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革新期のユリウス・カエサル  作者: くにひろお
北伊三州総督ユリウス・カエサル
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情報部(エスピエラ)の体制変更

プブルを見送ったカエサルは次の動きを開始しだした。


プブルを送り出した後、カエサルは近づく冬への準備を開始した。

いつも真っ直ぐに立ち迷いを感じさせない背中が、少し寂しく見える。

「カエサルも決断に感傷的になることがあるんですね。」

主君である敬愛する男の些細な気持ちを感じ取ったダインが近寄って軽口を叩く。

「ザハがいてくれれば、従者として一緒に行って欲しかったな。」

「それだと安心ですが、プブルが一人立ちしたことにはならないでしょう。」

「ザハに期待するものとプブルに期待するものは別だよ。」

心の底からのカエサルの返しにダインも気持ちを汲んで提案する。

「ローマ市内でザハを探させますか?情報部は知っているでしょう。」

カエサルは優しい侍従の言葉を受けて左右に首を振る。

「いや、いる人間でやっていく必要があるだろう。ここにザハがいないのであればいる者たちでやっていく必要がある。プブルならうまくやってくれるかもしれない。」

「そうですね。」

「クラッススもローマ最高の曲者だ。プブルにはあの父親も一つの高い高い壁になるだろう。何とか越えてきて欲しい。」

そこまでいって、プブルの幸運を祈って自分の仕事に集中することにした。



ガリア・キサルビナの総督の館は、ローマ式に則って建築された3階建ての立派な建物だった。

ガリアの貴族がローマ風に建てた建物でローマ人にとっても使いやすい構造をしていた。

その一階には、すでにカエサルの間と呼ばれる場所に、ダインとジジ、そしてブルータスといったカエサルの側近たちが待っていた。

カエサルはその奥で、情報部(エピステラ)の長官であるインゴドとその部下たちと話をしていた。


カエサルの前に来た浅黒い肌の情報部の長官は少し小さくなったように思えた。

頭を下げてカエサルに話を切り出した。

「カエサル、そろそろ私も年です。情報部をまとめることもきつくなってきた。新しい世代に譲りたいと思います。」

痩身の総督は、長官を見て、周りの者たちにも目線を送っていう。

「インゴド、その事については以前より話し合ってきていた。君が引退を決めるのは仕方あるまい。ゆっくりと身体を休めると良い。長きに渡り共に働いてくれてありがとう。」

「共に、とは嬉しい言葉ですね、カエサル。思えば私は敵方の中のつま弾き者だったのが、世界を変える手伝いが出来たことは幸せでした。」

「まだまだこれからだよ。」

「そうでしょうとも。身体もボロボロですが長官を退いても、一人の諜報員として仕事させてもらいたいです。」

「まずは休んでからだね。温泉に浸かり英気を養ってからだね。まずは少し休みなさい。」

「有無を言わせない口調で言うカエサルの意見。

インゴドは頭を下げて頷いた。


それから少しして頭を再び掲げて、

「カエサル、情報部の新しい長官に推挙したい者たちを連れてきました。」

そんな浅黒い長身の男の横に立っていた2人の男女だった。

「2人に任せるのかい。」

「いえ、才能、能力的には私の横にいる女、ルクレイアが最適であると考えます。まだ若いが指揮と世界を見る目は確かな者、を推します。ですが、若い女を頭に置くと、どうしても問題は起きるでしょう。護衛とルクレイアの才能を見抜いた親代わりの男を支えとして置く、または頭としておき、ルクレイアを側に付けておく、というのが私の提案ですよ。カエサル。最後はあなたの判断に任せます。」

ルクレイアを少し見るとカエサルは年齢を問うこともしなかった。

「ルクレイアに代わる者はいないのかい?」

浅黒い男は、怪訝な顔をして主を見た。

「私よりも上と思えるものはルクレイア一人です。」

インゴドの明確な回答を受けてカエサルも心を決めた。

「分かった。ならばルクレイアを立てよう。」

「ルクレイア、三代目の情報部の長官を頼む。」

ルクレイアは20代くらいだろうか。薄い金髪に印象的な緑色の眼を広げて、今や世界に名を響かせつつある痩身の総督を見て、ゆっくりと頭を下げて、かしこまりました、と言った。

頭を下げたルクレイアが顔を向けるのをカエサルは待って、笑顔を見せる。

するとルクレイアは物怖気もせずに口を開いた。

「我が主。あなたの目指すところを私に教えて頂けますか?」

「ほう?」痩身の総督は笑って新しい長官を見る。

そして試すように言った。

「今まで見てきて、何を成そうとしているか、想像したことはあるかい?」

「あります。閣下は時に大胆に時に繊細に振る舞いローマ、ヒスパニア、ガリア、外ガリアと赴かれた。ローマの領土を再定義されようとしている。ですが、それだけではない。私にはそう思えました。」

うなずいてカエサルは新しい長官を試すように言った。

「続けて。」

「門閥派を抑え込み、新時代派が新しい時代を作り、新しい政治を作り出した。そして新しいローマを作ろうとしている。」

「まだあるかい?」

「ゲルマニア、ブリタンニア、シリア、エジプトをまとめ上げて、アレクサンドロス大王を越える領土をローマにもたらそうとしています。そして、それらの覇権をローマの技術を元に成そうとされています。ローマは世界の中心として作り替えられようとしている。」

熱く語る女を拍手で受け入れて、総督は笑っていった。

「インゴドが褒めるだけはあるな。ルクレイア、情報部の長官として君は何を成したい?」

「カエサルとローマのために広範な地域の目と耳、鼻と口になって全ての情報をあなたの元に届けましょう。」

「インゴドの目の確かさが照明されたな。やはり君が次の長官でいるべきだ、ルクレイア。」

この判断にはさすがに異論を唱える者もいた。能力があっても、ローマは男優勢の社会だ。

だが、カエサルは気にした風もなく言った。

「私は母に多くを習った。女性が男性に劣っているものはない。何と言っても人々の半分は女性だからな。」

そう笑うと気にする風もなくルクレイアを長官にして主要な幕僚に紹介した。

カエサルにそう言われると、カエサルの母アウレリアや娘のユリアも思い出されて男たちは皆、身が引き締まる思いでルクレイアを受け入れた。


最後に、最初にカエサルにルクレイアを紹介した後は静かに場の成り行きを見守っていたインゴドのもとにカエサルが寄ってきた。

「インゴド、新しい長官はルクレイアで良い。さっそく組織内の整理を進めてくれ。」

「はい、承りました。」

頭を下げたインゴドだったが、総督はその場に居続けた。

いつもなら席を外して次に行くのに、怪訝に思って頭を上げると、ニコニコと笑いながら痩身の総督は自分を見る。

いやな予感を感じなから

「どうされました?」

「情報部の引き継ぎは滞りなく進むとして、君自信はどうするんだい?」

「ルクレイアに仕事を引き継いだら、当面は後はあなたが広げたガリア地方を見て回ろうかと思ってます。どちらにせよ興味のあるところに赴いていくでしょう。」

「そうだな、良いと思う。」

「若者たちに任せてもベテランの力が必要な時もあるでしょうからね。」

インゴドの今後を聞いて安心したカエサルは元長官に礼を言い、身内だけの晩餐に誘った。


カエサルが昔から大切にしていた情報部が体制を変える。

新しい長官とともにカエサルはさらなる変革を実施していこうとしていた。

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