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革新期のユリウス・カエサル  作者: くにひろお
北伊三州総督ユリウス・カエサル
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ヴェネティ族制圧へ

ルッカを後にしてすばやくガリアの冬営地に到着したカエサルは移動しながら指示を出して問題が複雑になることを防ぐ。それから今回の騒ぎのもとであるヴェネティ族のもとに向かった。

春も少し過ぎて、大洋に繋がる広葉樹の森が新緑で淡い緑が少しずつ色濃くなって空を覆い囲みだす時期、カエサルは一軍団を連れてヴェネティ族の本拠地に迫っていた。

だが、外を海に、近辺を大きな川に囲まれてローマ軍得意の土木工事が難しい立地のヴェネティ族の本拠地を攻めあぐねる。

ここでカエサルは包囲し、兵糧攻めをしつつローマ海軍の到着を待った。


ローマ軍の冬営地にてプブルたちに合流すると、カエサルはすでに動いているラビエヌスたちの動きを情報部においかけさせる。そしてプブルに大洋に面した町でローマ式の船を100艘以上も作るように指示して自分は残存の兵力の一部、一個軍団を率いて北に向かった。

昨年、ガリア全域を抑えたが、カエサル自身ではなく、また武力による制圧もしていなかったガリアでも北西側に位置する強力な部族とされるヴェネティ族を抑えに向かった。

最初は、食糧買い付けに訪れたローマ軍の兵士を取り押さえるということだったが、そのうち気が大きくなったのか、自分たちが約束した部族の若者を返せ、と言い出した。

さらにそれを近隣の部族にも伝えて多くの近隣部族が同じ要求をしてきていた。

勢いは完全にヴェネティ族側にあった。


カエサルは一度ローマと約束したルールを破られることが大嫌いだった。

最初は喧嘩であれ戦争であれ、互いに分かり合えない点があることに対してはカエサルは恐ろしいほどに寛容だった。

その代わり、まず相手側の話になるが、カエサルと一度約束して平和になった後でカエサルと決めた約束をないがしろにすることは絶対に許さなかった。

以前にジジとダインはそのことをカエサルに聞いたことがあったが、本人は

「いろんな違いがあるさ。だが違いをこえて互いのルールを決定したんだ。それには従わなければいけない。」

そう答えたカエサルの目には怒りの表情はなく、たんたんとしていた。

一緒に決めたルールはまもるべき。

それを守らないのは人として許されざることだった。

シンプルだがこれがカエサルの考えである。

個人であっても集団であっても同じだった。

去年も、その約束を破ったガリアの一部族がいた。部族は壊滅させられた。

今回も同じになるに違いない。カエサル傘下の幕僚たちも、プブルたちとともに残った商人たちも同じことを思った。そのため商人は急いで大量の奴隷輸送の準備を開始しだした。

その痩身の総司令官は、それでも荒れ狂うこともなく、淡々と各司令官に指示を出した。それから一個軍団を率いてヴェネティ族の盗伐に向かった。



夏の間を森の近くで過ごして地理を把握してひたすら待った。

海に囲まれて陸からの攻撃を受け付けないヴェネティ族の本拠地を攻めることに無理なことはすべきではないと考えていた。

多くの兵士は常勝将軍カエサルの弱腰をいぶかしんだ。

一度も戦うことなく準備のために周りの整備をすることに納得がいかなかった。

「敵も油断をしているので、偵察隊を送って内部撹乱 を図るのはどうでしょう?」

「悪くない案だね。やってみたまえ。指揮は任せるよ。」

幾つかの部下からの提案を受けて、カエサルは無理しない程度に敵にちょっかいを出させた。だが、どれもうまくいかずに時だけが過ぎる。何回ものチャレンジの失敗を受けてカエサルは上級指揮官たちに話をした。

「ヴェネティ族の守りを突破するために様々なチャレンジをしてきた。だが、突破口となるほどの成功は収められなかった。」

提案してチャレンジした指揮官たちは下を見ている。

「良い試みではあったが敵はなかなか準備周到なので、当分は偵察隊を送り込むことは止める。その代わり、皆は要塞を攻めいるための準備をしておいてくれ。ヴェネティ族から見えるか見えないかのところの陣を包囲を強化して誰も通り抜けできないようにすること。それから来るべき攻略のためにすぐに軍が城壁の横に行けるように散らかった木や草を整理しておくこと。」

多くの指揮官が気にしていることを若い男が一人、立ち上がって聞いた。

「しかし総司令官。どうやって攻略するつもりでしょうか?」

いつもなら指揮官ではなく総司令官であるカエサル自身の案を元に動くのが常だった。しかし今回についてはカエサルは動かない。

造船を待つとした。

だからこそ指揮官たちが幾つかの攻略を試したのだ。そして、それらは全てうまく行かなかった。

指揮官たちの疑問も高まるなかで、カエサルは指揮官たちを集めて話をした。

「私はローマの海軍が来てから一挙に攻勢をかけるつもりでいた。敵は今まで大規模な船からの攻勢を受けたことがないためだ。だが嵐などの不慮の出来事で我が海軍の到着は送れてしまった。だが、時間があるからと、勝算の薄い方法で兵士たちを死地に追いやってしまう司令官ではない。ただなにもしない訳でもない。色々と無理のない範囲で模索をしつつ海軍が来ての本格的な戦いの準備をしていた。そして、ついにローマ軍の軍船が近日中に沖合いにたどり着く。海戦をしている間に我々は城壁にたどり着き一挙に攻勢をかける。」

指揮官たちは皆、今までの停滞ともとられた状況に納得し全体の戦略を理解して、海と陸からの総攻撃を行う準備にやる気を漲らせた。


こうして休息とも停滞ともとれる時間が過ぎたが、その間にカエサルは情報を集めて、大洋の外を走る帆船を観察し、ガリアの深い森の動物や植物を観察したり、ローマ軍に比較的友好な部族のもとを訪れたりとやりたいことをやって過ごした。

プブルに指示を出した船が完成してローマの大洋の艦隊が現れたのは、カエサルの話からさらに一週間後だった。

司令官はデキムス、ブルータス。

カエサルがプブルと同様に目をかけてきた若者だった。


ヴェネティ族の首都の攻略は苦戦しそうだった。

カエサルは無理な突撃はせず、海軍の到着を待つ。

ローマ軍がはじめて大洋(太平洋)に進出した時だった。

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