三頭の血筋。プブルの旅立ち
カエサルとの別れの際、プブルは2人で話をした。
そこで、パルティア遠征から帰ってきた次のことを離されて驚きを隠せないでいた。
プブルが驚きの表情をしているのを見てカエサルは笑った。
「私とポンペイオスと繋がるのが怖いかい、プブル?」
少しからかうような口調だった。
背筋を伸ばして、すこし裏返った声になってプブルは答えた。
「まさか。ちょっと驚いただけです。」
カエサルに見られて、心の底まで見透かされている気分になってプブルは喋り続ける。
「カエサルとつながれることは私の喜びですよ。そう。カエサルを祖父に、ポンペイオスを義父に、父クラッススを持てるのは私だけですからね。すごい血のつながりになるでしょう。」
口を開きながら、いつもの調子が出てきた、そうプブルが思ったがカエサルは少し違う意見を言う。
「私も君と血のつながりを持てるとうれしいよ。」
プブルを見ながら葡萄酒をおいしそうに飲んで話し続けた。
「血の繋がりが全てではない。だが、血の繋がりを重視する人たちがいることも事実だ。その人たちからの支持を受けることができる。一方で共和制の妄信的な支持者を完全に敵に回すことにもなる。」
プブルは自分を高く評価してくれている英雄を見て笑う。
「その問題は無事帰ってから考えます。」
するとカエサルも満面の笑みになった。
「それでいい。プブリウス・クラッスス、我が親愛なる息子よ。遠く西の空で父親を勝利に導いて来い。そして再び羽ばたいてこのカエサルの下に舞い戻れ。その時にはクラッススも、ポンペイオスも君を認め、我々の後継者と思いたくなっているだろう。」
「はい。」
は野心に満ちた男たちは互いを見合った。
それから突然カエサルは肩を落として、プブルにも肩の力を抜くようにいって、先程までとはうって変わった柔らかい雰囲気で話をしだした。
「だが、大きくなって戻ってほしいのが私の希望だが、心配ごともある。まさに父親になった気分だよ。プブル。」
父親が旅立つ息子に言うように、注意を口にする。
「パルティアは今や内戦状態、付け入る隙はあるが、甘く見たら何も上手くいかないだろう。私がやっているように常に広い範囲で情報を得続けろ。特に知らない土地だ。私がガリアでやっているようにパルティアで仲間を作りなさい。そうすれば少しずつ上手くいくはずだ。」
「分かりました。たとえ父がやらなくても私が情報を得て仲間を作り、パルティアを押さえて見せます。」
その回答に満足してカエサルはさらに言う。
「君の父、金持ちクラッススが暴走する危険もある。それに一人だけ気になる男がいる。私が若い頃にアシア属州に居たことは話をしたが、そこでの冒険の中で一人の若いパルティアの貴族と知り合い、共闘することがあった。名前はスナレス。私と同じか少し若かったが今や壮年の男だろう。パルティアに私やポンペイオスと比肩しうる男がいるとしたら、あいつではないか。そう思う。優美さ、残虐さ、革新性、カリスマ性をもっていた敵に回すとやっかいだな、と思ったよ。もしスナレスが相手であれば、逃げることも選択の一つとせよ。」
「分かりました。この身の全てをかけて武勲をあげたい、と思いますが命を大事にもしたいと思います。」
カエサルにそこまで言わせるスナレスという男が羨ましかった。そして、自分ではその男を越えられない可能性があるのか。
いや、だからこそ越えて見せるべき。
プブルはそう思った。
「幼い鷹が東の巨大な猛獣の頚を狙ってみせましょう。」
「狙えるならば狙ってみよ。だが敵がスナレスであれば、このカエサルと戦うつもりで挑め。」
「誰もあなたに比肩しうる者はいないことを証明してきましょう。」
カエサルは笑った。
幼い鷹はいつの間にか立派な若い鷹になっていた。
「では、私よりの選別だ。ガリアとゲルマンを戦い抜いた我が精鋭の中の精鋭を連れていけ。パルティアの軽騎兵たちが弓を放ち終えた瞬間に彼らは間を詰め、敵を切り裂くことができるだろう。」
カエサルに心酔するガリアとゲルマンの混成部隊の隊長が立っていた。
「この男はゲルマンとガリアのハーフでローマ育ちだ。クラッスス、お前をしっかりサポートしてくれるだろう。お前はプブリウス・クラッススを私の息子だと思いサポートしろ。そして、シリア、パルティアで名を広めてこい。」
「カエサル、私に輝かしい戦いの場を与えてくれてありがとう。我らが最強の騎兵であることを証明しましょう。」
体格の優れた剣闘士のような風貌のゲルマンとガリアのハーフの男はカエサルに深く頭を下げた。
痩身の司令官は頭を下げた2人を見て笑って言う。
「飛べ、若者たちよ。お前たち自身の力で未来に向かって羽ばたいて見せよ。」
そういってうっすらと涙を流しながら笑って言った。
この後、若きクラッススは自分の兵士たちとゲルマン、ガリアの優秀な騎兵を連れてローマ近郊で父クラッススに合流する。金持ちクラッススは息子の合流とカエサルからの贈り物である騎兵たちを見て大喜びをした。
秋も深まりつつあった。
そのまま冬を越えてシリアに向かうかと思われたが金持ちクラッススの貪欲さは底なしだった。
シリアとパルティアへの欲が眩み、カエサルの更なる勇名にも負けたくないと思ったのか、兵士たちを準備すると執政官の仕事を全うすることなくシリアへ向かう準備にかかった。
この事態を聞いたポンペイオスもクラッススを心配して軍団長クラス、隊長クラスに自分の小飼の優秀なものたちを送り出す。
クラッススの補佐をさせるためだ。
プブルの意見も彼らの助聞かず予想以上に素早く準備を終わらせるとクラッススは兵士たちを連れてシリアに旅立っていった。
ローマは三人の実力者のうち、武勇で聞こえたポンペイオスとカエサルが、かなり優秀な人材をクラッススのシリア属州の統治と、対パルティアの準備に割り当てた。
これでパルティアを圧倒するか、悪くともパルティアに大敗をすることはないだろうと考えていた。無事にクラッススと息子のプブルがそこそこの名を成して戻ってくれば良いと考えていた。もし敗戦しても、ポンペイオスとカエサルという最強の将軍たちが控えているのだから。
見送る市民たちもポンペイオスかカエサルを待てばいいのに、と、クラッススの遠征にはあまり乗り気ではなかった。
急いで旅立つクラッススたち旅立つ軍団を暗い気持ちで見送った。
プブルに期待をかけて送り出したカエサルは、次に向かって動き出す。
パルティア遠征がうまく行くことを祈って。
少なくとも無事帰ってくることを祈って。




