔を覗いた。「うん。ママ、お星さまになったんだよ。今晩、空を見上げて一番光っている星がママだよ。」敏彦は涙をおさえながら、ティシュを左手で持っていた。蓮をみたら泣いていなかった。蓮と凛は二人でお箸を上手く使い骨を拾い上げていた。敏彦は工藤と骨を拾った。骨壺に綺麗に入りきった。形見分けで敏彦は左手にはめていた結婚指輪をもらった。ズボンのポケットに入れた。敏彦は最後まで涙が止まらなかった。骨壺は佐久間家のお墓に入れる事になっていた。その足で佐久間家のお墓に向かい、納骨をした。


敏彦は病院に帰り約1ヶ月の入院生活に入った。退院するまで見舞い客がとだえなかった!テレビの取材は病院側が断ってくれていた。

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