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三者同盟

ユリアに興味を強く持ってくれたおかげで前に進むことができた三者同盟。

今後の話をカエサルは二人の有力者にする。

「護民官にヴァニティウスねえ。悪くねえんじゃねえか。良く知らねえけどな。ぐはは。」

濃厚な辛味ソースで焼いて味付けた肉を口に入れ、美味そうに咀嚼ながら、クラッススが言う。

「これで護民官のうち2人は我々の息のかかるが抑えられるでしょう。市民集会でも立案して意見を通せるでしょう。」

と同調するようにカエサルが言うと、

「ああ。」とポンペイオスも興奮気味に強く頷く。自分の軍団下で働いていた軍団長も護民官に推すことがきまった。

護民官に選ばれれば、元老院議員への道も開けてくる。自分も頓挫していた幾つもの決定に承認を得ることもできる。兵士達が諦めていた報奨も実現する。やりたいことが、やっと実現できる道筋が見えて責任感の強い英雄は、高揚感を隠しきれなかった。

そして・・・

ポンペイオスの頭のなかにはカエサルの娘ユリアが思い浮かんでいた。


カエサルと繋がりを持つために娘を娶ろうとした。カエサルは自分より6歳年下でその娘だから娘もしくは孫に近い年だなのだがその娘が素晴らしかった。

父親に似た恐れ知らずだが、恥知らずではない素晴らしい娘だった。彼女のことを考えるとポンペイオスは年甲斐もなくドキドキする自分に気がついていた。

もはや自分にとっても三者の同盟は続けたいと思えるまでになっていた。


ほぼ宴会になってきた三者の同盟に関する打ち合わせは、具体的な内容の取り仕切りはすべてカエサルが行った。

決まったことは今年の執政官にカエサルを押す。あわせて護民官を自分たちの息のかかった者にする。ここまでは誰も想像できる内容だった。そして、ポンペイオスとクラッススを驚かせたのはその先だった。

翌々年の執政官と護民官をカエサルの任期の前半に決定するという。

「我々の権力を盤石にするために、執政官2人を私たちの影響力の及ぶ者にする。」

この意図するところは明確だった。三者の同盟がローマの政治を支配するのだ。

執政官を出し続ければ今後、この場がローマの方向性を決める会議になる。

「カエサル、お前悪いやつだな。共和制ローマを張りぼてにしようとしていたとはな。」

「確かに。考えてみると大胆で、壮大な話だが、我々なら実現できる。」

「我々は無駄な議論や拒否をするのではなく、ローマを前に進めるために集まった者たちです。未来に向けて進んでいきましょう。」

「ああ。」

二人は頷いで同意した。


全体の総意が取れて、ポンペイオスとクラッススも互いに少しは話をするようになった。嫌ってはいても興味はあるのがおもしろいところだ、とカエサルは笑って二人のやりとりを聞いていた。

そして話の途中でカエサルが話題を一つ出す。

「ところで、我々に相対するもの達は門閥派と呼ばれています。そして、今後ローマの国政を支配する我々も、名前を付けて置きたいですね。」

と突然カエサルが言う。

確かに、と有力者二人は思った。

今まで我ら、という言い方だったのだ。

「三人の各階層の代表者だから、民衆派ではないな。三人の代表者、三頭トリウンヴィラートゥスというのはどうだ。」と自慢げにポンペイオスが言った。

「カッコいい名前だが、いまいちだな。」と笑いながらクラッススが笑って言った。

「それは歴史家が付けそうな呼びにくい名前かな。」とカエサルも同調して笑う。すると今度はクラッススが

「新しい政治というなら「新しい時代の秩序(ノヴス・オルド・セクロールムはどうだ。」と持論を言う。

「長い。」とすかさずポンペイオス。

「短く新時代派はどうだろう。門閥派に対抗するなら。」

「それは悪くない。三頭も悪くないけど、そんな呼びにくい名前にするやつは歴史家くらいだろうよ。」とクラッスス。

「よし、では、新時代派(レヴス・オルドとして活動しよう。確かに我らというより新時代派というほうがまとまるな。」とポンペイオス。

「そうですね。」とカエサル。悪くない。

名前にそこまでこだわるつもりはないが何かしらの名前は欲しかった。

そして、名前を決めようと言い出したカエサルはまた変なことを言い出す。

「この新時代派は内密にしておきましょう。何食わぬ顔をして票を集めて、いざというときまで内密にしておく。元老院全体では門閥派の方が強いから、我々は必要なところを抑えて政策を進める。そして大きな政策を進め門閥派の力を削ぐときにこそ、存在を知らしめるんです。」

二人の有力者は、顔を見合わせて頷く。

「確かに、門閥派は侮れねえ。数も多いし歴史も多い。」

「ああ。我らが同盟したと知られると門閥派達がいろいろ対策をされると厄介だ。」

三人の気持ちは同じだった。

現時点で三人の力で勝てるのは市民集会であり、元老院全体では負ける。

元老院全体を抑えるまで、油断は禁物だった。


「カエサル、実際に門閥派の力を削ぐ方法はあるのか?お前は最初、執政官になったらどうするんだ?」

「そうですね。当選したら門閥派がざわつくので彼らを安心させようと思います。昔の風習を取り入れたりして。」

「2人は、なるほど、と頷く。

「それから、民衆を完全に味方にして、門閥派を動かしにくくするため、通達を一つ出します。」

「ほう?、面白そうだな。詳しく聞かせろよ。」

「わかりました。実際にはー」

ポンペイオスとクラッススはその構想を聞いて、そこまで理解は進まなかった。

「大切なことだと思うが、そこまで効果がえるのか?」

「まあ、やってみるがいいさ。ガイウス君のお手並み拝見だ。だが、本丸はそこではないだろう?」


ポンペイオスはクラッススとカエサルのやりとりを耳で聞いていた。

高級な葡萄酒を口に含む。

強大な力を持つ門閥派を抑えながら三人の力をあわせて上を行く戦術。


緊張感と未来への可能性を考える。

高揚感が抑えきれない自分がいた。

こんなに上手い晩餐は久しぶりだった。


三者同盟は成った。

門閥派に対抗してカエサルは執政官に就任できるのか?

そして、ポンペイオスやクラッススは自身の目的を達成できるのか?

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